DOWAエコジャーナル > 環境便利帳 記事一覧 > 土壌汚染調査技術管理者試験問題の解説(1)

環境便利帳

土壌汚染調査技術管理者試験問題の解説(1)

■土壌汚染技調査術管理者とは?

土壌汚染対策法(以下、土対法または法と呼びます)に基づく指定調査機関は、土壌汚染状況調査等の技術上の管理をつかさどる者として技術管理者を選任し、監督させる義務があります。
一方、指定調査機関の間で技術的能力に差があり、信頼性の確保が充分でないと指摘がありました。そのため、平成22年度の土対法改正に伴い、指定調査機関が置く技術管理者は一定の知識、能力をもつことを証明するため、環境大臣が指定する資格(土壌汚染技調査術管理者)を取得しなければいけなくなりました。
なお、当該資格を取得することができない指定調査期間は土対法に基づく調査を実施することができなくなるため、土壌汚染技術管理者は、調査実施業者にとって重要な資格といえます。

【関連リンク】

環境省ホームページ: 平成23年度土壌汚染調査技術管理者試験の結果について

■平成23年度土壌汚染調査技術管理者試験の解答及び解説

平成23年12月に第二回土壌汚染調査技術管理者試験が行われました。
今回は試験の中から、皆様のお役に立つと思われる3問について解説します。技術管理者を目指す方、調査実施会社の方々は勿論のこと、土壌汚染に困っている方々にとっても有効な情報となることと思います。

【関連リンク】

技術管理者試験問題

【問題1】

法の特定有害物質を含む地下水が到達し得る距離に関する次の記述のうち、もっとも適当なものはどれか。

  1. 地下水中の汚染物質の濃度は、移動距離や時間とともに減少するので、到達し得る「一定の距離が存在する。減少する原因のほとんどは、帯水層中の希釈・拡散による。
  2. 特定有害物質のうち、一般的に到達し得る距離がもっとも大きいものは、第三種特定有害物質である。
  3. 第二種特定有害物質を対象とした到達し得る「一定の範囲」の一般値は、六価クロムではおおむね300m、砒素・ほう素・ふっ素ではおおむね250m、全シアン・鉛・総水銀ではおおむね80mである。
  4. 汚染が到達する可能性が高い範囲は、原則として不圧地下水の主流動方向の左右それぞれ60度の範囲とする。
  5. 不圧帯水層における地下水汚染では、水理基盤となる山地等及び一定の条件を満たした河川等を超える汚染地下水の移動は生じないことが一般的である。

【解答】

5

【解説】

特定有害物質を含む地下水が到達し得る距離(以下、「一定の範囲」)は、場所ごとの地下水流速や流向等の諸条件により設定することとされています。ただし、「一定の範囲」の設定が困難な場合は、一般的な指標を参考とします。(以下図表参照)

項目 指標
「一定の範囲」の
一般値
第一種特定有害物質 おおむね1000m
六価クロム おおむね500m
砒素・ほう素・ふっ素 おおむね250m
その他 おおむね80m
汚染が到達する
可能性が高い範囲
地下水主流動方向の左右それぞれ90度
(主流動方向に大きな変化が無い場合は左右それぞれ60度)
水理基盤となる山地等、一定条件を満たした河川等は超えない

(土壌汚染対策法に基づく調査等に関するガイドライン Appendix-1 特定有害物質を含む地下水が到達し得る「一定の範囲」の考え方)

表図の情報を理解すれば、正解が選択肢「5」であると分かります。
なお、選択肢「1」の場合は、濃度減少の原因として、
①土粒子への吸着、②気相への揮発、③希釈・拡散、④化学分解、⑤微生物分解等が挙げられるため不適当と判断されます。

【補足】

「一定の範囲」は、土地活用の計画に便利な情報

法に基づく調査の結果、土壌の基準不適合により健康被害のおそれがある場合は、『要措置区域』と呼ばれる、汚染の対策措置を講じる必要がある区域に指定されます。一度、『要措置区域』に指定されると、措置が完了するまで建物の解体・新築等の土地の改変行為が禁止され、工事の計画が大幅に遅れてしまうといったデメリットがあります。
この『要措置区域』の指定の判断根拠の一つとして、「一定の範囲」内に地下水飲用の井戸が存在することが挙げられます。

従って、土地の改変行為を予定する場合は、「一定の範囲」の指標、対象地の周辺状況を把握していることで、予め、『要措置区域』に指定されるか否か、推測することができるといえます。事前に、対策措置の必要性を把握していれば、今後の土地の活用を進める上でのリスク対策にも繋がるはずです。

