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なるほど話

カーボンプライシングの現状と展望 その4
~排出権の割り当て(2)~

前回は、排出権の割り当て方法について、「グランドファザリング方式」「ベンチマーク方式」という、無償割り当てを伴う方法をご説明いただきました。
今回も引き続き、排出権の割り当て方法についてご説明いただきました。


写真:松尾様

Q)前回は、排出権の割り当て方法について、「グランドファザリング方式」「ベンチマーク方式」という、無償割り当てを伴う方法をご説明いただきましたが、そもそも、無償割当という方式が、既得権を優遇する不公平な制度だという批判はないのでしょうか。
A)もちろん批判はあります。CO2の排出量が多い排出者が多くの排出権の割り当てを受ける訳ですから。ただ、既得権への配慮は、どのような政策措置を導入する際にも考慮する必要があります。排出権取引制度では、それがこのように表現されるわけですね。
Q)無償割り当てを実施しない制度もあり得るのでしょうか。
A)無償割り当ての対極にある方法を考えてみましょう。割り当てを行わずに、全ての排出者が必要な分だけ(排出する/した分だけ)排出権を購入する制度デザインとして「オークション方式」があります。
Q)オークション方式とはどのような方式でしょうか。
A)国は、排出可能総量枠(キャップ)に相当する排出権を、(通常は何度かに分けて)対象となる工場等のCO2排出者に向けて売り出します。排出権はオークション方式で市場に供給され、高い値段を提示した排出者から順に落札して、排出権を獲得することになります。
Q)排出者からすると、排出する分の全量を市場から購入しないといけないとなると、費用負担が大変ではありませんか?
A)その通りです。この方式では、全ての対象となる各工場等のCO2排出者は、毎期末までに、排出量相当分全部の排出権を購入しなければならなくなります(すなわち炭素税と似ています)。これはとくに大規模排出者にとって大きな負担になります。
もうひとつ、オークションによるかなりの金額の収入は国に入りますので、国はその扱い(社会への還流方法)も考えておく必要があります(実はこの部分に大きな公平性問題があるのですが、通常はあまり議論されません)。
Q)公平性と大規模排出者への配慮を考えると、現実的にはどのように導入が進められるのでしょうか。
A)まず認識しておかなければならないのは、「公平性」に正解はない=人によって公平性の捉え方は異なる、ということです。これまでの欧州での経緯を見ると、最初は既得権に配慮したグランドファザリングで慎重に割り当て、徐々にオークションに移行するという方式が採られています。グランドファザリングであれば、企業の負担は目標より増えた分だけですので、ずいぶん小さくなります(また、政府に入る収入もありません)。
Q)欧州の排出権取引は、うまく行っているのでしょうか。
A)欧州の排出権取引は、欧州の排出量の1/2程度をカバーし、現在では(各加盟国ではなく)欧州委員会が直接制度を運用しています。2005年にスタートし、当初は排出権価格の低迷など難しい状況が続きました。ちなみに価格が低迷したのは、排出量削減が予想以上に進んだことが主たる原因でした。また、CDMクレジットとのリンクを外すこと(CDMクレジットを用いた排出目標の遵守は認めないこと)も行われ、成功していたCDM市場の崩壊をもたらしました。
その後、2度の大きな制度改定を経て、2019年には排出権価格が20–30ユーロ/t-CO2のレンジで推移したなど、まあ順調に運用されていると言えるでしょう。すくなくとも、EUはこれからもこの制度を中心に排出削減を進めているつもりです。現在の40%削減目標においても、カバー範囲外よりかなり強い削減が予定されています。韓国、中国などいくつもの新しい排出権取引制度が動き出して、あるいは動き出そうとしてきています。

西山 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
西山 が担当しました

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