水濁法改正 ~最近の動きと背景~
1. 最近の動き ~水質汚濁防止関連~
水質汚濁防止法に関連して「地下水汚染の未然防止」について、改正案が国会に提出されています。
地下水汚染の未然防止
水質汚濁防止法の一部を改正する法律案
平成23年3月8日閣議決定、第177回通常国会提出
環境省HP:水質汚濁防止法の一部を改正する法律案の閣議決定について(お知らせ)
2. 水質保全に関する規制
政府は、水質保全に関して大きく分けると、2つの観点から規制を設けて、公共水域・地下水の水質保全を図っています。
- 排水への規制
- 地下へ浸透させる水質への規制
公共水域・地下水保全に関する法律
法律 | 目的 | 手法 | 対象 |
---|---|---|---|
水質汚濁防止法 | 公共水域保全 地下水保全 |
排水基準 総量規制基準 事故時の対応 排水の地下浸透禁止 |
工場(事業所) からの排水 |
下水道法 | 下水道の放流水水質を確保するため | 排水基準 | 工場(事業所) からの排水 |
土壌汚染対策法 | 汚染の状況の把握と措置 | 土壌調査、汚染土壌への対策 | 汚染土壌 |
水質汚濁防止法では、排水への規制を達成するために、排水基準値の設定だけでなく、特定施設の種類、構造、使用の方法、処理の方法、水量・水質についても届出を義務付け、また、構造等の変更についても届出を義務付けることによって、排水の水質確保を目指しています。
下水道法は工場からの排水によって下水処理に悪影響が生じ、下水処理場から公共水域へ放流する水質に影響が出ることを防ぐため、下水へ放流する水質を規制しています。
3. 水質汚濁防止法の改正(未然防止)の背景
水質汚濁防止法では、平成元年より意図的・非意図的にかかわらず有害物質を含む特定地下浸透水の地下浸透を禁止していますが、それにも関わらず、平成元年以降も地下水汚染が発生していることが環境省の地下水汚染事例に関する実態把握調査からわかってきました。
中央環境審議会 水環境部会 地下水汚染未然防止小委員会(第1回)資料
工場・事業場が汚染原因と推定される地下水汚染事例の汚染原因行為等の実態について
https://www.env.go.jp/council/09water/y0914-01/mat05.pdf
この調査によると、地下水汚染の原因施設は以下の通りで、特定施設に係るものが半数以上を占めました。
- 水濁法の規制対象である特定施設に係るもの 63%
- 特定施設以外の施設に係るもの 33%
- 施設以外に係るもの 4%
(工場・事業場が汚染原因と推定される地下水汚染事例の汚染原因行為等の実態について 図3)
なお、特定施設以外の施設の種別は、以下の通りでした。
- 貯油施設 50
- 洗浄設備 17
- 貯蔵設備・貯蔵場所 9
- その他 (浸透防止策がとられていない場所での作業に伴う浸透、溶剤などの運搬中にこぼれ浸透、等) 8
(工場・事業場が汚染原因と推定される地下水汚染事例の汚染原因行為等の実態について 図5)
以上のように、環境省の調査により地下浸透の禁止だけでは地下水汚染防止として十分ではないことがわかってきました。その一方で、土壌汚染対策法は「起きてしまった」地下水汚染に対して汚染土壌を対策する、対処療法的な性格を持つ法律です。
そこで、さらなる地下水汚染の発生を防止するために、地下水汚染の未然防止に関する規制を加える必要性について地下水汚染未然防止小委員会にて取りまとめられ、水質汚濁防止法の一部を改正する法律案が、平成23年3月8日に閣議決定されるに至りました。
【参考】中央環境審議会 水環境部会 地下水汚染未然防止小委員会
https://www.env.go.jp/council/09water/yoshi09-14.html
この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ
鈴木 が担当しました