▲このページの先頭へ

【問題2】

法における自然由来の土壌汚染に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 我が国における実態によれば、自然由来の土壌溶出量基準不適合の可能性が高い物質は、砒素、セレン、ふっ素、ほう素の4種類の重金属等である。
  2. 土壌溶出量基準不適合を自然由来と判断する場合には、特定有害物質の種類等、特定有害物質の含有量の範囲等及び特定有害物質の分布特性の3つの観点からも一定の条件を満たす必要がある。
  3. 土壌含有量基準不適合を自然由来と判断する場合に、酸分解等の全量分析の測定値と、周辺の人為的な影響を受けていない土地のバックグラウンド濃度が同じレベルであることを確認することが有効である。
  4. 六価クロムは人為的な由来が多いとはいえ、蛇紋岩帯が分布している地域で自然由来の土壌汚染も報告されている。
  5. 化合物形態を確認することも、自然由来の土壌汚染の判断の一助になる。しかし、一般には低濃度であるため、化合物形態の同定は難しい。

【解答】

1

【解説】

土壌汚染は、必ずしも人為的要因によるものとは限りません。自然界には元々、重金属等の様々な元素が存在し、地域や地質的特徴によって存在する元素もさまざまです。土壌汚染対策法で定められる特定有害物質のうち、シアンを除く第二種特定有害物質(重金属類)は自然界に広くに存在しており、一定の環境下においては、これら有害物質が基準を超過するケースがあります。この場合、土対法では自然由来の土壌汚染と呼ばれています。

平成14年に環境省が47都道府県を対象に実施したアンケートの結果、約2,500件の汚染事例の中で自然的原因に由来する土壌汚染が約400件確認されています。また、特に自然的原因により基準を超過しやすい物質としては、砒素299件、ふっ素72件が挙げられています(重複有り)。

また、社団法人土壌環境センターが実施したアンケート結果によると、土壌溶出量基準不適合の自然由来の汚染と判断された事例数は、砒素31件が最も多く、次いで鉛18件、ふっ素14件、水銀8件となり、これら物質による自然由来汚染が一般的に多いと判断されています。

以上の結果から、自然的原因により基準を超過する物質はセレンではなく、鉛ということになり、正解は選択肢「1」ということが分かります。

【補足】

土地の改変の際は、外から運んできた土壌の汚染にも留意

土地の造成時の埋立材に起因した土壌汚染は、いわゆる造成由来の汚染と呼ばれており、自然由来と同様に、一定の範囲に存在します。これは、元々、地質的に自然由来の汚染が存在している山地の土砂や有害物質を取り扱う工場跡地で発生した残土を運び出し、埋土や盛土をすることで発生する汚染といえます。

従って、建設工事等で外部の土砂を用いる際は、事前に当該場所の地域性や地質的特徴を把握し、場合によっては有害物質の濃度を分析することが必要です。

▲このページの先頭へ

【問題7】

法における地歴調査の目的や確認事項に関する次の記述のうち、もっとも不適当なものはどれか。

  1. 調査実施者は地歴調査を実施して把握した情報から、調査対象地の土壌汚染状態が土壌溶出量基準または土壌含有量基準に適合しないおそれがあると認められた特定有害物質の種類を、土壌その他の試料の採取及び測定の対象とする。
  2. 使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場の調査は、周辺の土地に係る情報及び土壌等の汚染の概況を把握する必要はなく、土地利用の履歴及び調査の対象となる特定有害物質の使用等の状況を把握すれば足りる。
  3. 地歴調査で把握した情報は、土壌溶出量基準または土壌含有量基準に適合していないおそれがあると認められる特定有害物質の種類ごとに、調査対象地を土壌汚染のおそれの区分により分類する上で必要不可欠なものとなる。
  4. 聴取調査では、把握したい情報の内容を相手方に説明・理解してもらう必要があるため、事前にその主旨を説明した上で、資料調査で把握した情報の確認をする。また資料調査で確認できなかった情報を把握する目的でも調査を行う。
  5. 現地調査では、調査対象地内の建物・施設配置や不自然な盛土の存在、周辺の土地と地表の高さの違いが認められる場合、土地所有者等からその理由や地表の高さの変更履歴の有無を確認する。

【解答】

2

【解説】

問題2と同様、自然由来に関する情報を知っていれば簡単に解答を導き出せます。土対法では、自然由来の汚染のおそれがある場合にも土壌調査の実施義務が発生し、基準値超過が確認された場合は自然由来汚染の区域と指定されることとなりました。

自然由来の汚染のおそれの判断は、地歴調査の段階で、対象地の周辺の地質状況、同質の広がりを持った地層中で土壌汚染が確認されている等により判断されます。

従って、これらを判断するためにも、調査対象地のみでなく、周辺の土地にも注意して地歴調査を実施する必要があります。なお、工業用地等の一斉に造成された土地の一部で調査を実施する場合も同様のことがいえます。

【補足】

周辺の土地利用状況は、土地売買時にも留意

隣接地に有害物質を使用する施設が立地していた場合には、対象地への影響が懸念されます。このため、土地売買時の際に地歴調査を実施する際にも、対象地周辺の土地の状況にも注意する必要があります。

この記事は
ジオテクノス株式会社
四戸 が担当しました

※ご意見・ご感想・ご質問はこちらのリンク先からお送りください。
ご氏名やメールアドレスを公表する事はありません。

▲このページの先頭へ