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水銀廃棄物ガイドライン解説 その5 「運搬・処理に関する改正」
~廃水銀等~

水銀廃棄物に関する廃棄物処理法令の改正では、処理に関する改正もありました。
中間処理の方法が新たに規定されたほか、収集・運搬、保管・処分に関し、廃棄物処理法で従来から求められている内容に加えて、水銀に特化した措置が求められることになりました。

今回は運搬・処理に関する改正のうち「廃水銀等」についてと、「水銀の大気排出基準が適用される焼却施設・回収施設と基準」についてまとめています。

【4】廃水銀等

(ア)収集・運搬
必ず運搬容器に収納して収集・運搬しなければなりません。
(運搬容器は、密閉でき、収納しやすく、損傷しにくい構造のものにしなければなりません。)
(イ)保管

運搬途中に、積換え保管を行う場合には

  • 容器に入れて密封するなど、飛散、流出、又は揮発防止のための措置をとらなければなりません。
  • 高温にさらされないための措置をとらなければなりません。
  • 腐食の防止のための措置をとらなければなりません。
  • 掲示板の保管する廃棄物の種類に廃水銀等が含まれる旨を記載しなければなりません。

出典:水銀廃棄物ガイドライン(環境省)

(ウ)中間処理
  1. 中間処理方法「硫化・固型化」

    廃水銀等の処理方法として、硫化・固型化が指定されました。これは、廃水銀を精製して純度を高めた上で硫黄と反応させることで硫化水銀を生成させ、さらに固形化設備を用いて固型化する処理方法です。

    金属水銀は、揮発して皮膚に付着したり、吸入したりすることにより、人への悪影響を与える可能性があります。また、環境中に排出された場合、一部が有害性の高いメチル水銀化されるという報告もあります。また、アセチレンやアンモニア等と反応して爆発性のある化合物を生成します。

    硫化水銀は、水銀が自然界において最もよくみられる化合物形態です。
    水に溶けず、揮発もしません。化学的に安定し、他の物質との反応性が低く、高濃度の酸にだけ溶けます。

    環境省による調査検討の結果、水銀を純度99.9%以上に精製した上で、黒色硫化水銀化により水銀を安定化して、さらに硫黄ポリマー化によって固型化すれば、溶出試験の結果が0.005mg/Lを下回り、管理型処分場の受け入れ判定基準を満たすことが確認されています。

    水銀を硫化水銀にすることができれば、廃水銀による環境汚染や人体への悪影響などのリスクは低減できますが、硫化水銀への転換が完全でなければ水銀の揮発や溶出が起こるおそれがあります。したがって、精製された水銀と硫黄とを均一に化学反応させることのできる設備で反応させなければなりません。

  2. 中間処理施設の環境対策

    事故時に反応設備などから水銀の流出を防止のための流出防止堤などを備えなければなりません。かつ、設備を設置する床面や地盤面は、水銀が浸透しない材料を用いるか、被覆されていなければなりません。

    反応設備は、外気と遮断されているか、又は、反応設備内を負圧に保つことができるものでなければなりません。
    排気口や排気筒から排出される水銀ガスに対して、水銀ガス処理設備を設けなければなりません。

(エ)最終処分

廃水銀等の処理物は、水面埋め立てができません。
廃水銀等の処理物が埋立基準を満たさない場合は、遮断型最終処分場に埋め立てなければなりません。
埋立基準を満たす場合は、追加的措置をとった管理型最終処分場に埋め立てることができます。

管理型処分場に埋め立てる際の追加的措置

  • 浸出液処理設備は、水銀に係る排出基準を満たすための必要な能力を有する設備でなければなりません。
  • 廃水銀処理物の比重が大きい(重い)ので、地盤のすべりや設備の沈下に注意しなければなりません。また、遮水工の損傷を防止するため、基礎地盤の強度を確保しなければなりません。
  • 他の廃棄物との境に、土壌などによる仕切りを設けなければなりません。
  • 雨水侵入防止のために、多重防護の考え方に基づき、雨水と接触しにくい場所に埋め立てなければなりません。また、不透水層や表面排水等により、十分な雨水侵入防止機能が長期間保たれるような構造にしなければなりません。

詳細は、水銀廃棄物ガイドラインをご確認ください。

出典:水銀廃棄物ガイドライン(環境省)

【5】水銀の大気排出基準が適用される焼却施設・回収施設と基準

水銀が大気へ排出されることを防止するため、大気汚染防止法の一部が平成27年に改正され、平成30年4月1日から施行されます。

改正大気汚染防止法で、水銀の大気排出規制の対象となる産業廃棄焼却施設は、以下の施設です。

  • 廃棄物焼却炉(火格子面積が2m2以上、または、焼却能力が200kg/時以上の施設)
    大気汚染防止法のばい煙発生施設の廃棄物焼却炉に該当するもの、一般廃棄物の焼却施設及び産業廃棄物の焼却施設等に該当するもの

    ※ただし、専ら自ら産業廃棄物の処分を行う廃油の焼却施設で、原油を原料とする精製工程から排出された廃油以外を取り扱う施設で水銀を扱わないことが現実的に担保されると考えられる施設は、規制対象外とされています。詳細は、水銀廃棄物ガイドライン、大気汚染防止法等をご確認ください。

  • 水銀含有汚泥などの焼却炉(施設規模による裾切りはありません)
    水銀回収が義務付けられている産業廃棄物や水銀含有再生資源から水銀を回収する施設

    ※水銀を確実に扱う、水銀含有汚泥などの焼却炉は、施設規模に関わらず大気規制の対象となっています。

それぞれの施設に、大気排出基準が定められます。

廃棄物焼却施設の大気排出基準
水俣条約の対象施設 大気汚染防止法の水銀排出施設 排出基準(μg/Nm3
新設 既設
廃棄物の焼却設備 廃棄物焼却炉 30 50
水銀含有汚泥等の焼却炉等 50 100

※酸素換算は、廃棄物焼却炉・水銀含有汚泥等焼却炉 12%

水銀排出者は、該当する施設の排ガスの水銀濃度を測定し、全ての結果を記録表や計量証明書で記録し、これを3年間保存しなければなりません。

【参考資料】

環境省ホームページ
水俣条約について
「水銀に関する水俣条約」について
循環型社会における回収水銀の長期安全管理に関する研究

国立水俣病総合研究センター ホームページ
水銀と健康


上田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました

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