循環型社会形成推進基本計画の策定に関する指針が公表されました
現在、今後5年間の廃棄物処理・資源循環政策の方向性を示す「循環型社会形成推進基本計画」(以下「循環基本計画」という。)の作成作業が環境省によって進められています。
2023年10月17日にその循環基本計画の方向性を示す「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」(以下「指針」という。)が公表されました。
基本計画策定のための指針として示されたことの概要は以下の通りで、基本計画本文において、これらの様々な施策が具体的に示されることとされています。
■概要
- 資源循環の取組によってGHG削減にも貢献できる部門の割合が約36%であること。
- プラスチックや金属などの素材、自動車、家電、PV(太陽光パネル)、LIB(リチウムイオン電池)などの製品について、資源循環のさらなる取組を進めるための具体的な施策を示す。
- 各国等で発生した電子部品スクラップ等について、日本の先進性を活かした適正なリサイクルを増加させる国際金属資源循環体制構築のための施策を示す。
なお、有害廃棄物対策や化学物質管理も含めた廃棄物の適正処理は、循環経済への移行に向けた取組を進めるに当たっての大前提であるとされています。
主な内容は、以下の通りです。
1. 循環経済への移行による持続可能な地域と社会づくり
- サービス化等を通じて資源・製品の価値の最大化を目指す循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行は、循環型社会のドライビングフォース。
- 循環経済への移行は、資源確保の強化や人権・環境デュー・ディリジェンスのルール形成、経済安全保障の強化等にも資する。
- 国内の温室効果ガス全排出量のうち、資源循環の取組が排出削減に貢献できる部門の割合は約 36%という試算もあり、循環経済とカーボンニュートラルに関する統合的な施策を「脱炭素型資源循環」政策パッケージを示す。
- 循環経済とネイチャーポジティブに関する統合的な施策についても示す。
- 循環経済への移行は、地域課題の解決や地場産業の振興にも貢献し得る。
2. 動静脈連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環
- 資源確保段階、生産段階、流通段階、使用段階、廃棄段階のライフサイクル全体での動静脈連携が重要。例えばレアメタル等の金属資源循環の強化の施策について示す。
- 動脈側での環境配慮設計、持続可能な調達、リデュース、リユース、バイオマス化・再生材利用、自主回収等を強化する施策、また、シェアリング、サブスクリプション等のサービス化、リペア・メンテナンス、リコマースを育成する施策を示す。
- 静脈側の資源循環に係る情報を活用し、動静脈連携や脱炭素化を促進するための施策などについて示す。
- 動静脈連携では、製品の安全性の確保、有害物質のリスク管理、不法投棄・不適正処理の防止等の観点にも留意し推進する。
- 分別・収集・利用等について、消費者や住民の主体的な意識変革や行動変容に繋げる施策を示す。
- 以下の素材や製品について、例えばプラスチック資源の回収量倍増、金属のリサイクル原料の処理量倍増といった目標達成のための具体的な施策について示す。
- <素材>
- プラスチック・廃油
- バイオマス(廃棄物系バイオマスや未利用資源、食品廃棄物及び食品ロス、紙、持続可能な航空燃料(SAF(Sustainable Aviation Fuel))
- ベースメタルやレアメタル等の金属
- 土石・建設材料などの素材
- <製品>
- 建築物
- 自動車
- 小電・家電
- 温暖化対策等により新たに普及した製品や素材(太陽光発電設備やリチウムイオン電池等)
- ファッション
- <素材>
- 経済的側面から、2030年までに循環経済関連ビジネスの市場規模を80兆円以上にするという目標に向け、GXへの投資等を活用する施策について示す。
- 動静脈連携促進のための情報基盤整備、拡大生産者責任、自主的行動の促進、経済的インセンティブ、情報的措置、公共調達、パートナーシップ等の適用について示す。
3. 地域の循環システムの構築と地方創生の実現
- 循環資源を各地域・各資源に応じた最適な規模で循環させることで、活気のあるまちづくりを進めていくことが重要。
