タイにおける土壌・地下水環境に関する工業省令が公布されました − その2
先月号(平成28年7月)のDOWAエコジャーナルでお知らせしたとおり、タイにおいて土壌・地下水汚染を管理する工業省令(以下、本省令)が2016年4月29日に公布され、特定の業種の工場に対して土壌・地下水環境のモニタリング義務が生じることになりました(海外事情-タイにおける土壌・地下水環境に関する工業省令が公布されました)。
本省令公布後、工業省より基準値、調査方法や報告書に関する通知の草案(以下、本通知草案)が発出されました。
7月号/タイにおける土壌・地下水環境に関する工業省令が公布されました − その1
【1】本通知草案の概要
基礎情報取りまとめ様式(別紙3)
1. 工場の基礎情報の収集
本省令の対象となる工場では、まず調査・モニタリング仕様の基礎となる情報を収集します。内容としては、使用している物質の名前、保管量および保管容器形状、有害性、および廃棄物の保管量を所定の報告様式に取りまとめます。
2. 対象物質および基準値
工業大臣が公表する予定の基準値については、本通知草案別紙に記載される予定です。この別紙に基準値が設定されていない使用物質については、対象工場が基準値を算出することとなります。これらの土壌および地下水の基準値は、工業局(Department of Industrial Works:以下DIW)が定めた土壌・地下水調査ハンドブックに記載されている方法を使って算出することになります。なお、土壌・地下水の基準値を算出する際のリスク判定については、発がん性物質に対する発がんリスクは1×10-6、非発がん性物質に対するハザード比は1.0と定められています。
3. 調査方法
土壌・地下水試料の採取地点については、工場平面図に図示することが求められます。試料採取方法は、今後官報に記載される予定の定められた手法、あるいは国際的に広く認められた手法に基づき実施することとなっています。
なお、本省令の施行前に観測井戸を設置していた場合、あるいは既に土壌・地下水調査を実施していた場合、観測井戸の設置場所や深度が本通知で求める要件を満たしていれば、新たに観測井戸を設置する必要はなく、既存の調査結果を使用する・既存の観測井戸を地下水調査に使用することもできるとしています。
また、地下水位が地表面下15m以深の場合、岩盤の存在により観測井戸の設置が困難な場合、工場で取り扱いのある化学物質が地下水汚染を引き起こす可能性が低い場合、地下水試料の採取ではなく、表層土壌を採取し分析することとされています。なお、表層土壌の分析結果が基準値を超過した場合には、地下水調査を実施する必要があります。
土壌・地下水の評価は、本通知別紙に記載された手法、米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency)が定めた手法、あるいは同等の方法で実施することとしています。
4. 報告書
土壌・地下水の調査結果は基準値との比較を行い、調査結果報告書をDIWに提出する必要があります。本通知別紙には報告書の雛形があり、対象物質ごとに取扱い場所、分析結果、基準値、分析日、分析方法などを表形式で取りまとめることになっています。
調査結果報告様式(別紙4)
土壌・地下水の分析結果が基準値を超過していた場合、汚染の管理・低減のための対策案を策定し、DIWに提出する必要があります。対策案報告の雛形についても、本通知の別紙として添付されており、土壌・地下水汚染の管理方法、土壌汚染の低減方法、地下水汚染の低減方法について、対象物質ごとに取扱い場所、対策方法、対策期間、対策前後の分析値、責任者などを表形式で取りまとめることになっています。
汚染対策案報告様式(別紙5)
【2】DOWAエコシステムグループでの対応
タイでの土壌・地下水汚染関連の業務については、DOWAエコシステムグループの環境・エネルギーコンサルティング会社のイー・アンド・イー ソリューションズ株式会社、多数の土壌・地下水汚染調査・対策の実績を持つジオテック事業部、タイ国の環境事業拠点であるWaste Management Siam社(WMS)において、お客様の日本およびタイいずれからのご相談について対応を行っております。
なかでもイー・アンド・イー ソリューションズは、1972年の創業以来、全世界を対象に環境コンサルティング・サービスを提供しておりますので、タイ国以外でのご相談にも対応いたします。
最後に、今回ご紹介しました本通知は草案であり、対象物質や基準値、調査方法の詳細などについてはまだ確定しておりません。今後も新たな情報が入手でき次第、DOWAエコシステムグループが当エコジャーナルでご紹介する予定です。
この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ
西岡 が担当しました