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カーボンプライシングの現状と展望 その5
~排出権の割り当て(3)~

ここまで、排出権取引について、制度の概要、排出権の割り当て方法、無償割当とオークションの比較といった説明をいただきました。最後に、落穂拾い的に、いくつかの質問をさせていただきました。

写真:松尾様、西山(IGESにて)

Q)京都議定書に基づく排出量取引は、グランドファザリング方式だったのですか?
A)そうです。各国の目標が基準年の排出量をベースに、設定されたわけですから、国単位のグランドファザリング方式と言えるでしょう。ただし、削減目標における基準年比のパーセンテージは国によって少しずつ異なっています。
Q)排出権取引を導入すると、カーボンリーケージ(*)も問題になるのではないでしょうか。特定の業種に対する配慮などは実施されるのでしょうか。
A)例えば欧州の排出権取引制度においても、カーボンリーケージのリスクを定量評価していて、炭素への依存度が高い業種や、輸出入の比率が高い業種に対しては、無償割当の比率を増やすという配慮をしています。
ただ、取引が可能になるということは、それだけ低コストでの目標遵守が可能になるということですので、その他の規制手段よりコスト負担は小さく、工場や生産の海外移転の必要性は小さくなるはずですね(本当は、現実の工場移転の意思決定において、CO2規制の強弱がどの程度決定要因となっているか、という点まで考慮した分析が必要になります)。

(*) カーボンリーケージ:ある国や地域でカーボンプライシングを導入した場合に、排出者がそれを嫌って、規制の緩い国や地域へ、工場等を移転することによって、グローバルなCO2削減効果が小さく(もしくは負に)なること。

Q)排出可能総量枠(キャップ)は、単純に国の削減目標に応じて直線的に減らしていくというような簡単なものではないのでしょうか。
A)まず、排出権取引制度は、その国のすべての排出源をカバーするわけではありません。カバーする範囲が、国全体の排出量の何%に相当し、それが排出削減見込みの何%を担うか?という想定に基づいて決められるものだと思います。これは部門間の責任分担の問題と言えます。
EUでは、排出権取引にカバーされた部門の方に、より大きな削減率を設定しています。目標年に向かって直線とするか曲線とするかは、大きな問題ではないと思います。ただ、将来どうなるか?という排出可能総量枠(キャップ)推移や、各種ルールに関する情報は、シグナルとして「事前に」規制対象に示すことが重要です。企業はそれをベースに、どうするかの戦略・戦術をたてますから。
Q)最後に、松尾さんが排出権取引の課題に取り組む思いを教えてください。
A)排出権取引制度は、企業にとって新しい柔軟性を提供してくれるものです。政府規制目標でも自主目標でも、より柔軟性=自由度のある方がいいわけですね。
日本では、排出権取引に関する様々な誤解が広まって、議論が停滞してしまったのが残念です。これから、そのような誤解を解きほぐして、前向きな議論ができる土台を作ることも私の仕事のひとつだと思っています。

ありがとうございました。


西山 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
西山 が担当しました

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