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第五次循環型社会形成推進基本計画が閣議決定されました

2024年8月2日、第五次循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~が閣議決定されました。

この循環型社会形成推進基本計画は、循環型社会形成推進基本法に基づき、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために定められるものです。概ね5年毎に見直しが行われています。現行計画である第四次の基本計画は平成30年に策定されたものとなります。

(参考)第五次循環型社会形成推進基本計画の閣議決定及び意見募集(パブリックコメント) の結果について(環境省)

■ポイント

今回閣議決定された計画のポイントは、サブタイトルにもあるように循環経済を国家戦略として位置付けている点です。

これは循環経済への移行が、気候変動、生物多様性の保全、環境汚染の防止等の社会的課題を解決するだけでなく、産業競争力の強化、経済安全保障、地方創生、質の高い暮らしの実現にもつながることから、重要な政策課題として捉えられているためです。そのため、政府全体の施策を取りまとめた国家戦略として本計画が位置づけられています。

なお、本計画は新たに政府に設置された「循環経済に関する関係閣僚会議」で議論され、本計画を踏まえて循環経済型社会システムへの転換のための取組を進めていくこととされています。

(参考)循環経済に関する関係閣僚会議(令和6年7月30日 首相官邸HP)

■構成

本計画の構成として、最初に現状や課題、解決のための道筋(1章)が示され、その中で上記の内容についても言及されています。

前半で循環型社会形成に向けての中長期的な方向性(2章)、目指すべき将来像(3章)が示された上で、それを達成するための各主体の連携と役割(4章)及び国の取組(5章)が続き、後半で循環型社会形成のための指標と数値目標(6章)が設定されています。最後に計画の効果的実施(7章)として省庁連携等にも触れられています。

循環型社会に関する全体像の指標(概要)

(出典:第五次循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~概要

■重点分野

重点分野として以下の5つが提示されており、それぞれの方向性や将来像、国の取組、指標と数値目標が上述の各章で詳しく述べられています。

基本的には循環経済への移行に関わる分野が重点分野となっていますが、その大前提となる生活環境の保全や公衆衛生の向上に資する廃棄物等の適正処理については引き続き対応が必要な分野となっています。

循環型社会に関する全体像の指標(概要)

(出典:第五次循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~概要

  1. 循環型社会形成に向けた循環経済への移行による持続可能な地域と社会づくり
  2. 資源循環のための事業者間連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環
  3. 多種多様な地域の循環システムの構築と地方創生の実現
  4. 資源循環・廃棄物管理基盤の強靭化と着実な適正処理・環境再生の実行
  5. 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進

■指標と数値目標

「循環型社会の全体像に関する指標」と「重点分野の達成状況を図るための指標」が指標数を絞って設定されました。

ここで、「循環型社会の全体像に関する指標」の概要は図の通りとなります。

循環型社会に関する全体像の指標(概要)

(出典:第五次循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~概要

図中の1~6までの「物質フロー指標」(どれだけの資源を採取、消費、廃棄しているかの全体像を把握する)と7~10の「取組指標」(物質フロー指標では測ることができない国・事業者・国民による取組の進展度合いを計測・評価する)が設定されています。

この中で新たに追加や拡充されたものは、「物質フロー指標」として脱炭素にも資するRenewableの取組を追加した「3.再生可能資源及び循環資源の投入割合」、「取組指標」として「9.循環経済の移行に関わる部門由来の温室効果ガス排出量」と「10.カーボンフットプリントを除いたエコロジカルフットプリント」の3つであり、気候変動や生物多様性との関連を評価するものです。

注)エコロジカルフットプリントは、第5次環境基本計画の点検の際に利用された中環審総合政策部会資料 指標候補データ集 p2,p5。考え方はWWF_ecofoot_190717(footprintnetwork.org)を参考。

循環型社会に関する全体像の指標(概要)

(出典:第五次循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~概要

特に、「循環型社会ビジネスの市場規模」については政府の成長戦略フォローアップ工程表(令和3年6月閣議決定)の、達成すべき成果目標(KPI)にもなっている重要な指標であり、目標として2030年度には80兆円以上(現状約50兆円)が設定されています。

循環型社会に関する全体像の指標(概要)

(出典:第五次循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~概要

■国の取組み

特に国の取組のポイントは図の通りです。
「地方創生・質の高い暮らし」と「産業競争力強化・経済安全保障」に資する様々な取組みが「カーボンニュートラル・ネイチャーポジティブ」の環境面にも貢献することが示されています。また、政府全体で一体的に取組むことで循環経済への移行を実現するとしています。

国の取組みのポイント

(出典:第五次循環型社会形成推進基本計画~循環経済を国家戦略に~概要

この図の中にある「再資源化事業等高度化法」(資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律)は、脱炭素化と再生資源の質と量の確保等の取組みを一体的に促進するために2024年5月29日に公布されました。

生活環境の保全に支障がないことを前提とした上で、廃棄物処理法の処理業や施設設置許可等に手続の特例を設けるなど、資源循環の促進に向けて大胆な措置が講じられています。今後、政省令や告示が策定される予定です。

(参考)「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」が閣議決定されました | 法規と条例 | DOWAエコジャーナル

■最後に

循環経済への移行は、気候変動、生物多様性の保全、環境汚染の防止等の社会的課題を解決するだけでなく、産業競争力の強化、経済安全保障、地方創生、質の高い暮らしの実現にも貢献するものです。

企業に対して持続可能なビジネスモデルの構築を促すものであるため、企業への影響は小さくないと考えますが、ビジネスチャンスと捉え、国や自治体、事業者がお互い連携して取組むことによって循環型社会を構築し、持続可能な社会の実現に貢献できればと思います。


この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
山野 が担当しました

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