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持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループ(JCLP) その3
~井の中の蛙~

名称 日本気候リーダーズ・パートナーシップ
(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))

設立 2009年7月

持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループをご存知ですか?
脱炭素社会の実現に向け、個別企業の枠を超えた活動に取り組んでいるという「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))」の事務局である松尾 雄介様に、お話を伺いました。

写真:来日中のチャールズ皇太子との対話を実施しました(2019.10.23)

【その3】井の中の蛙

リスクとチャンス

IPCCの報告書など、「気候変動に関するリスク」という話が多くなってくる中で、COPでは、気候変動をどうチャンスに変えるかみたいな話が多いのですか?それとも、リスクの話が多いのですか?

気候変動のリスクと、気候変動をチャンスに変えようという話は、ある意味コインの裏表なんですね。要は、「気候変動がほんとに危ないです、脱炭素化しましょう」という認識が前提なんです。
脱炭素化しないといけない。残された時間はあと20年とか30年、となると、その時間軸の中で、言ってみれば社会のインフラを1回つくり替えるみたいな話になるわけですよね。そういう話をCOPでは各企業のトップがしていました。

金融のトップの人たちが、年に何兆円ぐらい投資が必要でとか、ここの分野のリスクがこれから上がってくるとか、リスクとチャンスが裏表の事として話されていました。ただ、COP21が開催された当時は、海外では気候変動が社会全体にとって重大な脅威で、対応を誤ればビジネスも傷つくかもしれないという問題意識が芽生え始めていた時期でした。
なので、必ずしも自分の会社のリスクとかチャンスとかという狭い話ではなく、「政府は気候変動対応を適切に進めてほしい。産業界も後押しします」、という話も多かったです。

政府へのメッセージを発信する場でもあったと。

そうです。パリ協定がかなり野心的になった一つの要因として、企業だけじゃなくて、自治体などいろんな非政府組織の人達々がちゃんと政府に対してプッシュした、後押しした事が、よく挙げられます。

COPの衝撃

私、毎年JCLPのCOP視察報告書を読んでいます。ショックだったのは、COP21で日本が化石賞を受賞した事と、COP22で日本ブースに誰もいないという写真でした。その衝撃はいまだに覚えています。

日本ブースというか、記者会見場の話ですね。日本政府の記者会見場にほとんど人が来ないというもの。衝撃ですよね、あれは。私も衝撃でした。
私も鮮明に覚えてるのですが、当時、パリ協定が合意されましたというニュースが、日本でどんなふうに報じられたかと言うと、「日本の高効率石炭火力に貢献の余地あり、日本への期待が高まっている。」という報道ばっかりだったんですよ。

でも実際、COPの場では、日本の存在感は全然違います。私の感覚では、一部の環境や気候変動を本業としている人の中では、日本の評価は低い。もうちょっと外の人たちにすると、そもそも日本はあまり存在感がないんだろうと感じています。

環境先進国みたいなブランドが今もあるかっていうと、少なくともコアな人たちの中ではもうありません。例えば再エネとか、再エネとITの融合や、EVなどでも、際立って進んだソリューションを持っている訳でもないように思えます。そうなると、「日本はこれから成長する脱炭素マーケットとしての魅力もないし、昔みたいに何か際立ったイノベーティブな製品がある訳でもない」ということになるんだと思います。

あと、化石賞に絡めていえば、日本では石炭火力の問題が過小評価されている気がします。なぜ国際的に石炭が批判されているのかには、きちんとした理由があります。その理由が知られないまま、「なぜ高効率なのに悪いんだ」という、かみ合わない議論になっていると感じます。

非常に端的に言えば、2℃、1.5℃に気温上昇を抑えるためには、排出できる温室効果ガスの上限があることがわかっています。その上限を踏まえると、どう考えても、CCS(炭素吸収)なしの石炭火力は、それが高効率であったとしてもそろばんが合わない。また、一度作ると、数十年稼働してしまいます。さらには、電力は、石炭以外の代替案がいくつもある。

つまり、代替案があるにもかかわらず、もっともそろばんに合わないことをやって、2℃目標の実現性を著しく低下させるのが石炭火力です。だから批判されている。これは、日本はきちんと一度向き合う問題だと思います。そういった、“日本がどう認識されているか”というのが国内に伝わらないのはなぜでしょうか。

そういった、“日本がどう認識されているか”というのが国内に伝わらないのはなぜでしょうか

なぜでしょうかね。ただ、2017年の『NHKスペシャル』は、そういうトーンを日本に伝えた第一報だったんじゃないかなと思います。これですね。アーカイブスで視聴できます。

NHKスペシャル 2017年12月17日(日)
激変する世界ビジネス “脱炭素革命”の衝撃

当時人気の民放の日曜ドラマの最終回とぶつかって、視聴率はイマイチだったと聞きましたが、「NHKスペシャル」は企業の社長さんクラスがよく見るらしく、NHKスペシャルを見た社長さんが、どうなってるんだと部下の方に聞いて、それがきっかけで、温暖化のリサーチを始めたり、それこそJCLPに入会したりと、ゼロが1になった、すごく象徴的な出来事でしたね。

そして、2017年に河野外務大臣(当時)が着任され、歯に衣着せぬ発言が注目されましたね。再エネの国際会議で、「すごい対策が遅れた国の外務大臣です。そんな私が何を言うか、皆さん興味津々かもしれませんが」というような、自虐的な自己紹介をされていました。

外務省ホームページ
「日本の再生可能エネルギー外交 −気候変動とエネルギーの未来」河野外務大臣政策スピーチ(2018年1月)

あの頃からちょっとずつ、トーンが変わってきた気はします。『日経新聞』も数年前に、それこそ「環境後進国ニッポン」という特集記事も出してましたね。だからCOP21から丸2~3年ぐらいかかってますね。日本に届くまでに。

2017年の前後でも、NHKスペシャルで気候変動について取り上げていますので、合わせてお伝えしておきます。いずれも、アーカイブスで視聴できます。

NHKスペシャル 2016年9月4日(日)
MEGA CRISIS 巨大危機
~脅威と闘う者たち~  第1集加速する異常気象との闘い

NHKスペシャル 2019年6月30日(日)
誰があなたの命を守るのか “温暖化型豪雨”の衝撃


ここまでお読みいただきありがとうございます。
2020年3月1日(日)午後8時00分に放送された、NHK BS1スペシャル「再エネ100%をめざせ! ビジネス界が挑む気候危機」に、JCLPのメンバーが出演し、TCFDやRE100、なぜ日本はRE100が伸びないか等、再エネの必要性・問題点について言及していました。
次回は、二酸化炭素の排出量についてお伺いします。お楽しみに!


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