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その道の人に聞く

EUのCE(Circular Economy)政策 その4
〜行動計画の構成と内容−3〜

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

今回は2015年に欧州で発表され、海外で注目されている資源効率(Resource Efficiency)や循環経済(Circular economy:CE)に関する研究をされているIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳(あおき ちか)様に「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしました。

【その4】行動計画の構成と内容−3

今回は、前回に引き続き、循環経済に向けた行動プラン(Closing the loop-An EU action plan for the Circular Economy)の【4】再資源化 についてお伺いします。
今回もよろしくお願いします。

再資源化のお話に入る前に、前回少し議論したエネルギーと廃棄物管理の関連について、先日(2017年1月26日)ECから新しい政策文書が発表されましたので、それについて少し触れさせていただければと思います。

その政策文書(コミュニケーション)とは、Waste to Energy(廃棄物のエネルギー回収)についてもので、「循環経済における廃棄物のエネルギー回収の役割(The role of waste-to-energy in the circular economy)」というタイトルがつけられています。

【参照資料】
欧州委員会 / The role of waste-to-energy in the circular economy

ここでは、燃焼炉やセメント・石灰生産における廃棄物(の共)焼却(co-incineration)、廃棄物焼却、生物分解可能廃棄物の嫌気性消化、廃棄物由来の燃料生産、その他熱分解やガス化による間接焼却プロセスなどの廃棄物のエネルギー回収の手段について、今後各国がこれらの施設を建設していく際に留意すべき点などをまとめています。

今まで説明してきた内容とも重なりますが、今後循環経済を進めていくにあたり、EUの廃棄物ヒエラルキーが十分に確保されるよう各国はエネルギー回収施設の新設を慎重に検討すべきということが示されています。

エネルギー回収が、高いレベルの発生抑制や再使用・リサイクルを阻害しないようにするため、エネルギー回収は、エネルギー連合戦略(Energy union strategy)やパリ協定にそって脱炭素化への循環経済の貢献が最大化する場合に限る

ということを推奨しています。

つまりは、高効率のエネルギー回収技術を選択するということ、また、焼却によるエネルギー回収という選択は循環経済への取り組み(発生抑制、再使用やリサイクル)を阻害しないよう慎重にすべきで、かつ循環経済への取り組み(再使用やリサイクル等)が進むことによって、焼却炉などの施設が(不要な)座礁資産になる可能性を認識してくださいという呼びかけといえます。

欧州としては、エネルギー回収の気候変動への貢献の可能性を尊重しつつ、廃棄物を発生させない、また、最大限循環させるということをあくまで優先するということかと思います。

【4】再資源化
(From Waste to Resource:boosting the market for secondary raw materials and water reuse)

最初にお伺いしたいのですが、タイトルにある、“secondary raw materials”は、直訳すると2次原材料。これは、分別・破砕・選別などを経て生産された、マテリアルリサイクルに回されるもの=再生品の原料・リサイクル材、と考えてもいいですか?“リサイクル”という言葉は使われないんですね。

“secondary raw materials”という言葉ですが、”secondary resources(2次資源)”とともに、資源効率や循環経済の分野で、よく見られる用語です。
ここで、“secondary raw materials”としているのは、あくまで物質資源が循環させることを示すため、“secondary raw materials”としているものと考えます。

リサイクルという言葉を使わないというのは、”primary resources” “primary raw materials”といったいわゆるバージン資源との対比で”secondary”を使い、あくまで原材料(または資源)であるという点を強調するため。また、リサイクルのみならず再使用など想定されているためではないかと思います。

【参照ホームページ】
欧州委員会 / Secondary Raw Materials

「【4】再資源化」の内容について教えてください。

この再資源化の項目では、廃棄物を資源としてとらえ、2次原材料・2次資源市場(再生資源市場)を構築・拡大しましょうということに、主眼が置かれています。

具体的に、ご説明していきます。

①特にプラスチックなど必要な分野において、再生原材料の質にかかる基準を開発する作業を立ち上げる。
また、「廃棄物の終了(end-of-waste)」に関するルールの改善を提案する。

2次原材料は1次原材料(バージン原料)と同等に貿易・取引可能なはずなのに、EUにおける2次資源の利用は、プラスチックで5%程度と非常に少ないのが現状です(鉄やアルミをのぞく)。

現状、EUに2次資源に関する基準がない事が、2次原材料に含まれる不純物レベルや質の高いリサイクルへの適合性などの確認を困難にしていると認識されています。
そこで、2次原材料の使用を拡大するために、再生原材料の質が明確になるように、そのための基準を作るとされています。

“特にプラスチックについて”とプラスチックが名指しされているのは、プラスチックリサイクルの改善に力を入れようとしてのだと思いますが、この“プラスチック”は、容器包装のプラスチックを指すのでしょうか?家電や車、家庭から出るプラスチックごみも含まれるのですか?

