ネパールのゴミ処理事情
写真:ネパールのゴミ処理回収トラック
1990年の民主化以降、ネパールの首都圏(カトマンズ市、ラリトプル市など)への人口が集中し、経済的な発展と共に環境問題が浮き上がっています。
経済的な発展により、プラスチック・ビニール袋などの家庭ごみや産業廃棄物などが増加しました。2011年に改正された廃棄物処理法によって民間企業によるゴミ処理事業が始まりました。
■民族ごとのルールによるゴミ処理
ネパールは50以上の民族で構成されています。
1990年の民主化以前は、それぞれの民族が集落ごとに小さな社会を作って暮らしていたので、ゴミ処理に関しても民族内のルールが成立していました。
他民族の中のカトマンズ盆地の先住民ネワール民族の社会を例題にあげますと、ゴミを専門的に取り扱うカーストが存在していたことで一定のゴミ処理の方法が出来ていました。
民主化によってカースト制度が廃止され、異民族が交じり合う多他民族社会が始まり、ゴミ処理法の秩序が崩れていったのです。
■ポイ捨ての習慣がなくならない
民主化以後、移民社会に加えて農村からの出稼ぎ労働者も増加し、首都圏の人口爆発により、さらにゴミ処理の問題が悪化しました。
農村出身者にとっては、地元では農業中心とした暮らしをしていて、発生するごみは主に有機系であったため、土に返すという方法で処理していました。一方、都市生活で出るプラスチック製のゴミに関しては、どう処理するべきなのか知識と習慣がないため、ゴミの処理方法が問題となり、家にあるゴミを近場の空き地にポイ捨てしたり、それによって街の風紀が乱れてしまったのです。
廃棄物処理法が改正され、民間によるゴミ処理事業が始まりましたが、正しいごみ処理の習慣はネパール国民の暮らしまでには浸透していません。
いまだに道端には捨てられたスナック菓子やキャンディーの包み紙が散乱していて、ポイ捨てをする習慣は無くなっていません。
■ラリトプール市郊外の家庭ゴミ処理の例
ラリトプール市バイシパティ町では、Nepsemyak Sewa Pvt.Ltd(ゴミ処理事業社)が家庭ゴミの回収を担当しています。
【参考】NEPSEMYAK
写真:職員は、袋を持ってゴミ回収に回っています。
以下のようなゴミ出しルールとなっています。
回収日と時間
- 火曜日と金曜日 時間は午前6時~10時の間
- 職員は笛を鳴らしながら回収に回ります。
(時間が定まっていないため、笛で合図をします)
回収方法
- 中身が散乱しないように袋や空き箱に納めて出します。
- 透明ビニール袋や指定袋はありません。
- 分別ゴミのルールはありません。
写真:ゴミ出しのルールが一律でないため、各家庭によって出し方もまちまち。スーツケースなど粗大ゴミも、同様に出されています。
回収場所
- 以前は、数メートル先の回収車が来る場所までの持参でしたが、現在は自宅前まで来てくれます。
回収料金
- 月額450ネパールルピー(約477円 2022年5月9日現在)
専用ノートがあり、1か月ごとに会計職員が各家庭に集金に回ります。
写真:専用ノート
写真:領収書のかわりになる専用ノートは手書きで書かれています。
■安定した回収システムとゴミ処理事業社の雇用形態の充実
ネパールでは貧困層の問題があります。
ゴミ処理事業社の社員雇用形態には、貧困層の社員を雇用し経済的社会的地位を向上させる活動が企業理念となっている団体もあります。
雇用の安定は、職員の働き方改善と労働意欲を獲得し、ゴミ処理事業システムの構築に貢献することに繋がっていきます。また子供のいる職員には、教育環境を提供する制度が設けられている団体もあります。
現在、ゴミ処理事業社が運営している中では、一定のゴミ出しルールなどは国民レベルまで伝わってきていません。改正された廃棄物処理法によりますと、法的なルールはすでに日本並みに定まっています。
将来的には、ネパール人のゴミ処理に対する意識の向上やゴミ処理事業社の運営法などが改善されることで、少しずつゴミの処理の方法がルールにそって一般庶民層まで浸透していくことでしょう。
この記事は
ネパール在住ライター
シュレスタユウコ が担当しました