生物多様性に関する法律等について
生物多様性は人類の生存を支え、人類に様々な恵みをもたらすものです。生物に国境はなく、日本だけで生物多様性を保全しても十分ではありません。世界全体でこの問題に取り組むことが重要です。
1992年の地球サミットで「生物多様性条約」が採択され、日本も1993年に加盟しました。現在、日本を含む192ヶ国とEC(欧州共同体)がこの条約に加盟し、世界の生物多様性を保全するための具体的な取組を行っています。
この条約には、先進国の資金により開発途上国の取組を支援する資金援助の仕組みと、先進国の技術を開発途上国に提供する技術協力の仕組みがあり、経済的・技術的な理由から生物多様性の保全と持続可能な利用のための取組が十分でない開発途上国に対する支援が行われることになっています。
また、生物多様性に関する情報交換や調査研究を各国が協力して行うことになっています。
比較的最近の国内の動きとしては、2008年に「生物多様性基本法」(法律第58号)が議員立法により成立し、生物の多様性の保全及び持続可能な利用についての基本原則が定められました。この法律では、国、地方公共団体、事業者、国民及び民間の団体の責務を明らかにするとともに、「生物多様性国家戦略」を策定することと定めています。
「生物多様性国家戦略」については、「生物多様性条約」でも策定することになっているため、1993年の条約締結後、1995年に初めての「生物多様性国家戦略」が策定されました。
その後、2002年に全面的に見直しを行った「新・生物多様性国家戦略」を、2007年には「第三次生物多様性国家戦略」が策定されてきました。
そして、今年3月には「生物多様性基本法」に基づく「生物多様性国家戦略2010」が閣議決定され、公表されました。
◆「生物多様性国家戦略2010」のポイント
「生物多様性国家戦略2010」は、「第三次生物多様性国家戦略」(平成19年)の構成や計画期間等を引き継ぎつつ、「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」に向けた取組等を視野に、内容が充実されています。そのポイントは大きく3つあります。
(1)中長期目標(2050年)と短期目標(2020年)の設定
今年1月に生物多様性条約事務局に提出した「ポスト2010年目標」の日本提案を踏まえ、初めて目標年を明示した総合的・段階的な目標を設定しています。
○中長期目標(2050年)
生物多様性の状態を現状以上に豊かなものとする
○短期目標(2020年)
生物多様性の損失を止めるために、2020年までに、
- 生物多様性の状況の分析・把握、保全活動の拡大、維持・回復
- 生物多様性を減少させない方法の構築、持続可能な利用
- 生物多様性の社会における主流化、新たな活動の実践
(2)COP10の日本開催を踏まえた国際的な取組の推進
COP11(2012年)までCOP議長国を務めることを踏まえ、地球規模で生物多様性の保全と持続可能な利用を実現するため、国際的なリーダーシップを発揮していこうとしています。
- COP10の成功
- SATOYAMAイニシアティブの推進
- 科学的な基盤の強化
- 科学と政策のインターフェース(接点)の強化
- 生物多様性における経済的視点の導入
- 途上国の支援
(3)COP10を契機とした国内施策の充実・強化
COP10を契機として、生物多様性の保全と持続可能な利用を、様々な社会経済活動に組み込み、多様な主体が行動する社会の実現に向けた国内施策を充実・強化しようとしています。
- 生物多様性の社会における「主流化」の促進
- 地域レベルの取組の促進・支援
- 絶滅のおそれのある野生動植物の保全施策の充実
- 海洋の保全・再生の強化
- 自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の統合的な取組の推進
「生物多様性国家戦略2010」は、以下の環境省ホームページからダウンロードできます。
環境省ホームページ
生物多様性国家戦略2010