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そうだったのか!マイクロプラスチック問題とは?(1)

【1】海洋ごみとは?

「海洋ごみ」と聞くと、砂浜に散らかっているペットボトル、発泡スチロール、ビニール袋などのプラスチックごみ、流木や漁具(漁網や浮きなど)をイメージする方が多いと思います。(写真1)
しかし、このような砂浜のごみは「海洋ごみ」のごくごく一部であり、「海洋ごみ」の多くは海流や風の影響を受けながら海洋中を漂流しています。(当然、海底に沈むごみもあります)

【写真1】流れ着いた海洋ごみ
(環境省:漂流・漂着ごみに係る国内削減方策モデル調査総括検討会報告書

流木等は海を漂流する間に分解されますが、プラスチック製の容器や漁具は長持ちするように(分解されないように)作ってあるので、漂流中に分解されません。分解されないので自然に還らず、回収されない限りは海洋を漂流して、海洋中にプラスチックごみが蓄積されていってしまいます。

(1)海洋ごみの影響

海洋ごみの影響として真っ先に思いつくのは、砂浜の景観の悪化ではないでしょうか。砂浜に散乱しているごみは清掃をすれば、きれいになりますが、もっと深刻な問題として指摘されているのは、海洋生物に与える影響です。
例えば、魚がカラフルなプラスチック片を餌と間違えて食べてしまったり、漁網や釣り糸等に魚や海鳥が絡まってしまうといった問題です。


【写真2】プラスチック被害にあった生きもの

[左・中]Figure 7.1 Examples of entanglement by fishing debris: a) a entangled seal (John Vonderlin via Flickr); b) a sea turtle entangled in a ghost net, (Doug Helton, NOAA/NOS/ORR/ERD)
[右]Figure7.4 Plastic in the gut of laysan albatros chick, Green Island, Papahanaumokuakea Marine National Moument in the Northwestern Hawaiian Island. (Photographer Claire Fackler NOAA National Marine Sanctuaries)
(出典:UNEP MARINE PLASTIC DEBRIS AND MICROPLASTICS Global lessons and research to inspire action and guide policy change

確かに釣りで使うルアー(図参照)は、言うなれば、「魚に食べてもらうための派手なプラスチック」です。魚が飲み込むことは大いにありえます。


【写真3】ルアー

(2)調査状況

このような海洋ごみ(特にプラスチック)の調査は、UNESCOの石油類による海洋汚染調査の一環として日本では1976年から始まりました。定期的に気象庁が日本の周辺海域に浮遊しているプラスチックごみのモニタリング調査を行っており、海面浮遊汚染物質(プラスチック類)の観測結果は気象庁のホームページで紹介されております。

図1は海洋ごみ調査のために船を走らせて、目視により確認できた浮遊プラスチックの量から平均的な分布を示したものに、日本近海の海流の流れを合わせた図です。
これより海洋ごみは、日本や中国の近海に多く、黒潮などの海流に乗って移動していることが判ります。

【図1】航走100kmあたりの発見個数で示した浮遊プラスチック類の平均的な分布(1981~2010年の30年平均)より作者作成
【出典】気象庁ホームページ「海洋の健康診断表 総合診断表 第2版」

また世界の海洋ごみについては、世界経済フォーラム報告書で、プラスチック容器包装材を中心に少なくとも年間800万トンものプラスチックが海洋に流出しており、現在海洋には1億5000万トン以上のプラスチックが存在していると推計されています。
また本報告書によれば、海洋へのプラスチック流出量は増加傾向にあり、このまま何も対策が講じられない場合には2050年には海洋中のプラスチックの重量が魚の重量を上回るといった報告もされております。

【参考】世界経済フォーラム報告書
Ellen MacArthur Foundation, “The New Plastics Economy: Rethinking the future of plastics,” 2016.1.19, p.17.

このように、海洋のプラスチックごみ問題は日本だけでなく世界的に広く認識されています。加えて、海洋プラスチックごみによる環境問題の議論が進むにつれて、プラスチックごみの中でも微小なサイズであるマイクロプラスチックが注目されるようになり、2014年頃から国際的な会議の場で、海洋中のマイクロプラスチックの存在量や環境への影響が取り上げられるようになりました。

次号では、マイクロプラスチックについて解説します。


森田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
森田 が担当しました

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