- 具体的に食品ロス削減、使用済製品等のリユース、バイオマス資源の肥料やエネルギーとしての循環利用、プラスチックや金属資源等の資源循環、使用済紙おむつのリサイクルなどを地域産業として確立させる。
- 地域金融機関の役割が重要。また、分散型の資源回収拠点ステーションや施設の整備、生活系ごみ処理の有料化、廃棄物処理の広域化・集約的な処理の取組等を実践する。
- 廃棄物により汚染された地域環境の再生のため、マイクロプラスチックを含む海洋・河川等環境中に流出したごみ、廃棄物の不法投棄等の対策について示す。
4. 資源循環・廃棄物管理基盤の強靱化と着実な適正処理・環境再生の実行
- 循環経済関連の新たなビジネスモデル普及等に向けた技術開発、トレーサビリティ確保や効率性向上の観点からのデジタル技術やロボティクス等の最新技術の徹底活用を行う。
- 資源循環情報の把握や、各種デジタル技術を活用した情報基盤整備に関する施策を示す。
- 地域の資源循環を担う人材の育成・確保、様々な場での教育や主体間の連携促進のための施策、情報発信や仕組みづくりを進める施策、とりわけ新たな技術やサービスを活用する若者世代に、より効果的な施策を示す。
- ESG投資が拡大する中で、各事業者は循環経済に関する積極的な情報開示や建設的な対話を行っていくこと、投資家等はそれを適切に評価し、資金を供給することを後押しする。
- マイクロプラスチックを含む海洋等環境中に流出したごみに関して、国際連携を推進し、科学的知見の集約を進めるための施策について示す。
- 災害廃棄物の処理を適正かつ迅速に実施するため、平時から様々な主体間、地域レベルで重層的に廃棄物処理システムの強靭化を進める。その際、災害時のアスベスト・化学物質等への対応、住民等との情報共有について考慮する。
- 平時から仮置場として適用可能な土地をリストアップするなど、実効性のある災害廃棄物処理計画の策定等を促進する。
- 有害廃棄物対策や化学物質管理も含め、廃棄物の適正処理は循環経済への移行に向けた取組を進めるに当たって大前提。3R+Renewable(バイオマス化・再生材利用等) を徹底した後になお残る廃棄物の適正な処理を確保するという優先順位で取り組む。また、資源循環の促進に当たっては、製品の安全性の確保、有害物質のリスク管理、不法投棄・不適正処理の防止等の観点にも留意し、推進する。
- 廃棄物の不適正処理への対応強化、不法投棄の撲滅に向けた施策、アスベスト、POP廃棄物、水銀廃棄物、埋設農薬等の有害廃棄物対策を着実に進める。ポリ塩化ビフェニル(PCB) 廃棄物について、期限内の処理を推進する。
- 東日本大震災の被災地の環境再生のため、放射性物質で汚染された廃棄物の適正処理及び除去土壌等の最終処分に向けた減容・再生利用などを政府一体となって着実に進めるための施策について示す。
- 福島県内で環境再生の取組のみならず、脱炭素・資源循環・自然共生という環境の視点から福島復興に向けた未来志向の施策を示す。
5. 国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進
- G7、G20、OECD等の国際的な政策形成の場において、資源循環政策等に関する議論等をリードし、国際的な循環経済を促進する。
- ASEAN・OECD各国等で発生した金属資源(電子部品スクラップ等)について、日本の先進性を活かした適正なリサイクルを増加させる国際金属資源循環体制構築のための施策について示す。
- 不法輸出入対策について、取締りの実効性を確保するための施策について示す。
- ASEAN等の途上国で、日本の優れた廃棄物処理やリサイクル等に関する制度構築・技術導入・人材育成等をパッケージで展開する施策について示す。
6. 指標・数値目標に基づく評価・点検
- 現行計画の指標数が多いと指摘されているところ、分かりやすく把握できる指標数に絞って重点的に検討する。国レベルの指標だけでなく、企業や各地域の参考となる指標を示す。
詳しくは、下記の環境省のホームページをご確認ください。
「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」(中央環境審議会意見具申)について(環境省)
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
山野 が担当しました