低濃度重金属汚染土壌の処理について
■はじめに
トンネル工事等で発生する残土のうち、自然由来汚染土壌の処理が課題となっている。このような比較的低濃度な重金属汚染土壌の浄化処理法の一つとして、鉄粉を汚染土壌スラリーに添加して汚染物質を吸着させたのち、鉄粉を磁選によって回収することで浄化土を得る方法(以下、鉄粉磁選法)が提案されている。
本報告では異なる4種の実際の自然起因汚染土壌を用い、どの程度浄化土が得られるかについて検討した。
■試験方法
1)予め表面磁力0.7Tのレアアース磁石で磁選して得られた非磁着物を試料として用いた(表2-1)。
■表2-1 試験試料の分析結果(予め0.7Tの磁石で磁選して得た非磁着物)
※1底質調査方法による。※2溶出液のpH
2)試験方法 右図のとおり。
■結果および考察
【土壌A】
■表3-1 土壌A 各産物の重量および分析結果
図3-1 土壌A As物質収支
1)重量分布 :5.8wt%の磁着物、95.2wt%の浄化土
2)As物質収支 :処理後土壌95.6%、磁着物4.3%、処理水0.10%に配分
3)As溶出量値の含有量換算 :処理前3.7%、処理後0.55%
4)3.2%分は磁着物および処理水へ
➡Asは主に鉄粉に吸着して回収
【土壌B】
■表3-2 土壌B 各産物の重量および分析結果
図3-2 土壌B As物質収支
1)重量分布 :3.6wt%の磁着物、97.4wt%の浄化土
2)As物質収支 :処理後土壌93.4%、磁着物6.5%、処理水0.10%に配分
3)As溶出量の含有量換算 :処理前2.6%、処理後0.22%
4)差分の2.4%分は磁着物および処理水へ
➡Asは主に鉄粉に吸着して回収
【土壌C】
■表3-3 土壌C 各産物の重量および分析結果
図3-3 土壌C F物質収支
1)重量分布 :5.8wt%の磁着物、95.2wt%の浄化土
2)F物質収支 :処理後土壌90.1%、磁着物7.0%、処理水2.9%に配分
3)F溶出量の含有量換算 :処理前2.6%、処理後0.66%
4)差分の1.9%分は磁着物および処理水へ
➡Fは主に鉄粉に吸着して回収
【土壌D】
■表3-4 土壌D 各産物の重量および分析結果
図3-4 土壌D F物質収支
1)重量分布 :1.6wt%の磁着物、99.4wt%の浄化土
2)Se物質収支 :処理後土壌90.4%、磁着物0.20%、処理水9.4%に配分
3)Se溶出量の含有量換算 :処理前12.4%、処理後3.5%分
4)差分の8.9%分が磁着物および処理水へ
➡Seは主に鉄粉に吸着して回収
■おわりに
試験した範囲で以下を確認した。
- 本法を適用することにより90wt%以上の溶出量基準を満足する処理土壌が得られた。特に、土壌A~Cは粘土分をいずれも40wt%以上含んでおり、洗浄分級処理で得られる浄化土壌は原理的に60wt%以下と考えられ、本方法の方がより多くの浄化土壌を得られることが示された。
- 本方法による溶出性Asは鉄粉に吸着して磁選回収され、処理前後のAs溶出量低減率は土壌Aで85.0%、土壌Bで92.9%であった。
- 溶出性のFも、Asと同様に鉄粉に吸着して磁選回収されることが示唆され、F溶出量低減率は土壌Cで85.9%と比較的高い低減率が得られた。
- 溶出性のSeは、鉄粉に吸着するよりも洗浄水に溶解して回収する効果の方が大きかった。Se溶出量低減率は土壌Dで66.7%と比較的低かった。
この記事は
DOWAエコシステム ジオテック事業部
友口 が担当しました