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バーゼル条約

今回は、廃棄物の処分やリサイクルを目的とした輸出入の際に必ず認識しておくべき「バーゼル条約」についてご紹介いたします。

■バーゼル条約が生まれた背景

かつて、有害廃棄物の越境移動は欧米諸国間で行われていましたが、1976年のセベソ事件(伊の化学工場のダイオキシン汚染土のドラム缶が行方不明に。1982年に仏で発見。)を契機に産業先進国は廃棄物の国際移動に対する法的規制が必要であると認識しました。さらに1986年以降、産業先進国から、環境管理や社会構造が不備である途上国向けの廃棄物の輸出が顕在化し、輸入途上国の環境汚染も国際的な問題となりました。こうして1989年にバーゼル条約が採択されました(1992年5月5日発効。2012年12月現在締約国数は178か国1機関)。

■バーゼル条約概要

【目的】

  1. 廃棄物の越境移動の減少
  2. 廃棄物の越境移動の規制

【規制対象】

バーゼル条約では、規制の対象となる廃棄物を発生過程や性質、含有成分によって有害とされるものを付属書の中で特定しています。日本国内法はバーゼル条約に準拠したバーゼル法の付属書で確認することができます。

【締約国の義務】

  • 国内管理:自国内で生成される廃棄物を最小化し、国内で適切に処分する義務。
  • 国際管理:「環境上適正に管理」できない国への輸出を認めてはならない。

【廃棄物の越境移動】

輸出入が認められるのは、

  1. 輸出国に環境上適正な処分能力と処分施設がない場合
  2. 廃棄物のリサイクル目的の輸出入の場合

です。
しかし、環境上適正な処分・管理の基準は条約上明確にされていません。
また、輸出入する際には、輸入国で輸入禁止扱いされている廃棄物を他の締約国が輸出することは禁止されています。そして輸出国は輸入国・通過国に事前に条約に定められた情報を通報し、輸入(通過)予定国から文書による同意を得た上で輸出する必要があります。

■BAN改正(1995年改正、未発効)

1995年の第三回締約国会議で先進国(OECD、EU諸国等)から途上国に対する有害廃棄物の越境移動に関して禁止する条約改正(BAN改正)が採択されました。このBAN改正では最終処分だけではなく、リサイクルを目的とした越境移動についても段階的に禁止するとしています。しかしながら、この改正は以下のような意見が少なからずあるために発効されていません。

■リサイクル目的の廃棄物越境移動についての賛否

リサイクル目的の廃棄物越境移動の禁止については反対意見もあります。新たに資源を開発してバージン素材を生み出すのではなく、リサイクルし、限りある資源を有効に活用することは、持続可能な社会を構築するのには必要不可欠だからです。特に、含有物が組成上有害な廃棄物でも、もともと貿易可能な経済的価値のある金属を有している場合も多く、リサイクル目的の越境移動を一律に否定することに抵抗があるのも仕方がありません。下表の脚注にもありますとおり、日本においてバーゼル条約の手続きに基づいて輸出入されているものは最終処分目的ではなく、リサイクル目的でなされています。

しかし、一方で「環境上適正な管理・処分」ということが条約上明確に規定されておらず、リサイクル目的という名のもとに輸出入されて、適正に管理されることなく環境汚染をもたらす危険性があることも事実です。

廃棄物から資源やエネルギーを回収できる時代です。場所によっても年代によっても多種多様な廃棄物を、総て一括りにして規制してしまうのではなく、それぞれに応じた「適正」な対応をしていきたいものです。
とはいえ、適正と言うのは簡単なものの、その定義づけはなかなか難しいですね。

■「バーゼル法に基づいた輸出入の実績」(平成23年1~12月)

我が国からの輸出 我が国への輸入
輸出の承認 182,799t 輸入の承認 26,067t
実際の輸出 88,211t 実際の輸入 5,300t
輸出相手先 韓国、ベルギー、米国、シンガポール 輸入相手先 中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、台湾等
品目 鉛スクラップ(鉛畜電池)等の金属回収を目的とするもの 品目 ニカド電池スクラップ、電子部品スクラップ、金属(鉛、銅、亜鉛他)・貴金属くず等であり、いずれも金属回収など、再生利用が目的。

【出典】外務省ホームページ

【参考資料】

外務省ホームページ
バーゼル条約

【参考文献】

  • 国際環境法 /水上千之・臼杵知史 他 編(有信堂高文社)
  • 環境法入門 /交告尚史・臼杵知史 他 著(有斐閣アルマ)
  • 解説 国際環境条約集 /広部和也 他 編(三省堂)

蔵石 この記事は
DOWAエコシステム 海外事業推進部
蔵石 が担当しました

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