アジアの土壌環境規制の動向について
ここ数年、アジア(特に中国)の経済は著しい発展を遂げており、農地や工場跡地などの土地開発が進んでいます。その一方、土壌汚染などの環境問題も社会問題化しており、環境への配慮・対策に関する法整備も同時に進み始めています。
1. アジアにおける土壌汚染関連法の現状
現在、アジアで土壌汚染に関する法令が制定されているのは日本、台湾および韓国だけですが、その他のアジア各国でも土壌環境に関する法整備は着実に進んでいます。
中国では現在、土壌汚染対策法に相当する法および調査や対策のガイドラインなどの草稿が作成されており、第十二次五カ年計画の最終年にあたる2015年を目途に規制が始まると言われています。
現在公表されている草稿には、土地利用の変更時に調査が義務づけられ、土地利用形態に基づく健康リスク評価によって対策目標を設定するといった内容が記載されています。
また、北京など一部地域では条例として先行して規制が始まっています。
タイは2013~2015年に法律制定が予定され、マレーシアも同様に今後数年以内に法律制定を予定しています。どちらも中国と同様、スクリーニング基準値はありますが、リスク評価によって対策の有無を判断する内容になっています。
その他、シンガポールにはガイドラインがあり、インドネシアには環境管理保護法や有害廃棄物による汚染サイトの修復手順などの関連法が存在しています(表)。
アジアでは、経済成長による環境問題の深刻化に伴い、環境への配慮意識が芽生えており、今後も、アジア圏での法整備はより一層進展していくと考えられます。
なお、ここで留意すべき点は、これから土壌環境の規制を導入する国々は、米国型のリスク評価の仕組みを導入しようとしていることであり、また、対象物質数は日本より多く、その分析方法はUSEPA(全含有量)が基本となっています。
日系企業が国内の環境基準をベースに各地域で環境管理を行うケースが散見されますが、規制導入後、既存データが充分に活用できなくなる可能性が考えられます。
法律制定済み | ||
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韓国 | 土壌環境保全法(1995年) | |
台湾 | 土壌及地下水汚染整治法(2000年) | |
日本 | 土壌汚染対策法(2003年) | |
数年以内に制定予定 | ||
中国 | 2015年目処に制定予定 | 現在は参考とすべき物質と基準値が示されているが強制力はない |
タイ | 2013~2015年に制定予定 | 2010年から土壌・地下水汚染管理法制定に向けた導入プログラムを実施中 |
マレーシア | 2013~2014年に制定予定 | ガイドラインは策定済み(汚染土地の管理に関するガイドライン、2009年) |
その他の事例 | ||
シンガポール | JTCガイドライン (2003年) | 工場の設立・閉鎖時に土壌調査を実施。 |
インドネシア | 環境管理保護法(2009、No.32)および有害廃棄物による汚染サイトの修復手順 (2009、No.33)(2009年) | 有害廃棄物に起因した汚染等について調査・対策が求められる |
2. 日系企業の環境管理の難しさについて
日系企業の海外子会社の環境管理は、①距離が遠く、②別組織となり(子会社、合弁関連会社)、③言語・文化が異なるため、困難であることが多くなります。
例えば、タイでは文字も言葉も異なる中、英語で現地スタッフとコミュニケーションをしなくてはなりません。駐在日本人も環境は兼務であることが多く、主眼は生産活動に行きがちです。現地スタッフの環境意識が低い場合は、本社スタッフの意図がなかなか伝わらなくなってしまう。これらは言わば、遠距離で行う異文化の伝言ゲームのようなものです。
3. 海外における土壌汚染のリスクについて
土壌汚染には、無過失責任、遡及責任、さらには連帯責任という3種類の資産管理に関わるリスク要素があります。そのため、進出・移転時の調査と操業中の環境リスク管理が重要です。
規制が無くても、遡及性があるため、土壌調査を実施しておくことをお勧めします。
これらに加え、海外の場合は『文化』や『法』の違いによるリスクも加わります。つまり、法と運用のギャップ、訴訟、政治利用、イメージダウン、現地の調査・分析・施工レベルのギャップなどのリスクが存在しているのです。そのため海外の環境管理は、現地スタッフに任せきりにするのではなく、本社スタッフ、駐在スタッフおよび現地スタッフが現状を認識し、適切な対応を行うことが肝要であり、現地の実情に精通し、それぞれのスタッフがコンタクトできる会社に相談することをお勧めします。
4. DOWAエコシステムの海外事業について
当社は国内・海外での豊富な経験及び実績と海外拠点ネットワークを生かし、海外でも日本と同等のサービスを提供しております。
中国においては日系企業初となる土壌浄化会社『蘇州同和環保工程有限公司』を設立し、土壌の調査・対策業務やコンサルティングに取り組んでおり、今まで以上にスピーディでよりきめ細やかなサービスを提供しております。
また、東南アジアでは2009年より廃棄物処理会社であるMAEH社をグループに加え、タイ、シンガポール、インドネシアに廃棄物処理拠点を得ました。現在、土壌の専門家を各拠点に配置し、既存事業との連携を進めながら工場進出時の土壌調査や対策を多数実施しています。
また、海外の協力業者とも連携し、上記以外にもアジアでは韓国やマレーシア、さらに欧米、オセアニアなどの各国で土壌汚染調査や環境デュー・デリジェンス、その他の環境サービスを提供しております。
■お問い合わせ先
DOWAエコシステム株式会社 ジオテック事業部
住所: 〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル22階
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この記事は
DOWAエコシステム ジオテック事業部
小泉 が担当しました