廃太陽光発電パネルの広域収集網導入のモデル事業
■はじめに
2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)開始後、日本では太陽光発電パネルの導入が急速に加速されました。今後は、これまでに導入された太陽光発電パネルが、廃棄物として排出されることが予想されています。特に、太陽光発電パネルは、住居の屋根であれば数枚程度から、メガソーラーであれば数万枚程度まで、全国のさまざまな場所にさまざまな規模で導入されています。そのため、この導入実態を考慮して、廃棄物・リサイクル対策を今から進めていくことが、社会的に重要な課題となっています。
この課題の解決の一助になればという思いから、DOWAエコシステムグループのイー・アンド・イー ソリューションズ(「弊社」)は、以下のモデル事業の下で、廃太陽光発電パネルの広域収集網導入のモデル事業を行いましたので、ここではその概要をご紹介します。
- ◇発 注 元 :
- 環境省
- ◇事 業 名 :
- 平成27年度地域循環拠点(エコタウン等)高度化モデル事業(廃太陽光発電パネルの広域収集網の導入に係るモデル事業)
- ◇事業実施期間:
- 2015年9月28日から2016年3月22日まで
■モデル事業の概要
1. 着目した課題
太陽光パネルはメーカーが異なっても概ね同じ素材で構成されているため(ただし、化合物系は除く)、一定の量を確保できれば、処理の効率化をはかることができ、その段階での素材のリサイクルも容易となります。しかしながら、今の日本では、全国の各所に存在する発電事業所や住居から排出されるような廃太陽光パネルが集約される社会的な仕組みがないため、処理の効率化は困難です。廃棄パネルというと終了時をイメージしがちですが、導入量の増加に伴って、運搬・設置時の破損、故障、災害などによる破損なども増加しており、現状でもこれらを受け止める仕組みが望まれています。
そこで、弊社は、廃太陽光発電パネルの収集ポイントを広域的に配置する社会的な仕組みを提案し、この実証性をモデル事業で評価いたしました。特に、廃太陽光パネルは不用意に扱うと感電やけがをするおそれがあるため、作業者の方の安全性を確保することが重要です。そのため、廃太陽光発電パネルの収集・リサイクルが既に義務化されている欧州で廃太陽光発電パネルの広域収集網の運営を行っているPV CYCLEという団体からの支援を得て、欧州と同等水準で安全面への配慮を行うことの実現可能性の評価も行いました。
2. 収集ボックスの入手と収集ポイントの設置
まず、収集ポイントに配置する収集ボックスを、PV CYCLEから入手いたしました。この専用の収集ボックスを使うことで、安全に廃太陽光発電パネルを保管すること、また、安全・容易に廃太陽光発電パネルを運搬することが可能となります。既に欧州で数百個以上の使用実績があります。
続いて、収集ポイントを選定、設置いたしました。今回は、工務店のネットワークである東北ネットワーク会にご協力をいただき、その会員の方に収集ポイントとしての機能を果たしていただきました。なお、収集ポイントの選定要件としては、各収集ポイントが一定の距離を持つこと、屋根のある倉庫持つこと、収集ボックスが満杯になると1トン程度の重さになるためフォークリフトを持つこと等の要件を用いました。
収集ポイントの管理者の方には、安全に収集ポイントを運営するための指示を、口頭と文書で行いました。なお、安全のための指示は、PV CYCLEが欧州で実際に使用している文書を和訳し、使用しました。
3. PV CYCLEの招へい
更に、実際にPV CYCLEの代表を日本に招へいし、本モデル事業で設置した収集ポイントへ案内しました。結果、PV CYCLEの代表は、安全面などへの配慮状況等を確認し、本モデル事業で設置した収集ポイントがPV CYCLEにより支援を受けたものであり、欧州と同等のレベルで取り扱いされることを認めました。
この作業の終了後、HPを使って広報を開始しました。
4. 収集結果
試験期間が短かったこともあり、現在までの収集量は、まとまったものが百数十枚という程度で、これは、秋田エコタウンの施設にてリサイクルの試験研究のサンプルとして用いて、その後、適正処理を行う予定です。
5. 収集ポイントへの声
アンケートや口コミ等によって、本収集ポイントへの声を集めることも本事業の大きな目的でした。結果、「価格が他の廃棄物処理業者より安価であれば利用したい」、「収集ポイントまで自ら運搬する必要がある点が課題(常に行うのは面倒)」、「このようなシステムは今後必要であろう」等のご意見をいただきました。また、破損品ではなく、性能不良で交換した廃太陽光発電パネルは数枚程度であれば、工務店などにとって展示品等としての用途もあること、また、数枚の廃棄品であれば工務店等で他の廃棄物と一緒にためておくなど、必ずしも不要になった時点ですべてが廃棄物処理されているわけではないということ、等も分かりました。
6. まとめ
本モデル事業を行うことにより、短期的な観点からは、廃太陽光発電パネルの廃棄物・リサイクル対策は急を要するわけではないけれども、中長期的な観点から、正確な現状把握の継続と、社会的な仕組みの準備のための検討が必要と評価しました。今後必要となる準備として、(1)広域収集サービスに価格競争力を持たせること、(2)広報の充実、(3)広域収集網とリサイクルプラントとの情報での結び付け等の項目を、本モデル事業では洗い出しました。弊社は、今後も公的機関からの支援を得て、エリアの拡大もお願いしながら、より多角的な観点からのモデル事業を続け、資源価格が変動しても安易に廃太陽光発電パネルが最終処分されなくなる社会システムの構築の実現を目指します。