山師(やまし)
私の祖父は山師。私がまだ小学校に通い始める前に他界したので、何を生業としていたかなど全く知らなかった。
十数年後、高校3年の部活動が終わり、割と暇になった私は絵ばかり描いていた。
将来もデザインの仕事に携わりたいと秘かに思っていた私は、建築デザインのある大学を目指した。
先生とも相談したがいろんなものが足りないので、デザインはあきらめ土木学科で願書を提出した。
合格発表日に名前はなかったが、後日連絡があり隣の学科の資源開発工学科に補欠で入学させてくれるという。何となく上京してまたデザインの関係の仕事でもしようかと思っていた私だが、結果的に滑り止めなしの一発合格という肩書にもあこがれ入学を決めた。
はじめの3年間は遊びまくった。
3年の終わりに研究室を決める際、比較的縛りの少ない研究室を選んだが、人気が殺到し5人が他の研究室に行かなければなかった。その時空いていたのが地質工学研究室だった。噂では先生が一番厳しいと言われており、みんなが避けたい研究室だった。ジャンケンで負けた者が地質工学研究室に行くという空気が流れた時、3年間遊びまくった友だち4人と目が合った。「1年ぐらいまじめにやるか!」・・・おかげですんなり決まった。
親父にこの結果を報告した。
「いわゆる山師になるための研究室」と説明したら親父は笑いながら何かを持ってきた。
寅さんみたいなカバンだった。「じいさんの形見だ」と言って中を見せてくれた。地質屋の小道具やらお宝の地図みたいなものやたくさんの石が出てきた。
その時は祖父がどこの鉱山で働いているのかなど気にもしなかった。
つい先日、その祖父の連れ合いでもある祖母が他界した。
何と103歳。不謹慎だがみんなが笑顔だった。葬儀ではいろいろな出会いがあった。
通夜のとき霊前で線香を焚きながら叔父と話をした。線香の火を絶やしてはいけないという思いからか、なかなか寝付けず夜更かしをしてしまった。
そこで祖父の話が出た。はじめて祖父がどこで働いていたのかを聞いた。
聞いたことのない鉱山。しかも金山だという。
さっそくググってみたら。ほんとに存在しており、しかもDOWAが買収していた。
入社して20年。ようやくクイズが解けた感じだ。
ウソのようなホントの話。
じいちゃん、ばあちゃん、ありがとね。
山師の七つ道具
(祖父のモノではありません)
- ペンマグネット 岩石の磁性を調べる
- ルーペ 鉱物を見る
- ハンマー 観察するため、サンプルを採るために岩石を割る
- 高度計 地形図を持って道なき山に入ったときに、自分の位置を把握する
- クリノメーター 鉱脈・岩脈や地層の方向(走向・傾斜)を調べる
この記事は
DOWAエコシステム ジオテック事業部
辻本 が担当しました