ニュージーランド オークランド市のごみ事情 その2
〜粗大ごみ処理事情〜
今回の記事ではニュージーランド(以下NZと表記します)最大の都市、オークランド市の粗大ごみ処理事情についてお伝えしていきます。NZは移住先として人気があり、コロナ直前の調査(2019年3月から2020年3月まで)では、一年で7万近くの人々が移住してきていました。人が集中するオークランド市では住宅不足やごみ処理についてが大きな社会問題となっています。
1. オークランド市のごみ処理システムはどうなっている?
オークランド市では家庭ごみは一週間に一度、専用の大きな容器に入れて個別回収しています。リサイクルごみは2週に一度回収日があります。
粗大ごみは年に一度、「inorganic bin」として、事前に市から割り当てられた日程の中で予約をして出すことができます。大型家電やベッドなどの家具なども出すことができますが、一つあたりの大きさは1立方メートル以下で、55kgを超えないように定められています。
この他、大型ごみや普段回収していないごみが家庭で出た際は、どうすればよいのでしょうか?
オークランドではRefuse and Recycle Transfer stationに直接持ち込んで粗大ごみを処理するシステムがあります。今回は、このセンターに行ってごみ処理の様子をのぞいてきました。
写真左)月曜日から日曜日まで、基本的に毎日開いています。事前予約は必要ありません。
写真右)種類や重さごとにかかる料金が表に書かれています。
ごみの種類 | 概要 | 単位 | 料金 (単位 ドル) |
---|---|---|---|
家庭用ごみ | 一袋(最大40ℓ/60ℓのもの2バッグまで) | 一袋あたり | 8.5 |
トランク利用 | 最低料金 | 30 | |
トレイラー利用 | 最低料金 | 65 | |
その他 | 1トンごと | 260 | |
業務用ごみ | 最低料金 | 85 | |
1トンごと | 190 | ||
樹木などのごみ(家庭用) | トラン利用100kgまで | 最低料金 | 25 |
トレイラー利用100kgまで | 最低料金 | 55 | |
その他 | 1トンごと | 200 | |
樹木などのごみ(業務用) | 最低料金 | 55 | |
1トンごと | 200 | ||
発泡スチロール | 家庭用 | 最低料金 | 55 |
1トンごと | 140 | ||
業務用 | 最低料金 | 35 | |
1トンごと | 1900 | ||
汚染されていない建築材料(コンクリやブロックなど) | 家庭用&業務用 | 最低料金 | 85 |
1トンごと | 185 | ||
汚染されている建築材料(コンクリやブロックなど) | 家庭用&業務用 | 最低料金 | 90 |
1トンごと | 225 | ||
消火器 | 全タイプ | 一つあたり | 15 |
ガスシリンダー | LPG/BBQ/車用 | 一つあたり | 9 |
車体 | 全体(ごみを含む) | 一つあたり | 75 |
全体(ごみなし) | 0 | ||
蛍光灯 | 一つあたり | 6 | |
タイヤ | 車、トラック、トラクター、載貨用 | ||
マットレス&ベッドベース | |||
段ボール | 20kgまで無料 | 1トンごと | 155 |
白物家電 | 一つあたり | 10 | |
バッテリー | 車用 | 一つあたり | 5 |
リサイクル可能な鉄 | 家庭用&事業用 | 0 |
2. 処理にかかる費用と値段
ここでは、到着時と出発時に乗っている人ごと車の重さを測ります。帰る際に再度車の重さを測ることで、おろしたごみの重さとを測るという仕組みになっています。ごみの種類や家庭内のごみか、事業用のごみかどうかで値段設定が異なっています。
また、受け付けているごみの中には樹木(Green Waste)から段ボール、消火器やガスシリンダー、車体やタイヤ、マットレスや車のバッテリーなど実に様々なものを取り扱っています。
ここではなんと、動物の死体も受け付けているそうです。何から何まで基本的に捨てられますが、コロナウィルスの影響か現在は医療廃棄物など一部のごみ処理は受け付けていないそうです。
受付でなんのごみを捨てにきたかを確認されるので、ごみの種類を伝えるとどこのゲートに行って捨てるべきかを指示されます。今回、私たちは使えなくなったベビーカーやスチール製の椅子などを持っていきました。8番を指示されたのでそのまま車で進みます。
写真左)敷地内には、種類別に行先が書かれた案内板がいたるところに設置されています。
写真中)ここが、出入りの際に通過するゲートです。乗ったまま支払いを終えることができます。
写真右)ゲート8の手前には、ゲート7があり、ここでは再生可能な建築資材やコンクリートなどを回収しています。
写真左)危険物の回収場所です。
写真右)トラクターが大きな木材を処分しているところです。
敷地内では、全体として厳重な管理をしている場所がある一方、むき出しで処理をしている場所もありごみの種類に応じた対応をしていました。例えば、人体に有害で環境汚染の影響がありうる「hazardous rubbish」のゾーンは、しっかりと金網で管理されており、簡単には持ち出せないようにしている一方、木材などのごみは吹きさらしの状態で処理しておりと、セクションごとに様々な対応をしていました。
写真左)段ボールはリサイクルも可能なため、屋根のある場所で処理をしています。
写真右)ごみに触れてけがをする危険性があるため、完全に足が覆われる靴を履かなくてはいけないと注意書きがあります。
8番ゲート内は写真撮影不可だったのですが、我が家の持って行ったベビーカーやいすの他には再生不可能な建築資材などを持ってきている工事現場の人もいました。ここでは、スチールや電化製品はリサイクル品として分別して捨てるようになっていましたが、そのほかのごみは屋根のある大きな広場のような場所にどんどん投げ入れます。それらのごみをトラクターで集め、ひとまとめにしていました。
このリサイクルセンタ―で集めたごみは、再生可能なものとそうでないものに分けられ、再生可能なものはリサイクルされ、そうでないものは最終的に埋め立て処理されています。
入口から出口までのルート (出典)GoogleMapに作者加筆
市による「イベント内でのごみ削減方法」のホームページです。
Zero Waste Events
市が「ごみの管理や最小化を目指すための方法」を紹介しているホームページです。
Waste Management and Minimisation Plan
Zero wasteに向けての取り組み
オークランド市では、ごみが環境にかける負荷を重く見ており、「Zero waste」のスローガンをいたるところで掲げています。
市が主催するイベントでは、参加者がごみをしっかり分別できるように「リサイクル・一般ごみ・食べ物のごみ(コンポストにできるごみ)」用のごみ箱を設置したりし、使い捨て容器を使わないようにするイベントもあるなど、市民への啓蒙に励んでいます。
多くの市民もエコバッグの使用や量り売りのお店の利用など、個々人ができる範囲で応えている様子が見られます。
しかし、今回実際にごみ処理施設に行ってみるとかなりの量のごみをここで処理している様子が見られました。人々の意識とは裏腹に、現実問題としてまだまだすべてのごみをリサイクルできてはいない状況です。
下の写真のように、「ごみゼロを2040年までに実現しよう」というスローガンに対し、どのように今後対処していくかは今後も改善の余地が残されていることを感じました。
この記事は
ニュージーランド在住
加藤海里 が担当しました