プノンペンのごみ事情
“アンコールワット”等の世界遺産で有名なカンボジア。
今日はその首都プノンペンでのごみ事情に関してお話しします。
写真:アンコールワット
東南アジアの中で目覚ましく発展を重ねるプノンペンでは、排出されるごみの量も半端なものではありません。プノンペンで一日あたりに排出されるごみの量は2000年には約500トンでした。それが現在2020年には3000トンのごみを毎日排出しています。この20年で6倍に膨れ上がりました。
写真:プノンペン市内の道に放置されたごみ
【プノンペンのごみ収集業者】
プノンペン市内のごみ収集をしているのは行政からの委託を受けたシントリ(CINTRI)社のみです。シントリ社は約20年間にわたりプノンペンのごみ収集業務を独占で行ってきました。
しかしながら、急な発展によるごみの急増や頻繁に起こる従業員の賃上げ要求ストライキにより、ごみ収集機能が足りず、プノンペン市内では収集されないゴミの山が異臭を漂わせながら1週間以上放置されることも珍しくない状態です。
そんな状況を打破すべくカンボジア行政はシントリ社を買収し、公営化してごみ収集を行うことを2019年に発表しました。2020年初頭に公営化され、現在は行政の下でごみ収集が行われています。
写真:プノンペンのごみ収集車に描かれたシントリ社のロゴマーク
【プノンペンごみ埋め立て地】
プノンペンにはごみの焼却施設等はなく、回収されたごみは全て埋め立て地で埋め立てられます。ごみの分別はありません。すべてまとめて埋め立て地に捨てられるだけです。
しかしながらそのごみの中にはリサイクルできる資源も多く、まだ使える家具家電なども多くあります。埋立地に近くに住んで、毎日ごみの山から使えるものを探し、リサイクル業者に販売することを生業とする人も多くいます。無分別ゆえにゴミの山は“宝の山”でもあるのです。
写真:プノンペンごみ埋め立て地
(出典)プノンペンのゴミ埋立地、2年以内に満杯になる見込み (CAMODIA BUSINESS PARTNERS)
【過剰なプラスチックごみ】
写真:市場でのクイティウ持ち帰りセット
カンボジアのローカル市場にて朝食に定番のクイティウ(米粉麺スープ)を購入し持ち帰りました。値段は僅か5000リエル(約125円)です。しかし、そのわずか一人分の朝食の持ち帰りのための容器にプラ袋3枚、プラカップ1個が使われていました。
隣国のベトナムやタイから非常に安価な使い捨てプラスチック容器が輸入され、市場ではそれらが気兼ねなく使われています。
EU(欧州連合)の支援するNGO団体ACRAの調査によると、プノンペンの1人当たりの年間プラスチックバックの利用数は2158枚とされています。1日当たり5.9枚/人のプラスチックバックが施用されていることになります。
(参考) Market_Research_Report Reducing plastic bag waste in major cities of Cambodia(ACRA)
【ごみ問題への前向きな取り組み】
ごみ問題に関して非常にネガティブなことばかりにも見えますが、前向きな取り組みも行われるようになってきました。
2017年10月にはカンボジアのスーパーマーケットにおけるレジ袋の有料化が行政によって発表され、2018年1月より施行されました。価格も決まっていて、1枚当たり400リエル(約10円)と非常に高額です。またレジ袋有料化によって、大手のスーパーマーケットは各社独自のエコバッグを販売し始めました。バッグ持参で買い物に行く人も少なくありません。
写真右:プノンペンにある大手スーパーマーケットで販売されているエコバッグ:土に還る素材の不織布が使用されています
【今後のプノンペン】
プノンペンの都市化は止まりそうにありません。カンボジアでの毎年の経済成長率は7%台(日本は2018年0.8%)で安定しています。
しかし経済発展につれて、これからもごみの量が増えていくことは目に見えています。プノンペンの総面積は僅か679Km2で東京(2191Km2)の3分の1以下です。広大な土地を利用することを前提とした埋め立てというごみ処理方法では限界があります。プノンペンの行政・民間企業・一般市民の3者が一緒に現状のごみ事情を認識し、根本的な解決を模索できなければ、プノンペンの発展は持続可能ではなくなってしまうかもしれません。
この記事は
カンボジアの首都プノンペンに在住
海辺ハマタロー が担当しました