塩化ビニルモノマーの原位置浄化方法の検討
1. はじめに
3つの既存工法にて、塩化ビニルモノマー汚染の原位置浄化が実施可能かどうかを、室内試験にて検討した。
- 鉄粉混合法(土壌・地下水浄化)
- 鉄粉透過反応壁(地下水拡散止)
- 嫌気性バイオレメディエーション(地下水浄化)
塩化ビニルモノマー(以下、VC:vinyl chloride)について
- トリクロロエチレン(以下、TCE)等で汚染された土壌・地下水中に分解生成物 として存在する場合がある。
- 平成21年11月に地下水環境基準項目に追加された。(0.002 mg/L以下)
- 土壌汚染対策法に基づく特定有害物質への追加が審議されている。
土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し等について(諮問)平成25年10月7日 諮問第362号環水大土発第1310071号
2. 試験方法
試験は以下のフローにより行った。
3. 試験結果
■鉄粉混合法・鉄粉透過反応壁
【浄化日数】
VC:塩ビモノマー
TCE:テトラクロロエチレン
cDCE:シス1,2ジクロロエチレン(cis-1,2-DCE)
TCE:テトラクロロエチレン
cDCE:シス1,2ジクロロエチレン(cis-1,2-DCE)
【VOC濃度変化】
【鉄粉混合試験結果】
- 土壌浄化用鉄粉A
→土壌・地下水ともにTCEのみ分解を確認、VC・cis-1,2-DCEは分解せず - 土壌浄化用鉄粉B
→土壌・地下水ともにVCの分解を確認、TCE・cis-1,2-DCEも分解 - 透過反応壁鉄粉C
→地下水中のVCの分解を確認、TCE・cis-1,2-DCEも分解
- いずれの鉄粉も分解するVOCについては鉄粉量を増やすほど分解速度は大きくなる傾向にある
- 土壌浄化用鉄粉Bおよび透過反応壁用鉄粉Cは VCの分解が可能であった。いずれの鉄粉においてもVCの分解速度はcis-1,2-DCEよりも遅いことが分かった。
■嫌気性バイオレメディエーション
【嫌気性バイオ試験結果】
- cis-1,2-DCE分解後にVCを添加した系
cis-1,2-DCE分解後にVCを添加した系では、即座にVCの分解に伴う濃度減少が確認され、VC添加後約4週間で0.001 mg/L以下まで減少した。 - VCを初期添加した系
VCを初期添加した条件では、60日後からVCの分解に伴う濃度減少傾向を確認し、120日後には0.002 mg/Lまで減少した。
1. ではVCは即座に分解開始したのに対し、2. では試験開始60日後にVCの分解が開始した。2. のVC分解開始までの期間は1. のcis-1,2-DCE分解開始までの期間とほぼ同じであったことを考慮すると、VCが分解されるための環境は、cis-1,2-DCEが分解されるための環境と同様であると推測された。
まとめ
VCに対する原位置浄化方法として既存工法(鉄粉法・嫌気性バイオ)の室内試験を実施し、以下のことを確認した。
■鉄粉によるVCの分解について
- 鉄粉混合法および鉄粉透過反応壁において、適切な鉄粉を選定すればVCの分解は可能
- 鉄粉によるVCの分解速度はcis-1,2-DCEのそれよりも遅い。
■嫌気性バイオレメディエーションによるVCの分解について
- 嫌気性バイオレメディエーションにおいてもVCの分解が可能。 VCの分解開始はcis-1,2-DCE の分解開始と概ね同時期であり、一定の期間を経た後に分解が開始される。
この記事は
ジオテクノス株式会社
横山 が担当しました