今後、循環経済におけるプラスチック戦略(Strategy on Plastics in a Circular Economy)検討される予定もあり、EUとしてプラスチックの循環に注力していきたいからと考えます。

【参照ホームページ】
欧州委員会 / (Strategy on Plastics in a Circular Economy)

どのプラスチックを指すのかについてですが、今回の行動計画では、明確に示されていません。ただ、廃棄物法制に関する改正指令案では、「容器包装廃棄物の再使用のための準備を進め、リサイクル目標を増強する」とあること、また、EUにおけるプラスチック廃棄物の4割強が容器包装であることを考えると、容器包装が検討の中心になるのではないかと推察されます。

end-of-wasteに関しては、前回、廃棄物管理にも出てきました。

廃棄物の終了のルール(2次資源が法的に廃棄物と分類されない時点(段階))を決め、前回お話したように、EU市場内で二次資源が有効に循環するよう、廃棄物でない(end-of-waste)と考えられる基準をより詳細にして、加盟国間での廃棄物の終了(end-of-waste)基準のばらつきを少なくし、(2次原材料として使えるかどうかの)確実性と(加盟国の間での)公平な市場を創出する、とされています。

また、2次原材料のEU内での国境を超えた移動を促進するために、廃棄物終了の基準を開発するだけではなく、電子データの使用を通じた越境移動手続きの簡素化、越境移動の阻害要因の検証、原材料情報システム・原材料研究(および電子データの使用)を通じた廃棄物貿易の(取引)データ改善などを進めるとしています。

②製品中の懸念化学物質の削減及び追跡の改善を含む、化学物質・製品・廃棄物のインターフェイス(相互関連性)に関する分析とオプションの提案を行う。

プラスチックに含まれる臭素系難燃剤は、POPs条約附属Aに掲げられていて、臭素系難燃剤を含む廃棄物のリサイクル防止に向けた提言が締約国間で共有されていますね。こういった物質を含む廃棄物のリサイクルを検討していくための、分析を行うという事ですか?

そうですね、臭素系難燃剤も含めて、健康や環境への悪影響が懸念される物質について、製品・化学物質・廃棄物政策の相互関連性を循環経済の観点から精査していこうという取組かと思います。

例えば、健康や環境への悪影響が懸念される物質の数は年々増加し、規制や禁止の対象となったりしているわけですが、規制対象となる前に製品に含まれた懸念化学物質が、リサイクル段階で排出されることもあります。そのような化学物質をリサイクル段階で発見・排除することは、特に小規模リサイクラーにとって困難であるといえます。

そこで、非毒性物質サイクルの促進や製品中の懸念化学物質の追跡を行うことによって、リサイクルを促進し、2次資源市場を拡大できるのではないかという考え方です。そして、これらを実施するために製品・化学物質・廃棄物政策の関連性を分析し、懸念物質への対応、リサイクラーの負担軽減、リサイクルプロセスにおける化学物質のトレーザビリティとリスク管理に対応していきたいということかと思います。

この化学物質・製品・廃棄物のインターフェイスに関する分析についても、先日(2017年1月27日)、今後の方向性が示されたペーパーが出ました。

【参照ホームページ】
欧州委員会 /(Analysis of the interface between chemicals, products and waste legislation and identification of policy options.)

ここにおいては、以下の4点に取り組む必要があると示されています。

  • 製品や廃棄物中の懸念物質の情報不足(リサイクル材に対するREACH/CLP規則やRoHS規則の要求事項との関連)、
  • リサイクル材やリサイクル材由来の成形品における懸念物質の出現(対応のための枠組み、懸念物質を含むリサイクル材使用に関する社会的費用便益評価)、
  • 廃棄物でないことの判断に関する不確実性(廃棄物でないとの解釈の不確実性による化学物質・製品政策適用の難しさ)、
  • EU廃棄物分類手法の適用の困難さと物質のリサイクル可能性に関する影響(有害か非有害かの分類方法に関する一貫性の不足が、懸念物質を含む廃棄物質のリサイクル可能性に影響)

関連の動きとしては、2017年1月26日に発表されたRoHS指令の改正案に、発生抑制に向けて、製品の長寿命化や再使用の奨励のために、(RoHs1では対象外だった)特定の電気電子機器の再販や中古市場、修理活動(2019年7月22日以前に市場に出たもの)に関する提案が出されています。

【参照資料】
欧州委員会 /(EU on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment)
欧州委員会 /(on the implementation of the Circular Economy Action Plan)

