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廃棄物処理法における基本方針の変更及び新たな廃棄物処理施設整備計画の策定について

1. 概要

廃棄物処理法では、政府が廃棄物の減量や適正処理に関する施策を計画的に推進するための基本方針を定めることとされています。カーボンニュートラルに向けた脱炭素化の推進、徹底した資源循環の促進等の廃棄物処理を取り巻く情勢変化を踏まえ、この度2023年6月30日付でその基本方針の内容が変更されました。

また同日、2023年度から2027年度までを計画期間とする新たな廃棄物処理施設整備計画が閣議決定されました。これは、基本方針に即して5年間の計画期間に係る廃棄物処理施設整備の目標などを定めたものです。

今回は、①基本方針と②新たな廃棄物処理施設整備計画について、それぞれ順にその概要をご説明します。

2. 基本方針の主な変更内容

前回見直し(2016年)以降の廃棄物政策を取り巻く様々な新しい要素を取り込んで改定がなされています。

主な変更ポイントは以下の通りです。

  • 廃棄物分野における脱炭素化の推進
  • 人口減少、少子高齢化の中での廃棄物処理施設整備の広域化・集約化
  • デジタル技術の活用等による動脈静脈産業の連携など

なお、廃棄物減量化等の数値目標については、現在見直し中の「循環型社会形成推進基本計画」のものと併せて1年後に改めて見直しを行う予定とされています。

次に、具体的な変更内容です。

●基本的な方向

  • サーキュラーエコノミー(循環経済)の取組として、デジタル技術も活用してトレーサビリティを確保しながら、ライフサイクル・バリューチェーン全体でロスゼロを推進。
  • 脱炭素社会の実現に向けて、廃棄物分野においても脱炭素化を推進。

●施策の基本的枠組み

  • 食品ロスの削減の推進に関する法律、プラスチック資源循環促進法を新たな枠組みに追加。

●関係者の役割

  • 国民、事業者、地方公共団体及び国に分類して様々な努力を求めています。

    【国民】

    • 再生利用が容易な商品の選択、レンタルなどのサービス利用の検討
    • 二次利用の推進等により排出抑制に協力
    • 食品ロスの削減、食べ残しの削減の徹底

    【事業者】

    • 廃棄物処理に伴う温室効果ガスの排出削減等
    • 製品の再使用促進のため修理の容易化等
    • 再生利用促進のため単一素材化等
    • 植物等再生可能な素材への代替の検討
    • 食品関連事業者においては食品ロスの把握、削減、再生利用等
    • 静脈産業との連携による廃棄物の循環的利用
    • 製品の処理時の安全性、環境負荷低減などに関わる情報のホームページ、製品等への記載、必要な情報の提供

    【地方公共団体】

    • 一般廃棄物処理に伴う温室効果ガスの削減等
    • 市町村においてはプラスチック使用製品廃棄物のリサイクル促進

    【国】

    • 食品ロスの関係主体の取組支援、連携・協同の促進
    • 動静脈の連携強化、広域認定制度等による産業廃棄物処理の広域化、デジタル技術を活用した情報基盤整備等による、廃棄物の適正管理・ライフサイクル全体での資源循環を促進

●適正な処理体制の確保

  • 【一般廃棄物】

    • 都道府県は市町村と連携し、広域化・集約化に係る計画を策定・更新し、安定的、効率的な処理体制を推進

    【産業廃棄物】

    • 廃棄物処理の脱炭素化を推進
    • 蓄電池、太陽光パネル等の今後多量の排出が見込まれる使用済み製品の処理・リサイクル体制の整備を推進

    【有害使用済機器等】

    • 有害使用済機器(電気電子機器等)の保管・処分事業者の届出、処理基準の遵守等により、適正な処理やリサイクルを推進(2017年法改正)

    【プラスチック】

    • プラスチック資源循環促進法(2021年制定)を踏まえ、プラスチック使用製品のライフサイクルを通じて、過剰な使用の抑制、再生プラスチック等への切替え、徹底したリサイクル等の環境整備を推進

●廃棄物処理施設の整備

  • 【一般廃棄物処理施設】

    • 資源の継続的な利用促進のため金属やプラスチック等の各種リサイクル施設の整備を推進
    • 回収した資源やエネルギーを有効利用できる立地選定等を含めて推進

    【産業廃棄物処理施設】

    • 資源循環と脱炭素の両立に向け、脱炭素型の金属、プラスチック等リサイクル設備の導入を支援
    • 廃棄物処理施設を循環資源の供給拠点と位置づけて整備を推進

●廃棄物処理の技術開発及び調査研究

  • 小型家電リサイクルでの人工知能等による選別システム、リサイクル技術の高度化、効率化の推進
  • リチウム蓄電池等を安全に処理できる体制の構築
  • 2050年の脱炭素社会実現に向けて、廃棄物の排出抑制、循環的利用を徹底した上、将来的には脱炭素化に資する技術(焼却処理とCO2回収・有効利用・貯留等の技術の組み合わせや熱分解等でのカーボンリサイクル技術等)の開発・普及が必要

<参考>環境省報道発表資料
「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」の変更及び意見募集の結果について

3. 新たな廃棄物処理施設整備計画

廃棄物処理施設整備計画は、公共で整備する廃棄物処理施設について、この5年間の目標と概要を定めるものです。前回の計画が2022年度までであることから、新たに2023年度から5年間の計画が策定されました。

計画では、基本的理念、廃棄物処理施設整備及び運営の実施、整備事業実施に関する重点目標について記載されています。

記載内容の主なポイントは、以下の通りです。

●基本的理念

  • Renewable(プラスチックなどを再生可能な資源に替えていくこと)の取組みや循環経済への移行の重要性から資源循環の取組みを強化
  • 廃棄物処理施設の長寿命化・延命化、広域化・集約化、適切な更新・改良等を推進するほか、将来コストを可能な限り抑制
  • 廃棄物発電やメタン発酵の活用により、他分野を含めた温室効果ガス排出削減への貢献が可能。更なる排出抑制、熱回収の高度化、将来的なCCUS(CO2の回収・有効利用・貯留)等の技術導入によって脱炭素化を推進

●廃棄物処理施設整備及び運営の実施

  • 廃棄物分野からの素材・原料等の供給により、循環経済への移行、ライフサイクル全体における温室効果ガス削減に貢献。選別等でデジタル技術を活用
  • 建設・維持管理・解体に係るトータルコストの縮減、更新需要の平準化の必要性
  • 地域の特性に応じた効果的なエネルギー回収技術の導入の促進。焼却処理とCCUS等の組合せ、熱分解等によるカーボンリサイクル等の今後の技術動向への柔軟な対応
  • 廃棄物処理施設での回収エネルギーの活用による地域産業振興、防災拠点、リユース拠点としての活用など、地域に多面的価値を創出する施設整備を推進

●整備事業の実施に関する重点目標

  • 計画期間中の廃棄物処理施設整備について具体的な重点目標を設定し、その達成に向けて事業執行を推進
  • 温室効果ガス排出削減に向けた全体像を明示するため、補助指標を設定
  • 重点目標及び補助指標(一例)は、以下の表の通り。

    (出典)環境省ホームページ:廃棄物処理施設整備計画の概要(4ページ)

<参考>環境省報道発表資料
廃棄物処理施設整備計画の閣議決定及び意見募集の結果について

詳しくは、環境省ホームページをご確認ください。
廃棄物処理施設整備計画の閣議決定及び意見募集の結果について[2023年06月30日]
廃棄物処理施設整備計画の概要


この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
山野 が担当しました

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