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拡大生産者責任制度について その3
〜能力論と原因論 その2(アンケート等)〜

国立研究開発法人 国立環境研究所
資源循環・廃棄物研究センター
循環型社会システム研究室 室長
田崎 智宏(たさき ともひろ)様

国立研究開発法人 国立環境研究所
資源循環・廃棄物研究センター

「EPR」という言葉をご存知ですか。
EPRは、Extended Producer Responsibilityの略で、日本語では、「拡大生産者責任」と呼ばれています。
2014年は家電リサイクル法、容器包装リサイクル法、自動車リサイクル法等の見直しの年でもあり、その中で、「拡大生産者責任」という言葉を聞く機会もあったと思います。

今回は、家電リサイクル見直しに関する議論が行われていた中央環境審議会 循環型社会部会 家電リサイクル制度評価検討小委員会の委員でもある、国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室 田崎さまに、「拡大生産者責任」についてインタビューをさせていただきました。

【その3】能力論と原因論 その2(アンケート等)

前回は、拡大生産者責任にも、能力論と原因論という考え方があると教えていただきました。今回は、掘り下げて、人々がどう考えているのかのアンケートについて、お話しいただきます。

前回、「有能論」「原因論」というそもそもの考え方の違いや「責任」という言葉の認識の違いなどが絡み合って議論が収束しにくい状況であるという問題点を説明しました。このような状況を少しでもときほぐしたいとおもいまして、2013年の4〜7月にかけて、スウェーデンのルンド大学との共同研究で、拡大生産者責任(EPR)に対するステークホルダーの認識について国際調査をしました。

インターネットを使って全世界の有識者426名に質問を行いました。
質問内容は、「あなたは拡大生産者責任で有能論と原因論をどれだけを重視していますか?」というような質問を含み、拡大生産者責任の目的、責任の種類、生産者の範囲、拡大生産者責任に関する特定の見解への賛否のほか、回答者の知識レベル、関連分野(容器包装、家電等)、所属組織などでした。

以下、これらの結果を簡単に説明します。

アンケート:1 回答者の属性

学識者だけではなく、幅広い層から回答をいただきました。

アンケート:2 拡大生産者責任を運用することによって達成する目的意識の違い

拡大生産者責任の目的をどう認識しているか、という質問の結果では、国や地域によって重視するものが異なる事がわかりました。日本人は製品情報を提供することや製品のリサイクル性の向上を重視する傾向があることがわかります。逆に、廃製品などの収集量を増やすことはあまり重視されていません。欧州、北米では、廃製品などの収集量を増やすことがかなり重視されているのとは対照的です。

この結果は拡大生産者責任の概念を全般的に聞いたものなので、個別の製品になるともう少し違いが出てくると思います。

アンケート:3 拡大生産者責任を運用すべき範囲とその論拠

拡大生産者責任の適用範囲については「従来の廃棄物リサイクルシステムではうまく扱えない製品についてのみ適用」すべきという意見と「できるだけ多くの製品に適用」すべきという意見があるなどの意識の違いが浮き彫りにされました。

さらに、生産者は廃棄物となる製品を製造して利益を得ているから、拡大生産者責任を課すべきである、という「原因論」については意見が概ね二分されましたが、生産者は製品システム全体における有能な主体だから拡大生産者責任を課すべきであるという、「有能論」については賛成派が3/4を占める結果となりました。

アンケート:3 拡大生産者責任制度に係る見解に対する意見のクラスター分析結果

拡大生産者責任に係る特定の見解(アンケート:4の左側の文章)についての賛成・反対の回答結果をクラスター分析にかけたところ、理念先行型の認識と現実面強調型の認識との差が大きい結果となりました。

アンケートから見える日本のリサイクル法の課題は・・・

拡大生産者責任の目的についての日本人固有の認識もあると思うのですが、日本のリサイクル法は収集する量の目標をきちんと立てられていません。
特に家電リサイクル法は集まったモノをどうリサイクルするかを決めたところに主眼があり、小売業者が生産者に使用済み家電を引き渡す義務があるといっても、積極的に回収する仕掛けが用意されていません。
また、容器包装の場合、自治体がどれだけ集められるかという分別収集計画量はありますが、将来的にどれだけの容器包装廃棄物を分別収集すべきかという量は目標として定められていません。
結局、使用済み家電については5~6割程度しか集まっていません。残り4割に何も起こってなければいいのですが、正しい処理がされずにフロン等が大気に放出されてしまったり、不正に海外に渡って環境汚染を引き起こしたりいろいろな懸念がある中で、うまくそこまでは手が届いてないというのが現状ですね。

それもあって、今回、家電リサイクル法の見直し議論では、回収量の目標をまずつくろうということになりました。そのような全体目標に対して各ステークホルダーができることで貢献しましょうという議論が進みました。
これは今回大きな進展だったと思っています。

【参考資料】

資源循環・廃棄物研究センター
拡大生産者責任の概念についての国際認識調査


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、日本の各種リサイクル法における拡大生産者責任についてお話しをお伺いしています。


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