バンクーバー市のZero Waste計画とリユース活動
他の英語圏主要都市に比べると物価が安く、温暖な気候のバンクーバーは留学先や一時滞在先として人気の都市です。人の出入りも多く、それにともなって発生する大量の不用品や廃棄物の処理をどう行うかがひとつの課題となっています。
バンクーバー市によりますと、2016年にバンクーバー市内の家庭や企業、施設等から出された一般ゴミは371,000トンにも及び、そのほとんどは資源として活用できるはずのものであったそうです。
そこで2018年に施行されたのがZero Waste 2040計画です。この計画に基づき、バンクーバー市では2040年までの市内廃棄物ゼロを目指しています。
画像:バンクーバー市による「いかに廃棄物をゼロにしていくか」示したプロモーション画像
興味深いのは、「廃棄物を減らすことは環境汚染や気候変動対策のみならず、コミュニティの活性化にもつながる」とバンクーバー市が捉えていることです。具体的には以下のような効果があると考えています。
- 市民が廃棄物削減に向けて自発的に活動することで、市民同士の結びつきが強まる。コミュニティへの参加や物の共有、交換が広がる。
- 資源の活用を目指すことで、循環型の新しいサービスやビジネスが生まれるきっかけとなる。
Zero Waste 2040計画として実際に行われている事業はいくつかありますが、代表的なものとして月1回の市主催「リユース・リサイクルイベント」があります。
実はバンクーバーでは市による衣類や本、電化製品などの収集は普段行われていません。そこでそれらの不用品がでた場合は、この市主催の「リユース・リサイクルイベント」を利用するか、後述の民間のサービス等を利用して処分する必要があります。
市主催の「リユース・リサイクルイベント」は毎月異なる指定の場所で開催され、市民によって持ち込まれた不用品を市のパートナー企業が回収するイベントです。危険物や家具など一部を除いて、ほとんどのものを受け取ってもらえます。壊れたものや古いものであってもかまいません。回収された不用品は分別後、リユースもしくはリサイクルされます。
バンクーバーでは民間や個人間での不用品の譲り合いや売買も盛んに行われています。例えば、インターネット上の掲示板やFacebookなどを利用した個人間の売買・譲渡、スリフトストアへの寄付などが最も一般的なものとしてあげられます。
スリフトストアとは日本でいうところのリサイクルショップのようなもので、非営利団体によって運営されていることがほとんどです。スリフトストアでは不用品の買取りは行っておらず、あくまで寄付が前提となります。寄付された物品の売上は地域の慈善団体やコミュニティセンター、病院などへ寄付されます。
写真:バンクーバー市内のスリフトストア
個人間での不用品の譲渡は街を歩いていてもよくみかけます。「ガレージセール」と称して個人宅の敷地内でフリーマーケットのような形で不用品を販売していたりするのがその例です。
また、家の前に「Free(無料)」等というメモ書きとともに家具や不用品が置いてあり、欲しい人が自由に持っていけるようになっているのもよくある光景です。
私の暮らすアパートでも共有スペースに住人が不用品を置いていくスポットがあり、住人同士で気軽に不用品の譲渡を行っています。
私も不用品のなかでもスリフトストアでは引き取ってもらえないようなもの、例えば化粧品のサンプルなどをよくそこに置いていますが、いつもすぐに誰かに持っていかれます。
写真:バンクーバー市内のLittle Free Library
本を処分したい場合は、“Little Free Library”を利用するのもひとつの手です。Little Free Libraryとは有志の市民が自宅前や公共スペースなどに設置している扉つきの箱形本棚で、誰もがいらない本をそこに自由に置いていくこと、もしくは読みたい本をそこから持っていくことができます。
読み終わった本はそこに戻してもいいですし、気に入った本ならば自分のものにすることも可能です。Little Free Library自体が「地域の人々がその場所に立ち寄り本を交換し合う」というある種のコミュニティとなっており、地域内で本が循環する仕組みのひとつにもなっています。
このように、バンクーバーでは人々が日常生活で気軽に不用品の譲渡を行っており、リユース活動へとつながっています。
この記事は
バンクーバー在住フリーライター
藤枝さくら が担当しました