台湾における土壌及地下水汚染整治法の法改正について
台湾では2000年に「土壌及地下水汚染整治法」(以下「台湾土汚法」)が施行されました。その後、2005年および2010年に法改正を行い、現在に至っています。
施行年 | 施行及び改正内容 |
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2000年 | 「土壌及地下水汚染整治法」施行 |
2005年 | 第8条・9条の業種指定(17業種) |
2010年 |
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2012年 | 第8条・9条の「土壌汚染評価調査及び検測作業管理法」施行予定 |
第8条:指定対象業種の工場用地の売買に際して、調査義務を課すもの。
第9条:指定対象業種の新設・休業・閉鎖・経営者変更に際して、調査義務を課すもの。
対象業種は、環境便利帳の 台湾における土壌及地下水汚染整治法の対象業種一覧(PDF) をご覧ください。なお、登録業種が対象業種と異なっていても、対象業種の製造工程が含まれる場合、地方政府環境保護局の判断に因っては台湾土汚法第8条・第9条の対象となりますので注意が必要です。
台湾土汚法の第8条及び第9条について、その内容を詳細に規定した「土壌汚染評価調査及び検測作業管理法」が2011年10月に公告され、2012年1月1日より施行予定となっています。
今回は、この「土壌汚染評価調査及び検測作業管理法」について詳しくみて行きます。
■「土壌汚染評価調査及び検測作業管理法」について
「土壌汚染評価調査及び検測作業管理法」は、法第8条及び第9条の調査契機に基づく調査に関して、土壌汚染評価調査資料の内容、申告タイミング、必要な書類、評価調査方法、測定タイミング、調査人員の資格評価、訓練、委託、審査作業フロー及びその他の遵守事項を詳細に規定したもので、その内容は多岐にわたっています。その中から、これまでの内容と異なる点について、4項目を抜粋して説明致します。
1. 最少採取地点数の変更
台湾における調査地点の設定方法としては、ESA法(汚染リスクの高い地点を選定)やグリッド法(日本の土壌汚染対策法と同じ)があります。いずれの場合でも、調査対象である事業用地面積に応じて最少採取地点数が規定されており、これまで1,000m2以上の場合は面積によらず10地点となっていました。
今回の改正では、事業用地面積が10,000m2以上の場合、2,500m2毎に採取地点を増やす必要があります。例えば、事業用地面積が20,000m2の場合、10地点+4地点の計14地点での調査が最少採取地点数となります。
事業用地面積(A) (m2) | 最少採取地点(N) |
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A<100 | N=2 |
100 ≦ A<500 | N=3 |
500 ≦ A<1,000 | N=4 |
1,000 ≦ A<10,000 | N=10 |
10,000 ≦ A | N=10 +(A-10,000)÷2,500(無条件切捨て) |
注1:同一事業の用地が不連続の場合、各用地は各最小採取点数規定に従う。
注2:事業用地は10,000m2を超えた面積について2,500m2毎に採取地点を追加。
2. 分析項目の変更
法第8条及び第9条に基づく調査では、対象業種に応じて分析項目が規定されています。今回、該当業種の分析項目に属さない汚染物質項目について、事業において実際に使用した場合や、土壌汚染管制標準項目に該当するものを産出した場合、その汚染物質項目を追加分析することが必要となりました。
一方、事業において実際に該当業種の汚染物質項目を使用していない、あるいは産出してない場合は、証明書類を地方主管機関や受託機関に提出し、同意が得られれば、該当汚染物質項目の分析を削除することが可能となりました。
3. 調査対象範囲の変更
法第8条及び第9条に基づく調査では、事業用地の全てを対象範囲としてきました。
今回の改正では、事業用地の範囲だけを変更する場合は、その増加または削減面積のみを調査対象範囲とすることとなりました。
4. 調査結果の審査について
法第8条及び第9条に基づく調査報告書は、法的に登録された環境工程技術士、応用地質技術士またはその他の関連専門技術士の承認を受けた上で(承認費用別途必要)、地方主管機関(地方政府環境保護局)や受託機関に提出して審査を受けます。
この審査に関して、今回の改正では次の内容が規定されました。
- 審査費用:
- 資料調査(Phase I)+土壌調査(Phase II) NT$5,000/件(約15,000円)
資料調査(Phase I)のみ NT$3,000/件(約12,000円)
※提出報告書が審査結果により却下された場合、再提出時にも再度支払う。 - 納付期限:
- 地方主管機関等からの書面通知を受け15日以内(未納の場合審査を却下)
- 処理方法:
- 審査の処理方法は下記の通り。審査期間は、問題のない場合で約1箇月必要。
■さいごに
台湾では、台湾土汚法の施行後10年が経過し、実際の状況に合わせた法改正が行われ、その内容もより細分化されてきています。
DOWAエコシステムでは、2007年に台湾事務所を開設する前から、台湾での土壌・地下水汚染の調査、浄化対策に取り組んで来ました。台湾での土壌汚染調査の留意点は、他の国にも当てはまる事ですが、日本と勝手が全く異なるという事です。
特に、法第8条及び第9条に基づく調査では、結果報告の内容に不備があった場合、報告書の内容修正や追加調査の実施が求められ、それに関わる労力、時間および費用が余計にかかるだけでなく、予定通りに土地の売買や工場の新設等が出来なくなる恐れがあります。
そのため、台湾土汚法の対象業種に関わらず、工場の新規設立・用地変更・移転・休止・閉鎖・売買などの際に土壌調査を行う際は、現行の法令に精通した業者を選ぶことが、御社の事業計画をスムーズに進めるためには非常に重要です。
この記事は
DOWAエコシステム ジオテック事業部
日下部 が担当しました