「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理に関する特別措置法」について
(1)はじめに
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、絶縁性や不燃性などの特性を持っていたことから、トランス、コンデンサといった電気機器をはじめ幅広い用途に使用されていましたが、昭和43年にカネミ油症事件が発生し、その毒性が社会問題化したため、昭和47年通商産業省重工業局長によるPCBを使用するトランス、コンデンサ等閉鎖系機器のメーカーに対する生産中止要請がなされ、昭和48年には「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の制定により、PCBの製造・輸入が事実上禁止されました。
世界的な規制の取り組みに関しては、残留性有害汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)が平成13年に採択され、日本は平成14年に締結しています。平成16年に発効に必要な50カ国目が締結したことを受け、平成16年に発効しました。
この条約ではPCBに関し、平成37年までの使用の全廃、平成40年までの適正な処分を求めています。
既に製造されたPCBの処理に向けて、民間によるPCB処理施設設置の動きがありましたが、施設の設置に関し住民の理解が得られなかったことなどから、ほぼ30年の長期にわたりほとんど処理が行われず、結果として保管が続きました。
保管の長期化により、紛失や漏洩による環境汚染の進行が懸念されたことから、それらの確実かつ適正な処理を推進するため、平成13年7月15日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法※1」(以下「PCB特措法」)が施行されました。
※1 環境省ホームページ
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理に関する特別措置法について
(2)PCB特措法の概要
PCB特措法は、PCB廃棄物が長期にわたり処分されていない状況にあるため、その処理のために必要な体制を整備することにより、確実かつ適正な処理を推進することを目的としています。
PCB廃棄物を保管している事業者は、都道府県に対し、その保管量等を届出しなければなりません。また、法施行日から15年以内(平成28年7月15日まで)に処分することが義務付けられていましたが、これが平成39年3月31日までに改められました。
法規と条例:PCB処理期限の延期について
保管事業者から届出されたデータを基に、国はPCB廃棄物処理基本計画を、都道府県はPCB廃棄物処理計画を策定します。また、PCB製造者は国及び地方公共団体が実施する施策に協力しなければなりません。
このように、PCB特措法では、PCB廃棄物の処理を推進するためにそれぞれの義務と役割が規定されています。
(3)PCBを使用する代表的な電子機器
PCBは科学的に安定しているため、トランス・コンデンサ、安定器などの絶縁油等に使用されました。
変圧器、蛍光灯の安定器、家庭用コンデンサ等は身近なところでも使用されています。
環境省パンフレット「PCB廃棄物の適正な処理に向けて※2」より引用
※2 引用元
環境省ホームページ
ポリ塩化ビニフェル(PCB)廃棄物の適正な処理に向けて
(参考)PCBの使用制限と規制に関して
PCBによる問題は、北九州市を中心に西日本に昭和43年(1968年)に発生したカネミ油症事件があります。この事件は食用油の製造過程において熱媒体として使用された塩化ビフェニルが腐蝕したパイプの孔からもれて油に混入し、この油を食用に供した人達に急性毒性による被害を与えたものです。
その後はカネミ油症のような健康被害は発生していませんが、東京湾、瀬戸内海、琵琶湖等の魚介、土壌、鳥、人の母乳等から検出され環境汚染物質として問題になったため、汚染の実態の把握や、開放系製品のためのPCBの使用を中止し、閉鎖系の製品についてもPCBを回収しえないものについてはPCBの使用を中止するよう行政指導が行われました。
1971年
- 1971年末までにPCBを使用する感熱紙、塗料等の開放系製品の生産が中止された。また、製品在庫は回収が指導された
1972
- 環境庁をはじめ、経済企画庁、科学技術庁、厚生省、農林省、通産省、運輸省、建設省、労働省の関係局長からなる、“PCB汚染対策推進会議”が設置された
- 国内でPCBを製造していた2社がPCBの製造と販売を停止
- PCBを使用するコンデンサ等閉鎖系製品の生産中止を指導(回収に万全を期することができるもの以外)。使用する場合には回収方法を確立し万全の措置を講ずるようユーザーに指導した。また、既に使用されているものについては、その管理を強化し、さらに廃棄の際のPCB回収処理体制の確立等万全の措置を講ずるよう指導した
- 水質および底質のPCB汚染実態調査を昭和47年5月から12月にかけて実施
1973年
- 化審法が制定された。PCBは特定化学物質に指定され、製造・輸入が原則禁止された
1976年
- 廃棄物処理法改正により、埋立基準に係る判定基準にPCBの基準値が設定された
2001年
- PCB特別措置法が制定され、施行
2002年
- ストックホルム条約締結