「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律」(改正FIT法)が公布されました。
平成28年6月3日に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律」(以下、改正FIT法)が公布されました。来年4月から改正FIT法が全面施行されることになります。改正FIT法の公布を受けて本年6月7日には、経済産業省より制度設計案が提示されました。今後、関連委員会での議論を経てパブリックコメントの手続きが進められていくことになります。
ここでは、改正FIT法についての概要をご案内いたします。
【1】改正FIT法について
今回、現行法の改正を実施する目的は、以下の3点です。
- 現行法による設備認定のうち、約9割を事業用太陽光発電が占めている現状の偏りの是正することで、エネルギーミックスを踏まえた電源間でのバランスの整備
- いわゆる電力系統への接続保留問題などを受けて、公平で効率的な電力取引を促す仕組みづくり
- 国民負担につながる電力買い取りの費用圧縮に向けて、より一層のコスト効率化の促進
これに向けて大きく以下に示す4つの改正が行われました。
【2】改正FIT法の概要
改正されるポイントは以下の4点に整理されます。
1)新認定制度の創設
経済産業省が再生可能エネルギー発電事業者の事業計画について、その内容の確認を行うための新認定制度が創設されます。この制度では、現行法の認定基準に加えて、以下3点の確認する基準が追加されます。
- 事業の内容が基準に適合すること
- 事業が円滑かつ確実に実施されると見込まれること
- 設備が基準に適合すること
具体的には以下(表1)の要件となります。
1, 事業内容の適応性 |
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・適切に点検・保守を行い発電量の維持につとめること |
・定期的に費用、発電量等を報告すること |
・系統安定化等について適切に発電事業を行うこと |
・設備の更新又は廃棄の際に、不要になった設備を適切に処分すること |
2, 事業実施の確実性 |
・接続契約を締結していること |
・土地利用に関する法令を遵守すること |
・適正な時間内に運転を開始すること |
3, 設備の適切性 |
・発電設備の安全性に関する法令を遵守すること |
・設備の設置場所において事業内容等を記載した標識を掲示すること |
今後発電設備の認定申請では、現行法の認定基準と合わせて、上記(表1)の新認定基準が適応される予定です。
2)買取価格の決定方法の見直し
調達価格の決定では従来の買取価格の決定方法を見直し、発電方式の特性をふまえた柔軟な方式を選択できるようになります。具体的には「電気の使用者の負担の軽減を図る上で有効である場合」には、電力の買取価格の決定方法を入札で決定できる仕組みが導入されます。
また、発電方式の特性上、開発期間に長期を要すると判断される場合には、複数年にわたる調達価格を定めることを可能とすることで、電源間でバランスの取れた導入を促す仕組み作りがおこなわれます。
3)買取義務者の見直し等
買取義務者が小売電気事業者等から一般送配電事業者等に変更されます。これにより広域運用等を通じたより多くの再生可能エネルギーの導入が可能となります。
4)賦課金減免制度の見直し
電力多消費の事業者に対する賦課金の減免制度については、申請事業者の国際競争の状況や省エネルギーの取組状況を踏まえて認定を行う仕組みになります。
以上のような改正FIT法が平成29年4月1日(ただし、賦課金減免制度の見直しに関する事項(【2】-4)は、平成28年10月1日)に施行されます。
【3】新認定制度の方向性
今回の法改正の中でも上記【2】-1に示した新認定制度が大きく注目されています。
新制度では、今後、認定申請がされる発電設備はもちろんのこと、現行FIT法ですでに認定されている発電設備も対象となります。ここでは、現状、設備認定を取得しているにもかかわらず未稼働となっている案件について、一定の条件がそろった場合は認定取り消しも行うことができるようになる予定です。
1)新認定制度の特徴
1, 設備認定済みの案件について
設備認定済みの案件であっても、来年4月1日の法律施行日までに、電力会社と接続契約を締結していない案件は、現行FIT法に基づく認定が失効します。ただし、電力会社との接続契約に一定期間を必要とされるためその期間中か、またはその過程である案件は「みなし認定案件」として認定されます。
「みなし認定」には、設備更新・廃棄のスケジュールや各種順守事項への同意などを6か月以内に提出することが求められます。なお、すでに発電事業を開始している設備についても新認定を受けたとみなすこととしており、新制度で求める各事業者が遵守すべきとされる事項(適切なメンテナンス、法令遵守等)について、原則遵守が求められます。
2, 新規の認定申請案件について
新規に設備認定を申請しようとする場合、認定取得は電力会社との系統接続の契約締結(連携承諾+工事請負負担金契約)が認定の条件となります。この申請の際、接続契約を待ってから認定申請を行うと、申請プロセスの長期化につながってしまうため、「前倒し申請」を行うことが可能となる予定です。
また、新認定基準では、従来の認定基準に加えて、
・適切な保守点検の実施、発電量の維持
・設備の更新又は廃棄の際に、不要になった設備を適切に処分すること
・適切な期間内に運転を開始すること等
が追加されています。
3, 設備認定の取り消し~認定設備の「安全と遵法性」の確保にむけて~
現行法下における発電設備では、防災上や、地域住民との設置に関する問題が指摘されてきました。改正FIT法では、「地域住民との共生」のため他法令の遵守が求められます
具体的には、表2に示すように土地利用規制法や電気事業法等です。
主な関連法令 |
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農地法・森林法・河川法・環境影響評価法・自然公園法・都市計画法・国土利用計画法・電気事業法・建築基準法 等 |
新認定制度における定められたプロセスの実施期間を過ぎた案件や、また、法令遵守の観点から、すでに発電を開始している事業も含め他法令違反が判明し、事業を適切に実施していない場合には、経済産業大臣による改善命令や、認定取り消しを行うことが可能になります。
【4】今後の予定
今後、経済産業省より提示された新認定制度案は、パブリックコメントや関係委員会の議論を経て制度化されていきます。「法規と条例」では、引き続き、改正FIT法やそれに伴う認定制度等をご案内していきます。
【参考資料】
経済産業省ホームページ
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)等の一部を改正する法律」が公布されました
経済産業省 資源エネルギー庁 ホームページ
改正FIT法の概要
この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ
鈴木 が担当しました