秋田県 レアメタル等リサイクル資源特区への取り組み その2
秋田県産業労働部 資源エネルギー産業課
エコタウン班
田口 光弘(たぐち みつひろ)様
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資源エネルギー産業課エコタウン班は、秋田北部エコタウン計画の推進や、資源循環型産業創出・環境調和型産業推進等に関する業務を行っており、資源特区に対しては、環境調和型産業推進の一環として取り組んでいます。
今回のインタビューは、秋田県資源エネルギー産業課 田口 光弘(たぐち みつひろ)様に、秋田県が指定されているレアメタル等リサイクル資源特区について、お話を伺いました。
秋田県 レアメタル等リサイクル資源特区への取り組み その2
小型家電リサイクルに関しては、使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)が平成25年4月1日から施行されました。小型家電をリサイクルする、という事は、小型家電に貴重な金属が含まれている、という事なんですよね?
そうです。以下に一例を挙げますが、様々な用途で、レアメタルは使われています。
小型家電の中には、様々なレアメタルが含まれており、こうしたリサイクル可能な資源が「都市鉱山(アーバンマイン)」と呼ばれ、注目されています。
こんなにレアメタルが含まれているのに、最近までリサイクルされていなかったのはもったいないですね。秋田県で小型家電リサイクルを始めるに至った背景について教えてください。
つい最近まで、小型家電は住民の方が購入し、使用後は、その多くが一般廃棄物として埋め立てられたり、焼却処分され、資源循環されていませんでした。小型家電にレアメタルなどの金属資源は含まれているものの、それらの価格は不安定で、レアメタルの価格が高騰すればリサイクルが進みますが、レアメタルの価格が下落するとリサイクルは進まなくなります。資源価格に左右されずに定常的にリサイクルを行うためには、経済原則だけに頼らない新たな金属リサイクルシステムの構築が必要と考えました。
また、小型家電などの電化製品は、世界的にはE-Waste(電気電子機器廃棄物)と呼ばれ、有害性のある廃棄物として取扱いが求められています。こうした有害性への考慮も重要なポイントであると考えました。
そして、秋田県北部地域は、平成11年に承認を受けたエコタウン計画にもあるように、鉱山技術等を活かした資源リサイクルの実績があるために、取り組みをする事が可能でした。
1)背景
- 一般廃棄物の処理が多く、循環資源になりにくい。
- 経済原則ではない新たな金属リサイクルシステムの構築が必要。
- 世界的にはE-Westと呼ばれており、有害性の交流も重要。
- 秋田県北部地域は、鉱山技術を生かした資源リサイクルの実績があり施設もある。
2)課題
- リサイクル推進には既存制度との整合性を考慮する必要がある。
- リサイクルには、徹底した収集費用の低減が必要。
3)期待される効果
- 住民参加型リサイクルによる資源の有効利用の促進
- 金属資源循環及び安定確保による国内産業への寄与
- 廃棄物の減容化による最終処分場の延命化
- 適切な処理による環境汚染の防止
使用済みの小型家電は、一般廃棄物とのことでしたが、一般廃棄物について簡単に教えていただけないでしょうか。
例えば、同じ使用済みの小型家電でも、企業で使われたものは産業廃棄物に区分されますが、家庭で使われたものは、一般廃棄物に区分されます。
一般廃棄物は市町村がその収集や処理についての責務があると廃棄物処理法によって規定されており、市町村の責任のもとに処理が行われます。
小型家電は貴重な金属などが含まれているとのことでしたが、何故リサイクルが進まなかったのですか?
小型家電は有用な金属が含まれていますが、単体ではその量が微量で、資源価値を生むには相当量集める必要があります。当時は、量が少ないため処理会社へ売却できる程の価値はなく、逆に処理費を支払う場合が殆どです。
そういった場合、廃棄物処理法に則る必要がありますが、市町村が他社にリサイクルを(処理)を委託するためには、各市町村毎に策定している一般廃棄物処理基本計画を変更する必要があることや、処理施設のある自治体に対して、一般廃棄物処分に関する事前協議をしなければいけません。
また、リサイクル事業者においても、排出元・受入先全ての市町村から、一般廃棄物の収集運搬業に係る許可を受ける必要があります。
とても面倒なんですね
そうなんです。小型家電のリサイクルを推進するにあたり、こうした問題点が浮き彫りになってきていたので、そういった部分の規制を緩和することによって広域的に小型家電を集めることができるのではないかと考え、総合特区の申請をした、というのが特区申請の経緯です。
特区の実施目標に家電等金属系使用済製品の集約を掲げていますが、小型家電に限らず資源価値のある金属系使用済み製品を対象としています。
秋田県ではいつからこの小型家電リサイクルに取り組んでこられたのですか?
