東日本大震災による災害廃棄物の処理について -その1
<この記事は過去の記事を再編集し、平成23年2月末現在の情報をまとめたものです>
平成23年3月に発生した東日本大震災は東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。地震による大規模な津波によって、岩手県では約476万t(1年間に排出される一般廃棄物の約11年分)、宮城県では約1,569万t(約19年分)の災害廃棄物が発生しました。災害廃棄物の処理は復旧復興の大前提であるため、環境省は広域処理を推進し、迅速な撤去・処理に取り組んでいます。
環境省は、専用ホームページ「東日本大震災への対応について」を開設し、災害廃棄物の処理についての情報公開を行っています。
1. 環境省の対応の基本方針
(1)東日本大震災における環境省の基本的対応方針(平成23年3月16日)
http://www.env.go.jp/jishin/kihon-hoshin110316.pdf
- 被災地での避難生活における、し尿や廃棄物の問題解決に向けて支援する。
- 被災地における生活の回復を図っていく上で、災害廃棄物や海岸漂着物等の迅速な処理は大前提の条件となる。このため、環境省がもつあらゆるネットワークと連携して、その処理を支援する。
- 被災地において安心して生活することができるように、大気、水質等のモニタリングをしっかりと行えるよう監視測定体制の整備を図る。
- 被災地においても人とペットとが良好な関係で暮らしていくことができるよう、被災ペットに対するケアが適切に行われるための必要な支援を行う。
- 上記支援を環境省として効率的かつ迅速に進めていくには、現地のニーズを的確に把握し、関係府省の地方機関や関係地方自治体と現場レベルで具体的な連携をとっていくことが不可欠である。早急に東北地方環境事務所に現地対策本部を設け、現地における環境省の体制を充実する。
(2)東日本大震災からの復興に向けた環境省の基本的対応方針
(平成23年5月18日)
http://www.env.go.jp/jishin/kihon-hoshin.pdf
ここで述べられているのは、大きく分けて「マイナスをゼロに戻す取り組み」(災害廃棄物の撤去)と「被災地における本格的な復興」(東北地方の特徴を活かした、災害に強く環境負荷の低い地域づくり)の2点です。
項目 | 概要 |
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2. 法令上の措置
(1)東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法
(平成23年8月18日公布・施行)
災害廃棄物の迅速かつ適切な処理を進めるために、国が被害を受けた市町村に側って災害廃棄物を処理するための特例を定め、あわせて、国が講ずべきその他の措置について定めた法律です。
- 概要
- http://www.env.go.jp/jishin/attach/law23_99a.pdf
- 条文
- http://www.env.go.jp/jishin/attach/law23_99b.pdf
- 施行通知
- http://www.env.go.jp/jishin/attach/no110818001.pdf
■国の責務
国は、災害廃棄物の処理が迅速かつ適切に行われるよう、
- 市町村及び都道府県に対し必要な支援を行う
- 災害廃棄物の処理に関する基本的な方針、工程表を定め、これに基づき必要な措置を講ずる
■災害廃棄物の処理に関する特例
環境大臣は、震災により甚大な被害を受けた市町村の長から要請があり、
- 当該市町村の災害廃棄物の処理の実施体制
- 災害廃棄物の処理に関する専門的な知識・技術の必要性
- 災害廃棄物の広域的な処理の重要性
を勘案して必要があると認められるときは、東日本大震災復興対策本部の総合調整の下、関係行政機関の長と連携協力して、当該市町村に代わって災害廃棄物の処理を行う。
■費用の負担等
- 環境大臣が災害廃棄物の処理を代行する場合、処理費用から市町村が自ら処理した場合に交付される補助金の額を除いた額を、市町村の負担とする
- 国は、市町村が災害廃棄物の処理に当たって負担する費用(国が処理を代行する場合の市町村負担分も含む)について
- 必要な財政上の措置を講ずる
- 1. のほか、市町村負担費用の軽減などの災害廃棄物の処理促進のために必要な措置を講ずる
■国が講ずべき措置
- 災害廃棄物に係る仮置場及び最終処分場の早急な確保のための広域的協力の要請等
- 再生利用の推進等
- 災害廃棄物処理に係る契約の内容に関する統一的指針の策定等
- アスベストによる健康被害の防止等
- 海に流出した災害廃棄物の処理指針の策定とその早期処理等
- 津波堆積物等の災害廃棄物に係る感染症・悪臭の発生の予防・防止等
(2)被災市町村が災害廃棄物処理を委託する場合における処理の再委託の特例措置
(平成23年7月8日 政令・省令改正)
従来は、市町村が一般廃棄物の処理を委託する場合、受託者が処理を再委託することは禁止されていました。しかし、平成26年3月31日までの間に限り、災害廃棄物の迅速な処理のために東日本大震災によって甚大な被害を受けた市町村が処理を委託する場合には、一定の再委託基準の下で受託者が処理を再委託することができる特例措置が設けられました。
- 概要
- http://www.env.go.jp/jishin/attach/go23_215a.pdf
- 政令条文
- http://www.env.go.jp/jishin/attach/go23_215b.pdf
- 省令条文
- http://www.env.go.jp/jishin/attach/mo23_15a.pdf
- 施行通知
- http://www.env.go.jp/jishin/attach/no110715001.pdf
(平成23年7月15日環境省)
この制度の対象となる市町村は、法律で「特定被災地方公共団体」として指定されている、岩手県、宮城県、福島県等の9県の148市町村です。
この制度の対象となる災害廃棄物は、例えば、以下のような一般廃棄物です。
- 地震や津波を直接的原因として発生した一般廃棄物 (地震や津波により倒壊した建物の残骸や津波により大破した自動車・船舶等)
- 東日本大震災を原因として間接的に発生した一般廃棄物 (原子力発電所の事故の影響により出荷停止となった後腐敗し廃棄物となった農産物等)
避難地の住民の日常生活に伴って生じたごみ、し尿などは対象外になっています。
この記事は
メルテック株式会社
大原 が担当しました