中国引越し事情
海外こぼれ話
中国、蘇州での2年半の生活を終えて帰国しました。今回は、中国からの引っ越しの際の出来事から垣間見た、中国のリサイクル事情をお話しします。
中国のアパートは、日本の分譲マンションのような形態ですが、多くの場合は各部屋を個人オーナーが所有して貸し出しています。
日本と違って、スケルトン渡し(内装されていない状態)で販売され、オーナーが自分の好みで内装し、主要な家具を揃え、それを不動産会社を通じて賃貸借します。
赴任時には不動産会社を通じていくつかの物件を紹介されるのですが、様々な個性を持った部屋を見るのは、なかなか面白い体験でした。
退去する際には当然、その部屋をオーナーに返すことになります。退去の2週間ほど前に、不動産会社に「退去の日程も決まって、船便も搬出しましたから、なるべく早く、オーナーに見に来てもらうよう、連絡を取ってください」とお願いしたところ、「普通は退去の前日に確認します」との返事。そこで何か問題があったらどうするのでしょう、と思いましたが、結局我が家のオーナーは、退去の1週間ほど前に確認に来られました。
立ち会った妻の話によると、オーナーは最初、とても厳しい顔をしていて、液晶テレビの表面についた小さな傷などを気にしていました。
しかし、幾つかの家具について、妻が「これは日本から持ってきたが、置いていく。あなたにあげる」と(拙い中国語で)言ったところ、みるみるうちにオーナーの表情が変わり、テレビの傷のことなどすっかり忘れてしまったかのようで、その後に備え付けの家具の破損を申告しても、「没問題!(問題ない!)」で済んでしまいました。
置いていった家具は、日本製の大きな洋服箪笥、スチールラック、テーブルワゴンなどでしたが、オーナー曰く「日本のものは素晴らしい、丈夫だ、便利だ」とのこと。
確かに中国で売られている家具は、値段は日本の数分の一ですが、耐久性も数分の一といったところでしょうか。勉強机を移動しようとして持ち上げたら、天板と引き出しが分離してしまったといった具合です。家具は備え付けるものであって、引っ越しで持ち運ぶものではないから、その程度の耐久性でよい、ということなのかどうか・・・。
2年半前に日本から来たとき、色々なものを持ってきましたが、中には1度も着なかった服、1度も使わなかった鞄などもありました。
また、小さくなった子供の衣類などもたくさんあったので、それらをとりあえず、「不要物」と書いた段ボールに放り込んで行きました。
するとある日、その箱がほとんど空になっていました。
それは、部屋の掃除などをお願いしているお手伝いさんが来た日のことでした。
机の上には、「不要物をもらって帰ります。ありがとう。」という中国語のメモが。
それを見た妻は、「これで使えるものを捨てる罪悪感がなくなった。お手伝いさん、ありがとう!」と叫んで、まだ使えるけど、と迷っていたものを次々にその箱へ放り込み、お手伝いさんはその後も毎回、両手一杯に古着や食器などを持ち帰っていきました。
他の日本人から聞いた話ですが、子供の古着をゴミ置き場に捨てたのだけど、あるとき、明らかにそれと分かる服を、近所の子供が着ていたのだそうです。
アパートのゴミ置き場はとても小さいのですが、常に清掃係の人が捨てられたゴミを分別していて、いわゆる資源ゴミは徹底的に分別されます。
我が家で捨てた古着が、清掃係の人の雑巾になっていたこともあるそうです。我が家では、ゴミを日本並みに分別して出すようにしていたのですが、そうすると、清掃係の人は、わざわざ我が家の玄関の前までゴミを取りに来てくれるようになりました。きっと、資源ゴミを売却した収入は、その人の個人のお金になるのでしょう。
このように中国では、リユース、リサイクルが末端の経済ベースで盛んに行われている一方、耐久性の低い製品も多量に製造されてしまい、それがゴミになっているという側面もあります。
また、日本の廃家電製品などが中国に金属資源として輸出され、リサイクルに伴って環境汚染を引き起こしているという実態もあります。
今後、世界の資源・環境問題を考える上でも、中国と向き合うことは避けて通れません。
また、リユース、リサイクルというシステムは、国の経済状況によって大きく異なるものだということを、身をもって経験した中国生活でした。
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
西山 が担当しました