チオ硫酸ナトリウム溶液を用いたPb汚染土壌の効果的な洗浄方法
今回は経済産業省の「土壌汚染対策のための技術開発」の一テーマとして土壌修復ラジアルウェル技術研究組合として活動している研究成果をご紹介します。
Pb汚染土壌を水で洗浄する場合には除去率が低く、酸で洗浄した場合には洗浄後の溶出が止まらないという問題点が指摘されています。
本研究は、鉛汚染土壌に対しチオ硫酸を用いた原位置フラッシングによる脱離と洗浄について検討しました。
1. チオ硫酸Na溶液を用いた原位置フラッシングの概要
1)Pbの脱離
- チオ硫酸塩で洗浄することにより、チオ硫酸錯体としてPbを溶離させる(式1)
2)脱離後の洗浄
- 土壌中からチオ硫酸塩を除去
- チオ硫酸Na溶液を電気分解によりチオ硫酸塩を無効化(式2)
チオ硫酸塩が土壌中に残存すると、地下水のCOD濃度上昇、Pbの溶解等のリスクが考えられますので、土壌中のチオ硫酸塩を洗浄・除去します。ここでも、フラッシング用水を循環利用することで、排水量を削減します。
図1 チオ硫酸Na溶液を用いた原位置フラッシングの概念
2. 試験方法
2-1 試験試料
- Pb溶出量0.15mg/L、Pb含有量280mg/kgの実汚染土(表1参照)
2-2 カラム試験
- カラム試験(図2参照)を3条件実施(表2参照)
- 通液量は土壌の10倍量まで(Liq./Soil 10)
- チオ硫酸Na溶液濃度 0.1mol/L
- 電解後のチオ硫酸Na溶液はpH7に調整し通液
- ICP発光分光分析装置を用いて、浸出液のPb分析実施
2-3 チオ硫酸Na溶液の電解試験
- チオ硫酸Na0.1mol/L、1,000mLのバッチ電解試験実施(表3参照)
- イオンクロマトグラフィを用いて、チオ硫酸イオン、硫酸イオン測定実施
3. 結果と考察
3-1 カラム試験
- チオ硫酸Na溶液を用いた脱離では、明らかに水カラムよりもPbの溶離濃度が高くなった。
- 脱離+洗浄カラムは、洗浄工程への切り替えによりL/S 6から7の間で浸出液のPb濃度の大きな低下がみられた(図3参照)。
- 水カラムのPb含有量の除去率は、L/S 10の時0.48%、脱離のみカラムのPb含有量の除去率は、L/S 10の時60%、脱離+洗浄カラムのPb含有量の除去率は、L/S 10の時54%であった(図4参照)。
3-2 電解試験
- チオ硫酸イオン濃度は、電解時間50分の時に0.003 mol/Lとなった。また、溶液中の硫酸イオン濃度は、電解時間50分の時に0.113 mol/Lとなった(図5参照)。
- 電解によって溶液が乳白色に懸濁し、電解後の溶液のpHは1.7であった。
4. まとめ
- 土壌フラッシングによるPb含有量除去率は、水のみのフラッシングでは0.48%であったのに対して、本法脱離工程では50~60%であった。
- 電気分解を用いる洗浄工程の用水循環利用では、排水を発生させることなくフラッシング洗浄を継続できる。
- 今後は、フラッシング洗浄の終了判定について、土壌溶出値、地下水質の経時変化等土壌汚染の地下水汚染リスク低減の視点から検討をすすめたい。
この記事は
ジオテクノス株式会社
下村 が担当しました