運搬に関する規制について
運搬に関する規制の法律として、道路交通法、廃棄物処理法、毒物及び劇物取締法、労働基準法、消防法、高圧ガス保安法、国際海上固体ばら積み貨物規制(以下IMSBCコード)などがあります。今回は、消防法、高圧ガス保安法、IMSBCコードの3つを解説します。
■消防法上の危険物規制について
危険物の運搬は、危険物の量に関係なく運搬の基準(第16条)が適用されます。
概要は下記の通りです。
- 運搬容器・積載方法及び運搬方法について政令で定める技術上の基準に従うこと。
- 運搬する危険物の取扱免状を持つ者を乗車させること。
- 危険物の流出その他の事故が起こったときは、引き続く危険物の流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去などの応急処置を講じること。
ただし、航空機・船舶・鉄道による運搬にこの規制は適用されません。
消防法に定める危険物は下の通りです。危険物の運搬を委託されている場合は、事故が起こった場合の応急処置等のマニュアルについてご確認ください。
- 第1類
- 酸化性固体
塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類、硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類 - 第2類
- 可燃性固体
硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、引火性固体 - 第3類
- 自然発火性物質及び禁水性物質
カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りん、アルカリ金属(カリウム及びナトリウムを除く、)及びアルカリ土類金属、有機金属化合物(アルキルアルミニウム及びアルキルリチウムを除く。)、金属の水素化物、金属のりん化物、カルシウム又はアルミニウムの炭化物 - 第4類
- 引火性液体
特殊引火物、第1石油類、アルコール類、第2石油類、第3石油類、第4石油類、動植物油類 - 第5類
- 自己反応性物質
有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ヒドラジンの誘導体、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン塩類 - 第6類
- 酸化性液体
過塩素酸、過酸化水素、硝酸
■高圧ガス保安法
高圧ガスは下のように定義されます。高圧ガスを充てんする容器は、経済産業省令で定める技術上の基準に従ったものである必要があります。バルブなどの付属品も同様です。
高圧ガス保安法については、運搬時の規制は特に定められていませんが、運搬の際に高圧ガスを充てんする容器は、技術上の基準に従ったものでなければいけません。
- 圧縮ガス
常用の温度で圧力が1MPa(メガパスカル)以上になるもので、現に1MPa以上のもの。 35℃で1MPa以上となるもの。 - 圧縮アセチレンガス
常用の温度で圧力が0.2MPa以上になるもので、現に0.2MPa以上のもの。 15℃で0.2MPa以上となるもの。 - 液化ガス
常用の温度で圧力が0.2MPa以上になるもので、現に0.2MPa以上のもの。 0.2MPaとなる場合の温度が35℃以下であるもの。 - その他の液化ガス(液化シアン化水素、液化ブロムメチル、液化酸化エチレン)
35℃で0MPaを超えるもの(つまりこれらの物質は、圧力がどの状態でも(たとえ圧力がゼロに限りなく近くても)高圧ガスに定義される)。
■IMSBCコードについて
固体ばら積み貨物の海上輸送の安全規制については、海上人命安全条約(SOLAS条約)に基づき実施されていますが、2011年1月1日から、固体ばら積み貨物(穀類を除く)の運送に関するIMSBCコード(International Maritime Solid Bulk Cargoes (IMSBC) Code)が国際的に強制化されます。
2011年1月1日からは、IMSBCコード掲載の貨物と、荷積み国の主管庁の承認を受けた貨物のみがばら積みして輸送できることとなっています。
従って、IMSBCコードに掲載されていない固体ばら積み貨物については、荷送人が荷積み国の主管庁に貨物の性状等を提出し、主管庁の評価・承認を受けないと運送出来ないこととなります。
国土交通省海事局HP:http://www.mlit.go.jp/maritime/safetyenv/kotaishinsa/kotaishinsatop.html
これに伴い、船舶における貨物輸送の基準を規定している「特殊貨物船舶運送規則」と「危険物船舶運送及び貯蔵規則」が改正されました。
IMSBCコードの強制化により、固体をばら積みで船舶輸送する場合、IMSBCコード未掲載貨物の場合、荷送人は主管庁に荷物の特性・性質を提出して承認を得なければならず、貨物を運搬する船長へ詳細な貨物情報が提供されることになります。この制度は、船長が貨物の詳細な情報(特性・性質等)を把握することで、より安全な運搬を目指したものです。
IMSBCコード未掲載貨物を運搬するためには、国土交通省海事局の固体ばら積み貨物査定検討ワーキンググループへ性状等の資料の事前提出が必要です。
2010年11月現在、以下の貨物については、固体ばら積み査定検討WGにて、その性質及び運搬方法の要件が承認されております。
- 平成22年8月30日承認
硫酸第一鉄・七水和物、硫酸法酸化チタン粒状中和滓、粒状四三酸化鉄、ソーダライムガラス - 平成22年10月15日承認
チタン石膏、石炭灰、無水珪酸ナトリウム(カレット)、コールタールピッチ、水酸化アルミニウム、石膏(造粒品)、化学石膏(液状化の恐れのあるもの)、カンラン岩 - 平成22年11月5日承認
化学石膏(液状化するおそれのないもの)、マンガン系合金鉄スラグ、非鉄スラグ、水底土砂(建設工事用)、土砂(建設工事用)、混合処理土(建設工事用)、石、 がれき
DOWAエコシステムでは、汚染土壌の運搬に船舶も利用しております。汚染土壌は、IMSBCコード未掲載貨物であるため、国交省、地方運輸局に対して汚染土壌の性状等の事前提出を行い、運送に関しての査定書の取得を進め、2011年1月1日からの運搬に支障のないよう準備をしております。
この記事は
DOWAエコシステム ロジスティクス事業部
廣田 が担当しました