残留性有害汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約) その4
前回記事「残留性有害汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約) その3」では、ストックホルム条約において加盟国の主要な責務として定められた5項目の対策に関する国内実施計画の策定について解説しました。
今回は、2012年に公表された、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく国内実施計画(改訂版)」について解説します。
日本における国内実施計画は、第1回締約国会議(2005年5月開催)において採択されたガイダンスを参考にして、ストックホルム条約第5条に基づく、非意図的生成物質に関する行動計画も含めて作成されました。
その内容は、全4章(付属資料を含めると80ページ)で構成され、そのうち第3章において、国内実施計画の戦略及び行動計画要素について、以下のとおり体系的に取りまとめられています。
- 対象物質の製造・使用、輸出入の規制
- 非意図的生成物からの放出削減等の措置
- 在庫及び廃棄物からの放出削減・廃絶
- 環境監視、国際的取り組み、情報提供、研究開発の促進
このうち、1〜3について具体的に説明します。
1. 対象物質の製造・使用、輸出入の規制
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)・農薬取締法・薬事法・外国為替及び外国貿易法に基づいて禁止されています。
2. 非意図的生成物からの放出削減等の措置
ダイオキシン類はダイオキシン類対策特別措置法に基づき排出規制等の措置が行われています。また、ポリ塩化ビフェニル(PCB)やヘキサクロロベンゼン(HCB)については、発生源の種類や生成過程等がおおむねダイオキシン類と類似していることから、ダイオキシン類について講じられている対策によりPCBやHCBの排出も削減されているものと考えられています。なお、ダイオキシン類およびPCBについては、「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律」により、事業者が排出・移動量を届け出る制度(PRTR制度)の対象となっています。
3. 在庫及び廃棄物からの放出削減・廃絶
農薬に関しては、全国に埋設されていた総数量約4,400トンのうち、全国174ヶ所、総数量約4,000トンについて2011年2月までに廃棄物処理法等に基づいて無害化処理されました。
また、PCBについては、廃棄物処理法・ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)等に基づいて適正な処理が進められています。これら以外のPOPs廃棄物の排出実態の把握や処理基準の策定を進めるため、ペルフルオロオクタンスルホンサン(PFOS)又はその塩を含む廃棄物については、「PFOS含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」が策定され、適正処理が進んでいます。
図:国内実施計画の体系
以上のような国内実施計画に基づいた取り組みの結果、例えば、ダイオキシンの排出量は2003年には1997年比で95%削減され、削減計画で定めた目標は既に達成されました。
その一方で、PCB廃棄物の処理については、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)において、当初予定していた2016年3月末までの事業完了が困難な状況となったため、2014年6月にポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画が改訂され、最長2027年3月末まで事業期間が延長されました。
2015年に締約国会議(COP)が行われますが、締約国会議(COP)にて、対象物質が新規に追加された場合にはそれに合わせて、国内実施計画が改定されると共に、現行の国内実施計画についての点検結果が公表されることとなります。
【参考資料】
環境省ホームページ
残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく国内実施計画 改訂版(平成24年8月改定)
この記事は
エコシステムジャパン株式会社 営業企画部
堀岡 が担当しました