秋田県では、平成18年12月から、JOGMECの委託事業として、使用済みの小型家電の収集システムや経済性、県内における事業化等について検討するため、大館市で小型家電の回収試験を開始しました。大館市内のスーパーや公民館などに回収ボックスを設置して市民の方に小型家電を投入してもらう他、大館市が集めた粗大ごみ、不燃ごみから小型・中型家電のピックアップ回収を実施しました。
全国で先駆けた先駆けた取り組みでしたので、回収ボックスに、住民の方がどんなものを入れてくれるのかも手探りでしたので、最初は回収量や回収品目をカウントすることから始めました。
平成19年度には、経済産業省の委託事業として、秋田県北部地域6市町と男鹿市に収集エリアを拡大し、7市町へ取り組みを拡大しました。平成20年10月からは秋田県事業として取り組みを全県に拡大し、平成20年12月に環境省・経済産業省の回収モデル事業に採択され、取り組みを強化しました。平成24年には、環境省の小型電気電子機器リサイクルシステム構築社会実験として実施しています。
平成18年度(12月〜)
- 大館市で使用済み小型家電の収集試験を開始(JOGMEC、RtoS研究会)
- 大館市内のスーパー、公民館等に回収ボックスを設置して回収
- 大館市が集めた粗大・不燃ゴミからのピックアップを実施
平成19年度
- 秋田県北部地域、男鹿市に収集エリアを拡大(経済産業省、RtoS研究会)
- 県北部7市町へ取り組みを拡大
- 大館市が回収試験の要綱を策定(他市町から搬入する場合のルールづくり)
平成20年度〜24年度
- 秋田県事業として収集を継続し、平成20年10月から取組を全県域に拡大(秋田県、RtoS研究会)
- 平成20年12月より、国の回収モデル事業に採択され、回収を強化(環境省・経済産業省、秋田県資源技術開発機構)
- 平成2重要年度小型電気電子機器リサイクルシステム構築社会実験を実施(環境省、DOWAエコシステム)
小型家電リサイクル法施行の約7年前から小型家電のリサイクルに取り組んでこられたのですね。
そうですね。秋田県のこうした取り組みが、社会への問題提起ともなり、小型家電リサイクル法制定に向けた推進力の一つになったのではないかと考えています。
秋田県では、小型家電リサイクル法施行前からの取り組みにより、住民の方々のリサイクルに対する意識の醸成が図られ小型家電の量が確保されること、又、実証試験を通じた効率的な回収・処理方法などが確立されることにより、小型家電の資源循環が進めばと考えております。
最終的には、小型家電に限らず、金属系使用済製品全般についてリサイクルを推進し、特区の目標として掲げてある、県内リサイクル関連産業の振興、雇用創出及び県内経済の活性化に繋げていければと考えております。
秋田県の小型家電回収のシステムについて教えてください。
秋田県のモデル事業での回収からリサイクルまでの流れが以下のフロー図の通りです。
小型家電は回収ボックスや粗大ごみ・不燃ごみからのピックアップにより回収され、再資源化業者に運ばれます。
再資源化業者では、小型家電を分解・破砕・選別した後、資源となるものはリサイクルされ、リサイクルできないもの(残さ物)は焼却した後に最終処分場で適正に処理されます。
秋田県のモデル事業における小型家電の回収方法として、ボックス回収、ピックアップ回収、イベント回収を行っていました。なお、ボックス回収、ピックアップ回収は前述にあるフロー図のとおりですが、イベント回収では、ショッピングモール等、人の集まる場所において、事前周知のもと回収を行うとともに、アンケート調査や小型家電の分解体験などを行い、小型家電のリサイクルに関する普及啓発にも取り組んできました。
また、小型家電のリサイクルに関する普及啓発活動の一環として、県民の方々への広報活動にも力を入れ、平成24年にはテレビCMやラジオCMなども行っております。
小型家電の回収は順調ですか?
