被災地を訪れて・・・
これまで私は、被災地に何度か足を運び、その様子を見てきた。倒壊した家屋や商店、ひっくり返ったクルマや市場の屋根の上まで打ち上げられた船舶、へし折れた電柱に根ごと抜かれ流された防風林。大地震と津波によって、東北の沿岸の暮らし、それを支える家や会社や工場、役所までも「瓦礫」と呼ばれるものに化してしまった。
崩れた工場の周辺には、20~30cmも堆積した海砂が、油で黒く汚れ異臭を放っている所もあった。敷地の側溝、事務所の中、コンベヤーやタンクの下など、あらゆる空間に黒い海砂が入り込んでいた。
大地震がおきるまでは、美しいリアス海岸の砂が、あの地震の日から「津波堆積物」、「ヘドロ」と呼ばれるようになってしまった。
私は被災地を訪問しただけだが、地震前後の違いの大きさに愕然とし、被害の大きさに呆然とし、虚無感も感じた。おそらく、復興への道のりはつらく長いものになるだろう。
しかし、明けない夜はない。
想像を絶する自然の猛威に直面した私たちができること。それは、今まで培った経験、技術を復興に役立てられるよう努力し続けることだ。そのために全力を尽くそうと、男50歳にして決意した。