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金属回収をするポリマー開発

群馬大学大学院工学研究科
応用化学・生物化学専攻
永井 大介 助教

群馬大学 ホームページ
群馬大学工学部応用化学・生物科学科 ホームページ

DOWAでは金属回収に関する様々な技術を様々な研究機関と共同で模索しています。
今回のインタビューは、金属を高効率で吸着するポリマーを合成し、ポリマー研究の第一人者である群馬大学大学院助教、永井先生にお話をお聞きしました。

レアメタル(希少金属)を効率良く回収できる吸着・水溶性ポリマーを開発
http://www.gunma-u.ac.jp/sb/log/eid24.html

<その1>テーマ:高分子ポリマー開発の契機

先生はどの様な経緯で、ポリマーの研究を志されたのでしょうか?

私は元々「高分子合成」の分野で、東京工業大学の名誉教授で近畿大学分子工学研究所・所長の遠藤剛(えんどうたけし)教授のもとでお世話になりました。
遠藤研究室では、31歳まで6年半新しい高分子を合成する、或いは、新しい高分子の合成反応を開発するということを教えていただきました。

私が学生の頃は、新しい構造の高分子を作っていましたが、途中からは機能をつけなければならない、というように変わってきまして、機能に合わせた材料設計をおこなっていました。
昔は新しい構造の合成だけやっていれば、論文としてジャーナルに載ったのですが、今は新しい反応がナカナカ見つからないということもあって、最近は機能を付けた新しい構造を作らなければいけない、という流れにあります。

昔は合成するだけで論文として価値があったのが、最近はそれは当たり前になって、どんな機能を持つ物質なのか、ということが問われるようになってきたということですか。

そうなってきたのだと認識しています。
近年の高分子合成の分野においても、機能をつけなければならないというように変わってきまして・・・そのような視点で研究しています。

機能を問われるようになってきたということですが、開発される際には、機能先行で考えるのですか、それとも結果としてこういった機能があった・・という流れで考えてゆくのですか?

機能が先ですね。
私の研究室では、まず、求める機能がありまして、そこからデザインして材料を合成できるということが強みです。

機能をデザインするというのは具体的にはどういった思考で作られてゆくのですか?

例えば吸着に関して説明しますね。
周期表、覚えていますか? 水兵リーベ僕の船・・・と覚えたあの表、です。
この周期表の下の方の元素ほど原子半径が大きいんです。
例えば、レアメタル、白金族の場合、周期表の下のほうにありますから金属原子の中では原子半径が大きい方なんですね。硫黄も、酸素や窒素よりも原子半径が大きいんです。
そこで、HSAB論というのがありまして・・・原子半径が大きいとソフトな原子と呼ばれていて、大きいもの同士・ソフトな原子同士は相性がイイというのがわかっています。
その観点でみると原子半径の大きい白金族を吸着したい場合には硫黄原子が適しているということになるんですね。

周期表

そして、白金属の単位重量あたりの吸着量を上げるには、硫黄原子が締める割合が多いほうが良いので、ポリマーのユニットの構造のなかに硫黄原子が締める割合を多くするのです。
そうしますと、単位重量あたりの吸着量が増えるということなんですね。
・・・いった順で考えていきます。

今回の研究は、硫黄の持つ機能に着目して研究されたということですか?

最初は機能ではなく、新しいポリマーの合成方法、つまり、水中でポリマーの化学合成ができないか、について研究していました。
化学合成は通常溶媒として化学物質を使うのですが、これが水中でできれば、化学物質の使用量を減らす事もできます。

水中で化学合成ができるのですか?

やってみたらできました。
たまたま、硫黄を持つポリマーを合成することができて、機能は見つかっていなかったのですが学会で発表ましたところ、ちょうど遠藤研究室時代の上司であった、現在は山形大学の准教授の落合文吾先生から、「硫黄はレアメタルと相性が良いから吸着について試してみたら?」というアドバイスをいただきました。
それで硫黄ポリマーによる金属吸着の研究を始めた…という流れなんですよ。

では最初は、溶媒を使わずに水中で化学合成ができたという結果があって、その中の硫黄のところが役に立つのではないか?ということがきっかけなんですね。

はい。そこが研究の始まりです。

ここまでお読み頂きありがとうございます。
次回は、「化学っておもしろい」についてお話しいただいています。

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