指定基準値の設定の根拠は?
摂取しても悪影響がないと言える摂取量を閾値(いきち)と言います。この閾値(いきち)が設定されているか否かにより、基準値の考え方が違います。以下に2つの物質を事例として記載しました。
溶出量について
【閾値が設定してある場合】
- ジクロロメタン
ラットを用いた2年間の飲水投与試験から設定されています。この試験でラットの肝臓に腫瘍が発生・増加した結果をもとに、発がん性を考慮し不確実係数1,000とされました。閾値であるNOAEL6mg/kg/dayから、TDIは6mg/kg/day÷1,000=0.006mg/kg/dayとなります。これをヒトに置き換えると体重50kgのヒトが、1日の飲用水量2L/dayで、水を摂取することにより発がんする寄与率を10%と仮定すると、次のようになります。
0.006mg/kg/day×50kg÷2L/day×10%=0.015mg/L
これを元に基準値は0.02mg/Lと設定されました。
【閾値が設定されていない場合】
- テトラクロロエチレン
マウスを用いた肝発がん性についてのデータにより、線形マルチステージという計算方法に基づき、発がんリスク10-5相当レベルとして基準値は0.01mg/Lと設定されました。
含有量について
- 砒素
汚染土壌からの砒素の摂取量は、飲料水からの摂取量と同程度になるように計算されています。なお、この時の有効数字は2桁とし、切り捨てにより2桁目は0または5とするように、平成13年の土壌の含有量リスク評価検討会で定められました。
つまり、土壌の摂取量は子供の6年間は200 mg/day、大人は100 mg/day摂取し、70年間の摂取量が水道水基準と同レベルと計算されています。
水道水基準×水道摂取量=0.01 mg/L×2 L/day×365 day×70 year=511 mg
土壌含有量=511 mg÷(200 mg×365 day×6 year+100 mg×365 day×64 year)
=511 mg÷2.774 kg
=184 mg/kg ≒ 150 mg/kg
このように含有量基準値は150 mg/kgと設定されました。