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研究発表−2:嫌気性バイオレメディエーションにおける温度の影響

第19回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会(2013年)

嫌気性バイオは比較的安価であり、広く普及していますが、施工の確実性が低く、浄化に時間を要する例が多くあります。

本研究では、地下水温度に着目し、地下水温度がVOCs分解に与える影響を確認しました。嫌気性バイオでの最適温度が明らかになりましたので、地下水温度の最適化によってVOCs分解を加速させ、浄化期間の短縮を図りたいと思っています。

「嫌気性バイオレメディエーションにおける温度の影響」

ジオテクノス株式会社 ○横山圭一・三浦英俊・佐野絵里香・山野賢一

1. はじめに

揮発性有機化合物(以下、VOCs)の中でもテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン(以下、TCE)及びその分解副生成物であるシス-1,2-ジクロロエチレン(以下、cis-1,2-DCE)に汚染された土壌・地下水の浄化工法の一つとして嫌気性バイオレメディエーションがある。

嫌気性バイオレメディエーションの施工は、機械が小型で狭小域でも施工が可能であり、かつ低コストであるので、近年広く普及している。
しかし、施工の確実性や浄化に時間を要することが課題として揚げられている。その主要因は対象地の土質、水質、原生する微生物種等の地下環境にあると考えられる。

本研究では嫌気性バイオレメディエーションを行うにあたって、地下水温度に着目し、地下水温度が与える影響について検討した。

2. 試験方法 1)


1Lのガラス製ねじ口瓶に市販の砂を100cm3入れ、砂が入ったガラス製ねじ口瓶とコック2個付きのテフロン性のねじ口瓶の蓋を115℃で15分間滅菌処理した。

滅菌処理後、窒素雰囲気下グローブボックス内でねじ口瓶に地下水1L及び市販の嫌気性微生物活性剤0.5gとpH調整剤を入れ、コック付き蓋にて密栓した。

密栓後、試験系を振とうし、薬剤を溶解した。コックより嫌気性ガスを入れ、試験系内のガス置換を5分間行った後に、試験系内のTCE濃度が5mg/L程度になるようにTCEを添加した。

試験容器は5、15、20、25、30、35、40℃の条件にて保管した。

定期的に採水し、VOCs濃度、pH及び全有機炭素(以下、TOC)濃度の経時変化を測定した。採水量は試験系内のヘッドスペース容量の変化が少ないよう、最小限に留めた。採水は嫌気性ガスをコックから入れ、もう一方のコックから試験系内の水を押し出して行った。

試験期間中は試験系内のpH6~8、TOC濃度を50~200mg/Lの範囲になるようにコントロールした。

試験フロー図及び条件をそれぞれ、図1、表1に示す。

3. 試験結果及び考察

3.1 VOCs濃度変化について

各温度条件におけるTCE及びTCEからの脱塩素反応によって生成したcis-1,2-DCEの濃度経時変化を図2及び3に示す。また、TCE及びcis-1,2-DCEの分解開始時期について表2に示す。

TCEからcis-1,2-DCEへの脱塩素反応は30℃と35℃の条件で最も早く、試験開始から3日程度で進行している。25℃と40℃の条件では5日程度で進行し、以下、40℃、20℃、15℃の順で分解が進行した。5℃については120日の時点でもTCEの分解は確認できなかった。

TCEの分解後、cis-1,2-DCEの分解開始までは誘導期間があり、この期間は、30℃の条件で最も短く、試験開始より22日から28日程度であった。25℃の条件では36日〜40日程度であり、以下、25℃、20℃、40℃・15℃、35℃の順で誘導期間が長くなる傾向であった。

TCEとcis-1,2-DCEでは分解に影響する温度が異なっており、それぞれの分解に関与する菌種も異な異なる可能性がある。

3.2 TOCの消費について

各温度条件におけるcis-1,2-DCE分解終了時点まで、または120日経過までのTOC消費の経時変化を図4に示す。

15℃から30℃の条件ではcis-1,2-DCEの浄化までにほぼ同量のTOCが消費された。
35℃以上の条件ではcis-1,2-DCEの分解が終了するまでのTOC消費量は15℃~30℃までの条件と大きく異なっている。35℃以上の条件ではcis-1,2-DCEの分解が進行していない期間でもTOCが消費されており、VOCs分解に関与しない菌種にも大きくTOCが消費されているようである。
5℃ではTCEの分解反応は起こらなかったが、穏やかにTOCは消費されていた。

4. まとめ

嫌気性バイオレメディエーションにおいて温度が与える影響について試験検討を行い、以下の事項を確認した。

  • TCEからcis-1,2-DCEへの脱塩素反応は30℃と35℃で最も早かった。
  • cis-1,2-DCEの分解開始までの誘導期間については30℃で最も短く、一方、35℃以上では時間を要した。
  • 35℃以上と30℃以下ではcis-1,2-DCE分解開始後の濃度減少傾向が異なった。
  • 35℃以上ではVOCs分解に関与しない菌種にも大きくTOCが消費された。
  • 5℃ではTCEの分解は進行しなかった。

これらの結果より、以下の通り考察した。

  • TCEとcis-1,2-DCEの分解では、それぞれ分解に関与する菌種が異なり、各菌の活性が上がる最適温度がある。
  • 実際、地下水温度が低いサイトでは嫌気性バイオレメディエーションでの浄化に時間を要する例もあり、地下水温度が非常に低い場合には、嫌気性バイオレメディエーションによる浄化が適用できないことが想定される。
  • 地下水温度が季節変動するようなサイトでは、地下水温度が高い時期に施工するとより効果的である。

5. 参考文献

1)飯塚麻美子、松浦健一、横山圭一(2009):
嫌気性微生物活性化薬剤によるVOC分解の検討
第15回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集p493-496

この記事は
ジオテクノス株式会社
横山 が担当しました

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