「土壌汚染対策法」改正のどこがポイント-その2
【5】我が国における公害対策から土壌汚染対策法への流れ
我が国では、4大公害訴訟や、その他の様々な問題に対応するため、昭和42年に公害対策基本法が公布され、努力義務としての環境基準が制定されました。この後、典型的な7公害に関して、以下のような法律が施行されることになりました。なお、土壌に関してはイタイイタイ病等の事例における健康被害の防止が背景にあることから、農用地に関する規制が行われることになりました。
典型公害 | 規制する法律 | 公布日 | 施行日 |
---|---|---|---|
大気汚染 | 大気汚染防止法 | 昭和43年6月10日 | 昭和43年12月1日 |
水質汚濁 | 水質汚濁防止法 | 昭和45年12月25日 | 昭和46年6月24日 |
土壌汚染 | 農用地土壌汚染防止法 | 昭和45年12月25日 | 昭和46年6月5日 |
騒音 | 騒音規制法 | 昭和43年6月10日 | 昭和43年12月1日 |
振動 | 振動規制法 | 昭和51年6月10日 | 昭和51年12月1日 |
地盤沈下 | 工業用水法 | 昭和31年6月11日 | 昭和31年7月10日 |
悪臭 | 悪臭防止法 | 昭和46年6月1日 | 昭和47年5月31日 |
しかし、昭和60年前後から工場や試験研究機関の跡地における再開発工事で土壌中から有害物質が検出され、跡地利用者や周辺住民に不安を与える事例が確認されました。このため、昭和61年に市街地における土壌汚染に関する暫定指針が出されました。その後、平成3年に土壌環境基準が制定され、現在に至るまで27項目が規制の対象となっています。
年代 | 内容 |
---|---|
昭和45年 | 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律 |
昭和61年 | 市街地土壌汚染に係る暫定対策指針 |
平成3年 | 土壌環境基準の設定(10項目:公害対策基本法:現環境基本法) |
平成6年 | 土壌環境基準の改正(15項目の追加:環境基本法) |
平成6年 | 土壌汚染調査・対策の指針の策定 |
平成11年 | ダイオキシン類対策特別措置法 公布 |
平成13年 | 土壌環境基準改正(2項目の追加:環境基本法) |
平成14年 | 土壌汚染対策法 公布 |
上記のような背景を受け、土壌汚染対策法は、平成14年5月に公布され、平成15年2月に施行されました。本法では、土壌状況調査と、その対策措置が定められており、水質汚濁防止法や大気汚染防止法と同様に国民の健康を保護することを目的としています。
土壌汚染対策法における健康保護の概念は、以下の3つです。
- 土壌汚染の未然防止
- 土壌汚染の状況の把握
- 土壌汚染による健康被害の防止措置
なお、1については、既存の水質汚濁防止法や大気汚染防止法によって、制度化がなされているため、土壌汚染対策法では2および3についての枠組みが定められています。
【6】法改正のスケジュール
7月1日に実施された第11回土壌制度小委員会では、政省令等の素案が提案され、討論が行われました。また、7月下旬の第12回土壌制度小委員会では、討論の結果が整理され、了承が得られる予定となっています。その後、8月上旬から9月上旬にかけて、パブリックコメントが募集され、第13回土壌制度小委員会では、条文が報告され、10月上旬に政省令が公布され、施行通達が発出される予定になっています。(出展:中央環境審議会 土壌農薬部会土壌制度小委員会(第10回)議事次第・資料)
【7】改正点の留意点
改正点については、以下の大きく3点が変更されます。
- 調査契機の拡大
- 知事による区域および措置の指定
- 搬出される汚染土壌の適正管理
なお、形質変更時の調査や自主調査結果の報告により、今後の法の監視下となる汚染土壌が増加し、それらの取り扱いについては、搬出に際しては運搬の基準が確立されるほか、処理については許可を得た処理業者のみしかできないことになります。なお、弊社は現在、認定浄化施設第1号と認定施設第2号を取得しておりますが、本施設に関し、法施行までに許可取得を予定しております。