フランス・ルーアンのごみ処理事情
1. フランス・ルーアンのごみの分別
ルーアンは、フランス北西部のノルマンディー地方に位置する小さな街です。伝統的な木組みの家が並ぶ美しい旧市街が知られており、パリから日帰りで行ける観光地としても人気です。
今回はそんなフランスの小さな地方都市ルーアンのごみ処理事情について紹介します。
ルーアンのごみの分別のルールは日本に比べると大雑把です。
私は2021年から2022年までルーアンの旧市街にアパートを借りて住んでいました。大家さんから伝えられたごみ出しのルールは、
- ごみは適当な袋に入れて共有のごみ捨て場に捨てること
- 綺麗な段ボールはごみ捨て場の隅にまとめておくか近所の回収ボックスに入れること
- ガラス瓶は近所の回収ボックスに入れること
の3点だけです。
プラスチック等の分別や曜日ごとの回収日程についても聞いてみたのですが、「そのうち回収されるから、曜日なんて気にしなくていいわ!ガラスと段ボール以外は分別しなくていいよ。大きいものでも共有のごみ捨て場に収まる程度なら、持って行ってくれるよ。」と大変おおらかな回答。そして住んでみたところ実際その通りで驚きました。
こちらがルーアンの街中の共有ごみ捨て場の写真です(写真1)。
一部の段ボールだけは分別されているものの、燃えるごみのごみ箱の横には古いキャットタワーやプラスチック製の棚など大型のごみも一緒に捨てられています。これも数日後には回収されて全てなくなっているので驚きです。ごみ箱ごとごみ収集車の搬入口にひっくり返して回収するため、ごみ袋に入っていないごみでも回収してくれます。ごみ箱横に置いてあるごみは、回収員の方が拾って搬入口に放り込んでいきます。
市街地にはガラス瓶と紙・段ボール類を回収するための資源ごみ回収ボックスが設置されています。これらの資源ごみ回収ボックスは市街地では数百メートルごとに設置されており、本体部分は地下に埋まっているため景観を損なうことなく大量の資源ごみを常時受け入れることができます(写真2)。
フランスでは、文化的にプラスチック容器に入った食品があまり好まれないため、ビールやワイン、パスタソース、調味料などはいまでもガラス瓶入りの製品が主流です。一般家庭でもガラスのごみが多くでるため、ガラス類をいつでも捨てられるように回収ボックスへの持ち込み方式になっています。
フランスならではのごみの分別もあります。それはクリスマスツリーです。
フランスでは11月末頃から各家庭でクリスマスツリーを飾りはじめ、新年を迎えたあとに片づけます。
本物のモミの木にガラスや木製の飾りをつけるクリスマスツリーが一般的であるため、新年には大量のクリスマスツリーが捨てられます。この捨てられたクリスマスツリーは特別に回収され堆肥に再利用されています。例えば2023年は1月9日と10日がクリスマスツリー専用の回収日になっており、2メートル以内の大きさであれば、玄関前にクリスマスツリーを出しておくと回収してくれます。2m以上の大型のツリーの場合は購入店で回収してもらうか、2m以内に切り分けて戸別回収をしてもらうことができます。
(参考)ルーアンの地方公共団体(Métropole Rouen Normandie)のホームページに公開されているごみの分別ルールブックより
さらに2023年から、これまで一般家庭にあまり普及していなかったごみの分別を推進するため、ごみの分別回収のルールが強化されました(写真4)。
(参考)ルーアンの地方公共団体(Métropole Rouen Normandie)のホームページに公開されているごみの分別ルールブックより
紙・プラスチック・金属類はそれぞれ分別して、自治体から支給される指定の黄色いごみ袋に入れ、黄色いマークの入った資源ごみ用のごみ箱に捨てます。また、野菜くずは透明のごみ袋にいれて、燃えるごみとは分けて出すことになりました。
あと数年で、日本のような細かいごみの分別ルールがルーアンの一般家庭にも浸透するかもしれません。
2. フランス・ルーアンのごみの回収
ごみの回収は、地区ごとに日程が決められています(写真5)。例えばルーアンの中心部では、地図中のピンクで示された通りでは燃えるごみは毎日回収されます。街中に設置された資源ごみ回収ボックスは不定期の回収です。
(参考)ルーアンの地方公共団体(Métropole Rouen Normandie)のホームページに公開されているごみの分別ルールブックより
ただしフランスの場合、こういったスケジュールはほぼ意味のないものだと思ったほうが良いです。毎日回収となっている場所でも、実際には2~3日に一度になってしまうことはよくあります。また、労働者のストライキも頻繁に起こる国であるため、ストライキによって数日間ごみの回収が止まるということもあります。
回収日が厳密に決まっているのはクリスマスツリーぐらいなので、その他のごみについては皆、「そのうち持って行ってくれるだろう」くらいののんびりとした気持ちでだしています。
3. フランスに根付くリユースの精神
最後に、リユースについて紹介します。長い歴史を持つ国であるフランスに住む人たちは、ものを長く大事に使うということにとてもこだわりを持っています。
私が住んでいたアパートは、ルーアンの旧市街にある18世紀に建てられた木組みの家で、観光客が毎日訪れる伝統的な建築群の中のひとつでした。こんなに古い建物をアパートに使うのかと驚きましたが、フランスではこのようなケースは珍しくありません。
建物だけでなく、家具や食器類なども良いものをできるだけ長く大事に使おうとします。それでも自分自身が使わなくなった家具類や食器類は、捨てるよりも誰か使ってくれる人に譲ろうと考えます。例えばルーアンでは、5月の週末に街のあちこちの通りでフリーマーケットが開催されます。誰でも参加することができ、家具や洋服、食器類など様々なものが売られています(写真6)。
簡単に買って簡単に捨ててしまうよりも、良いものを買って長く使いたい、もし自分がいらなくなっても別の人に使ってもらいたい、フランスではそう考える人が多いように感じました。
ルーアンのごみの分別・回収は日本に比べおおらかな部分がありますが、良いものを長く使おうという考え方や、プラスチック製の食品容器の使用を避ける生活習慣など、見習いたい部分は多くあります。また、ごみの回収ルールは今後も毎年進化していきそうです。
旅行などでフランスを訪れた際は、最新のごみ処理事情がどうなっているのか、ぜひ観察してみてください。
この記事は
フランス・アメリカ在住webライター
プロトン主水 が担当しました