③原材料情報システムのさらなる開発に取り組み、原材料フローに関する全EU規模の研究を支援する。

これは、具体的にはどのような事なのか、教えてください。

先の2次原材料のEU内での国境を超えた移動促進に関してもお話しましたが、原材料情報システム(Raw Materials Information System:RMIS)とは、EUの研究機関のJoint Research Centreが管理するデータベースのことで、欧州の(非エネルギーの)原材料セクターに関連する政策・取り組み・データに関する包括的なオンライン情報庫のことです。

RMISにある情報の中心として、Raw Material Score Board がありますが、ここでは、EUにおける原材料の関連動向(例:各種政策や生産動向、研究開発投資、消費量、EUの物質フロー)や原材料の使用にかかわる環境影響(例:大気汚染、水質汚染、採掘廃棄物)などのデータ・情報が閲覧できます。

これらのデータや欧州レベルでの原材料の動向(フロー)評価をさらに改善していくことにより、今後さらに循環経済を促進していく上での機会や障壁を検証していくということかと思います。

④有機及び廃棄物ベースの肥料に対する認識を深め、循環経済におけるバイオ栄養素の役割を支援するため、肥料に関するEU規制の改正を提案する。

肥料に含まれる栄養素をリサイクルすることにより、鉱物由来の肥料の使用を削減し、リン鉱石輸入への依存を減らすなどです。

⑤(灌漑や地下水の寛容のための)水の再使用のための明確なガイダンスや、最小限の要件を示す法令提案を含め、水の再使用の促進に取り組む。

水不足がいくつかのEU地域で深刻であり、農業における水の再使用は、栄養素リサイクルにも貢献する。とされています。

⑥2次資源の大きな市場を作るためには、インフラや製品中のリサイクル材の使用に関する十分な需要が必要。

本行動計画では、需要やサプライチェーンを形成するという意味で民間企業の役割が大変重要。複数の産業・経済アクターは、持続可能性と経済性という両面から一定レベルの製品中のリサイクル材の含有に関する公約を出しており、こういった取組が奨励されるべき。政府は、調達方針で需要喚起に貢献できるとしています。

今後、製品中のリサイクル材含有量が規定される事もあり得るのでしょうか?

義務的な規定がなされるかどうかは、現時点では不明ですが、2016年の8月に発表されたパソコンやタブレット向けのエコラベルの認定基準については、耐久性、修理可能性、アップグレード可能性、リサイクル可能性などに加えて、すでに、プラスチックのリサイクル材の含有率に関する記述があるようですね。

【参照資料】
establishing the ecological criteria for the award of the EU Ecolabel for personal, notebook and tablet computers

また、本行動計画にも示されているエコデザイン指令の改正に関連して、2016年11月末にエコデザインの作業プランが採択されました。循環経済に関連する点としては、耐久性、修理可能性、アップグレード可能性、分解のためのデザイン、情報(例:プラスチック部品の場所等)、再使用・リサイクルの容易性、などに関する要求事項の検討を進めていくようです。

【参照資料】
欧州委員会 /(Ecodesign Working Plan 2016-2019)

2015年12月には、すでにエコデザイン指令の要件に関する物質(資源)効率基準の検討が欧州標準化委員会に要請されています。
この流れを受けて、CEN(欧州標準化委員会)及びCENELEC(欧州電気標準化委員会)において、エネルギー関連製品の物質効率について、製品寿命の延長、使用済み製品の再使用・リサイクル可能性、製品中の再使用部品やリサイクル材の使用に関する基準の検討が開始されているようです。

【参照資料】
CEN(欧州標準化委員会)及びCENELEC(欧州電気標準化委員会):WORK PROGRAMME 2016

再資源化という項目ですが、プラスチックや金属の資源循環だけでなく、肥料や水資源も含まれているとは、対象が広いですね。この中で、一番のポイントを教えてください。

製造業の方に注意が必要と思われることは、②の製品中に含まれる化学物質に対する情報です。リサイクルを進めるにあたって健康や環境への悪影響が懸念される物質が入っているとリサイクルしにくいですし、欧州は製品中の懸念化学物質の影響や予防原則などにも非常に関心が高いので、今後リサイクルを促進していくにあたり、EUの関心が高いと言われています。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
資源を循環させるために、マテリアルリサイクルを促進する必要がある。そのために、リサイクル材に関する基準を作ったり、材料に含まれる化学物質に関するデータベース構築を検討するなど、必要なツールの整備と、経済的に回るような仕組みを検討しながら、リサイクル材の出口を確保する。と、資源循環という面だけでなく、循環経済という側面も含めて包括的に進めていこうとしているのが、印象的でした。
次回は、【5】重点個別分野 についてお伺いします。


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