環境インフラ海外展開基本戦略が策定されました
途上国では都市化と経済成長が急速に進んでいます。都市化・経済成長が進むにつれ、大気汚染や水質汚濁などの公害対策や、廃棄物処理の促進も必要になります。先進国の教訓を活かし、すぐれた環境技術や環境インフラを導入して普及させることによって、途上国の廃棄物問題や公害問題、温暖化の影響を回避する、「一足飛び型」の発展が求められています。
首相官邸で開催される経協インフラ戦略会議で策定された「インフラシステム輸出戦略」の環境分野に関する具体的な戦略として、「環境インフラ海外展開基本戦略」が環境省によって策定されました。
1. 経緯
- 2013年5月
- 経協インフラ戦略会議(※)で「インフラシステム輸出戦略」が策定される
※経協インフラ戦略会議
総理、副総理または官房長官をメンバーとする会議
平成25年3月の第1回以降継続的に開催され、平成29年7月には第31回が開催された。 - 2017年5月
- 「インフラシステム輸出戦略」4回目のフォローアップ実施
「インフラシステム輸出戦略(平成29年度改訂版)」策定
気候変動分野に加え、廃棄物分野が位置づけられました。
出所:環境省 環境インフラ海外展開基本戦略(概要) - 2017年7月
- 環境省が「環境インフラ海外展開基本戦略」を策定
「インフラシステム輸出戦略」の環境関連部分を具体的・総合的に進めるための戦略として策定されました。
2. 「環境インフラ海外展開基本戦略」概要
2-1. 3つの主要施策
- 二国間政策対話、地域内フォーラム等を活用したトップセールスの実施
- 制度から技術、ファイナンスまでのパッケージ支援とその経済的・社会的効果の発信
- 民間企業、自治体、関係省庁や国内外の援助機関等と連携した実施体制の強化
2-2. 分野別アクション
- 気候変動緩和策
途上国の国別削減計画の具体的アクションプラン化を支援 - 気候変動適応策
気候変動による影響に適応するための技術やサービス(自然災害に対するインフラ技術、早期警戒技術など)の海外展開。途上国に進出している企業、これから進出する企業に、科学的な気候リスク情報を提供し、リスクへの的確な対応を図る。 - 廃棄物・リサイクル
高度な技術の導入や資源循環の促進による長期的な環境・経済・社会面でのメリットを発信。廃棄物発電、生活排水処理等に関してパッケージで支援する。 - 浄化槽
集合処理と個別処理のバランスの取れた包括的な汚水処理サービスを提案し、浄化槽の海外展開を支援。製造・施行・維持管理を担う人材育成、制度や管理体制整備を支援する。 - 水環境保全
行政官ネットワークでの協力体制を構築し、水環境ガバナンスを強化する。民間企業の海外展開を支援する。 - 環境アセスメント
環境アセスメント関係者(行政、国際機関、アセスメント事業者等)によるネットワーク構築、二国間協力による制度構築発展への支援を行う。
2-3. 地域別実施方針
東アジア・東南アジア、南アジア、小島嶼国、中東、アフリカ諸国の地域別に実施方針が策定されています。
詳しくは、「環境インフラ海外展開基本戦略」をご覧ください。
出所:環境省 環境インフラ海外展開基本戦略(概要)
3. さいごに
日本では1950年代の高度経済成長期に大気・水質など様々な公害が発生し、それを防止する様々な法規制が制定されました。法規制が制定されると、その規制を守るための環境浄化技術が開発され、日本の環境を支えてきました。日本の環境インフラを海外に展開することで、途上国の経済発展と環境汚染のデカップリングが可能となり、地球環境の保全につながります。
【参考資料】
環境省ホームページ
環境インフラ海外展開基本戦略の策定について
首相官邸ホームページ
経協インフラ戦略会議
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました