大阪府の条例(土壌関係)の解説
【1】はじめに
大阪府では、府内の土壌汚染による府民の健康影響を防止するため、土壌汚染対策法に加えて土壌汚染に関する規制等の規定を追加した府条例(正式名称:生活環境の保全等に関する条例)が平成16年1月1日から施行されています。
【2】制定以降の主な改正点
平成22年の土壌汚染対策法の改正等にともない、府条例も順次改正が行われています。主な改正点と内容は、以下の通りとなります。
改正点(改正時期) | 内容 |
---|---|
調査面積の考え方を土壌汚染対策法と統一(平成22年4月) | 敷地面積が3000m2以上の場合に調査義務付けていたが、形質変更面積が3000m2以上の場合に調査義務付けとした。 |
汚染判明時の区域指定の区分を変更(平成22年4月) | 「要措置区域」を“要措置管理区域” 「形質変更時要届出区域」を“要届出管理区域” |
条例による指定調査機関の廃止(平成22年4月) | 府指定の調査機関のうち、約9割が法の機関と重複しているための制度廃止。 |
汚染土壌の搬出に関する規制追加(平成23年8月) | 搬出計画の届出・運搬基準・処理委託基準・管理票制度の追加 |
特例区域の新設(平成24年3月) | 一定条件を満たすことにより、形質変更時要届出区域および要届出管理区域を「一般管理区域」、「自然由来特例区域」、「埋立地特例区域」、「埋立地管理区域」に分類。 |
改正点(改正時期) | 内容 |
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自主調査実施に際して、行政が助言や指導を行うことができる(平成23年3月) | 自主調査結果の把握と、調査方法の信頼性および客観性の担保 |
敷地内に土壌を受け入れる場合は、搬入土砂の汚染状況把握に努めること(平成23年3月) | 汚染された土壌が、いろいろな所に拡散することを防止 |
土地所有者等に対し、調査結果等の記録・保管義務化(平成23年3月) | 記録の散逸を防ぐこと、および土地所有者等が変わったときの承継を確実にすること |
【3】調査および対策のながれ
府条例では条例81条の中で、以下の場合に調査および対策を行うことを義務づけています。
大阪府条例の土壌汚染に係るフロー図
出典:大阪府の土壌汚染対策制度~土壌汚染対策法と大阪府生活環境の保全等に関する条例~(大阪府環境農林水産部環境管理室)
【4】府条例の主な特徴(法との違い)
土壌汚染対策法と府条例は、おおよその枠組みは似ているものの、一部の事項については異なります。大阪府条例では、①土壌汚染対策法で定められている3,000m2以上の土地の形質の変更時に必要となる形質変更届に加えて、履歴調査報告書の提出が必要となります(条例81条の5)。また、土壌汚染対策法で定められている調査契機に加えて、②有害物質使用届出施設等を設置している敷地の土地の軽微な形質変更時にも調査が必要となる場合があります(条例81条の4および6)。なお、③土壌汚染対策法で定められていない調査契機は、主にダイオキシン類に係る特定施設の廃止時と考えられます。以下に土壌汚染対策法と府条例の比較を示します。
土壌汚染対策法と大阪府条例の調査契機及び調査対象物質の比較
出典:土壌汚染対策法及び大阪府生活環境の保全等に関する条例に基づく調査・対策の手引き(大阪府環境農林水産部環境管理室)
以下に土壌汚染対策法と府条例との比較の重要な部分について定義や考え方を整理しました。
土壌汚染対策法 | 大阪府生活環境の保全等に関する条例 | ||
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目的 | 国民の健康の保護 | 府民が健康で豊かな生活を享受できる社会の実現に資する | |
対象物質 | 特定有害物質25項目 | 有害物質25項目(法と同様)にダイオキシン類を追加したもの | |
主な土壌調査の契機 | 有害物質の取り扱い事業所における調査義務 | 水質汚濁防止法または下水道法の特定施設で有害物質を使用されていた場合のみ、特定施設廃止から120日以内に土壌調査を実施し、報告を行う義務が課せられる。 | 左記の土壌汚染対策法の定める調査義務に加えて、府条例の定める有害物質使用届出施設等を廃止する場合、その廃止から120日以内に土壌調査を実施し、報告を行う義務が課せられる。 稼動中の有害物質使用工場敷地内で土地の形質を変更しようとする場合、注)形質変更部分の土地利用の方法によっては土壌調査を実施し、報告を行う義務が課せられる。 |
土地の形質変更時の義務 | 3,000m2以上の改変面積(掘削および盛土に係わる面積)の場合、30日前までに届出が必要であり、この際に、原則、自治体が自らのもつ情報(有害物質使用届等)に基づきおそれを判断する※。この結果、土壌汚染のおそれがあると判断された場合は調査命令がかけられる。 | 3,000m2以上の改変面積(掘削および盛土に係わる面積)の場合、30日前に、土地の利用の履歴、有害物質の使用等の履歴及び土地における土壌汚染調査の実施結果についての調査(履歴調査)を実施し、知事に報告を行う義務が課せられる。 | |
記録の保管 及び承継 |
規定なし | 条例に基づく土壌汚染状況調査および措置を実施した土地所有者等は、結果を記録・保管義務がある。土地所有者に変更があった場合には当該結果を引き継ぐことが必要となる。 | |
区域の指定 (台帳) |
基準不適合であった場合、人の健康被害のおそれの有無に応じて、要措置区域または形質変更時要届出区域が指定さて、その内容が台帳に記載され、閲覧に供される。 | 左記の土壌汚染対策法の定める規定に準じ、要措置管理区域または要届出管理区域が指定され、その内容が台帳に記載され、閲覧に供される。 |
条例81条の6に基づく調査実施の考え方
出典:土壌汚染対策法及び大阪府生活環境の保全等に関する条例に基づく調査・対策の手引き 図4-1に筆者追記
【5】調査および対策実施における留意点
調査および対策を行う際の府条例上の主な留意点は、以下のとおりです。
- 土地の形質変更面積(掘削および盛土に係わる面積)が3,000m2以上であれば、すべて届出と履歴調査が必要となります。
- 要措置管理区域では原則形質変更ができません(ただし対策を行う場合等は除く)。
- 自主調査で行政に対し必要となる助言や指導を求める場合、結果が指定基準に適合しないことが判明すれば、法14条に基づく区域指定の申請が必要となります。
- 自主調査(形質変更面積が3,000m2以上の場合)において、法第14条に基づく区域指定の申請を行う際は、履歴調査(必須)によりダイオキシン類の調査義務の有無についても条例に基づき判断されます。
- 稼働中の有害物質使用工場敷地での土地の形質変更時の調査(条例81条の6)は、掘削深度50cm未満、盛土のみ等の軽易な形質変更であっても形質変更部分の土地利用の方法によっては土壌調査を実施し、報告を行う義務が課せられ、対象となる土地の形質変更の規模の下限はありません。
【参考資料】
大阪府ホームページ
土壌汚染対策制度
大阪府の土壌汚染対策制度 ~土壌汚染対策法と大阪府生活環境の保全等に関する条例~
土壌汚染対策法及び大阪府生活環境の保全等に関する条例に基づく調査・対策の手引き
大阪府生活環境の保全等に関する条例(土壌汚染対策関係)の一部改正について
この記事は
DOWAエコシステム 大阪営業所
金山 が担当しました