小型家電の回収を始めてから、回収量は年々増加し、平成18年の6tから平成24年には212tまで増加しました。しかし、平成25年に83tまで減少してしまっています。
平成25年4月1日に小型家電リサイクル法が施行されましたが、秋田県を回収エリアとする認定事業者※の指定が8月、秋田県内での回収が10月からと遅れたため、思うように回収が進みませんでした。
平成25年は、実証試験から小型家電リサイクル法への移行期間ということもありましたが、現在は殆どの市町村が参加し回収を行っております。
※)廃棄物処理法における収集運搬処理業の許可不要で小型家電を回収することができる事業者。秋田県に拠点を置く認定事業者は、株式会社エコリサイクル(大館市)の1事業者。他に秋田県を回収エリアとする認定事業者は4事業者いる。なお、小型家電の回収を始める前に、認定事業者は各市町村と小型家電回収に関する契約を結ばなければいけない。
新たな取り組みにもチャレンジしているとお伺いしました。
そうですね。秋田県では、今までのモデル事業における取り組みから、法制度による取り組みに移行するにあたり、更なる小型家電のリサイクルの推進を図るため、効率的な回収・収集運搬や、既存にとらわれない回収方法として、宅配便の活用、事業所への回収ボックスの設置に関する調査を実施しております。
秋田県は東京都の5.3倍の面積でありながら、人口は東京の7.8%です。回収した小型家電の輸送費をいかに安く抑えるのか、また、資源価値の高いものをたくさん集める事も、小型家電を回収するためには重要なファクターなのです。
一つ目の取り組みは、資源価値の高い使用済小型家電に絞って回収する、というものです。
秋田県で行ってきた実証試験では、回収する品目は絞らずに、回収ボックスに入るサイズのものであれば、回収の対象としてきましたが、運搬費を賄う事のできる資源価値の高いものに限定して回収する、という取り組みです。
県内8市町の公共施設やスーパー等に回収ボックスを設置し、携帯電話など資源価値の高い使用済小型家電に絞って回収を実施しました。
回収された品目では、携帯電話が最も多く、次いでデジタルカメラが多く回収されました。しかし、対象外品目の、アダプターやケーブル、リモコン、電卓、マウスなどが混入されていました。
回収品目の選定は住民への周知徹底が必要であり、混入物や対象外品目の低減のためには、より長期間の様々な媒体を利用した周知広報が必要で、今回の品目選定したうえでのボックス回収の住民への浸透には、なお時間がかかるものと思われます。
また、住民が利用しやすい場所に回収ボックスを設置することは、回収量の大小だけではなく、リサイクルの重要性を直感的に捉えることができ、普及啓発・環境教育に繋がるという結果も改めて確認しました。
市町村の負荷を減らしながら、リサイクルを成立させるための試みですね。8年も小型家電回収を行っていても、市民への普及・啓発は課題の一つという事も驚きました。
そうです。また、既存にとらわれない回収方法として、事業所における回収を実施しました。
県内12箇所の事業所に回収ボックスを設置し、従業員の家庭から排出される使用済小型家電を回収しました。さらに、回収した使用済小型家電の処理施設までの運搬は、既存にとらわれない運搬方法ということで宅配便を活用しました。
回収品目は、携帯電話が最も多く、次いでデジタルカメラが多く回収されました。他にメモリーやハードディスクといった付属品も目立ったのが特徴的でした。
事業所での回収における主なターゲットは会社員、つまり成人男性の割合が高いので、スーパーなどに設置しているボックス回収や、ショッピングセンター等でのイベント回収のメインターゲットである主婦層や家族連れとは異なった層に普及啓発できたと考えています。
また、市町村のボックス回収と、事業所での回収における品目は同一傾向にありましたので、回収量の多かった携帯電話やデジタルカメラは家庭内で退蔵される傾向が高く、周知を適切に行えば、退蔵品の排出に繋がるものと考えられます。
宅配便を利用した運搬というのも、課題の一つなのでしょうか。
宅配便は便利ですので、活用できたらいいと思うのですが。
宅配便による運搬に関しては、小型家電リサイクル法との整合性を検討する必要があります。
小型家電リサイクル法に基づいた小型家電の回収に宅配便を活用する際の課題として、以下が挙げられます。
- 小型家電リサイクル法では、運搬業者は、認定事業者の再資源化計画に位置付けられた者に限られています。
⇒住民から排出される使用済小型家電は一般廃棄物に該当するものであり、その回収や処理においては廃棄物処理法を遵守する必要があります。 - 宅配便の中に小型家電以外の廃棄物や異物・危険物等が混入していないことの確認と、その担保を取る措置を講ずる必要があります。
以上のように課題はあるものの、宅配便利用については、人口密度が少ない地域等、大量の小型家電を回収できない地域では有効な運搬手段となりうると考えています。
小型家電リサイクルの今後の展望について教えてください。
小型家電リサイクル法に対する取り組みは、各市町村毎に異なりますが、国などの支援を受けて行ってきた小型家電の回収が、法施行後も各市町村の自助努力により継続して行われています。使用済みの小型家電はリサイクルするものという考えが県民の方々に定着し、小型家電のリサイクルが更に推進して欲しいと考えています。
また、小型家電にはレアメタルなど貴重な金属が含まれていますが、他にも副産物としてプラスチックやガラスなど有用な資源が多く含まれています。
以前は、廃棄物として処分されていましたが、最近はリサイクル技術の高度化により、リサイクル製品などにも応用され始めていることから、副産物の有効活用も含め、秋田県における新たなリサイクル事業の可能性について探っていきたいと考えております。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回のインタビューを通して、秋田県産は長年の経験を活かして、より最適なリサイクルシステムの構築に取り組んでいらっしゃる事がよくわかりました。
今後とも、新たな取組や調査などを通じて、より効率的な回収システムの構築に取り組んでいかれるのだろうと思いました。