そうだったのか!FITと太陽光バブル
1. 固定価格買取制度(Feed-in Tariff:FIT制度)の現状
1-1 FIT制度の申請状況
2014年4月現在、国内の再生可能エネルギーにおけるFIT制度の設備認定は70GWを超えています。太陽光の非住宅分だけで65GWとなりました。ちなみに全世界の太陽光発電設備規模は、2014年推定で161GWであり、国内で設備認定された太陽光発電の規模は、実に全世界の太陽光発電の3割強にあたることとなります。
ただし、設備認定の重複や、認定を受けながら土地や設備を確保できない案件が相当数あるとされ、経済産業省も聞き取り調査を開始しており、2012年認定案件のうち、本年5月末で144件が廃止又は取り消し処分となりました。
更に、本年8月末迄に同処分の対象となる可能性がある設備認定が300件弱あるといわれ、仮にこれらすべて取り消された場合、2012年認定案件のうち、最終的に継続案件として残るのは25%程度になると予想されています。
今後、2013年度分も同様にMETIによるヒアリングが行われるため、引き続き認定された案件が取り消しとなる事例が出てくるものと予想されます。
導入容量 (万kW) | 買取電力料 (万kWh) | 買取金額 (億円) | 認定容量 (万kW) | ||||
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規定 認定分 | 移行 認定分 | 平成26年 4月分 | 制度開始からの累計 | 平成26年 4月分 | 制度開始からの累計 | 新規 認定分 | |
太陽光 (住宅) | 221 | 467 | 57,013 | 774,767 | 248 | 3,445 | 280 |
太陽光 (非住宅) | 736 | 26 | 92,221 | 536,640 | 382 | 2,227 | 6,562 |
風力 | 11 | 253 | 36,562 | 800,371 | 81 | 1,712 | 107 |
中小水力 | 1 | 21 | 11,174 | 116,734 | 29 | 297 | 30 |
地熱 | 0 | 0 | 30 | 724 | 0 | 3 | 1 |
バイオマス | 9 | 113 | 32,682 | 371,321 | 65 | 694 | 121 |
合計 | 977 | 880 | 229,681 | 2,600,557 | 804 | 8,377 | 7,101 |
[出典]経済産業省資源エネルギー庁:再生可能エネルギー発電設備の導入状況等について
(4月末時点)
1-2 FIT制度により提起された課題
そもそも日本では、1990年に「地球温暖化防止行動計画」が関係閣僚会議で決定され、温室効果ガスや大気汚染物質による環境負荷の低減が図られる再生可能エネルギーの導入に取り組んできていましたが、2011年の東日本大震災を契機としたエネルギー政策の見直しなどによりFIT制度が始まりました。しかし、再生可能エネルギーを拡大させていく過程で、送電線網に関する問題と、環境影響評価に関する問題が指摘されるようになってきました。
◆送電網について◆
送電線網に関する問題は、多くのメディアで取り上げられていますので、詳細な説明は割愛いたしますが、以下の2点に要約されます。
- 風力、太陽光など再生可能エネルギーの発電に適したエリアには、元々送電網は整備されておらず、発電した電力を送電するには送電線網を整備する必要があり、コストがかかる
- 再生可能エネルギーが発電される時間帯と電力が消費される時間帯がずれる事による、送電線網の電圧や周波数の安定性維持に支障がでる
これらの問題解決には、脆弱な地内送電線網の整備や、バックアップ電源の整備など非常に多くの問題を内在しています。現在、経済産業省が風力発電の適地ではあるものの送電網が脆弱なため、再生エネルギーの導入拡大に課題を抱える北海道~東北エリアで送電網強化に向けた実証事業を開始しています。
これらの問題は、再生可能エネルギーの先進地域である欧州でも、発電機や変電機の相性や送電圧、系統連系の最適化、さらにはそこから発生するビジネスの可能性など、より広い視点で積極的に議論が行われています。
図:風況の適地と連携系統とのギャップ
[出典]経済産業省:風力発電のポテンシャルと導入促進の考え方について
◆環境影響評価について◆
再生エネルギーとして大きなポテンシャルを持つ風力発電や地熱発電は、2012年10月の環境影響評価法(環境アセスメント法)改正によりたとえば風力発電の場合、10MW以上は環境影響評価の対象となりました。環境アセスメント法対象となった場合、環境影響評価の実施期間は4年程度を要することとなり、発電事業を検討する事業者の事業計画の大きな障害となっています。現在、環境省及び経済産業省は、風力発電所や地熱発電における環境アセスメントの簡素化・迅速化に向けた取り組み(実証事業)を進めていてその成果が注目されています。
2. 太陽光バブルの分析(グリーン投資減税)
いわゆる太陽光バブルとされた今回の原因は、前述の通りFIT制度によるものですが、最大の要因は税制改革にあったという考え方もあります。
平成23年度税制改正において創設されたエネルギー環境負荷低減推進税制(グリーン投資減税)がそれで、この制度はエネルギー起源CO2排出削減や再生可能エネルギー導入拡大に資する設備投資の加速化が必要不可欠であるとの観点から設けられた制度です。具体的には、太陽光発電への投資額は全額減税償却できるというものです。
この制度により、再生可能エネルギー事業への投資効果が飛躍的に向上し、それまで発電事業に興味がなかった人たちまでを引き寄せるきっかけとなりました。広く融資先を探している金融機関は、この流れにうまく乗る形となりました。さらに、再生可能エネルギーのうち、太陽光発電事業は太陽電池モジュールと変電設備を設置するという比較的シンプルなシステムであるため、バイオマスや地熱など複雑なシステムの「その他の再生可能エネルギー」への融資と比べると銀行内審査が比較的スムーズに運ぶことになりました。このような経済的環境と、FIT制度が重なり、太陽光発電が大きく伸びることとなったと考えられます。
【参考資料】
IEA国際エネルギー機関ホームページ
IEA国際エネルギー機関ホームページ(英語)
経済産業省資源エネルギー庁ホームページ
なっとく!再生可能エネルギー
再生可能エネルギー発電設備の導入状況(平成26年4月末)及び今後の情報の公表方法についてお知らせします
風力発電のポテンシャルと導入促進の考え方について
グリーン投資減税
この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ
鈴木 が担当しました