DOWAエコジャーナル

本サイトは、DOWAエコシステム株式会社が運営・管理する、環境対策に関する情報提供サイトです。毎月1回、メールマガジンの発行と情報を更新しています。

文字サイズ

DOWAエコジャーナル > その道の人に聞く 記事一覧 > 秋田県 レアメタル等リサイクル資源特区への取り組み その1

その道の人に聞く記事一覧 ▶︎

秋田県 レアメタル等リサイクル資源特区への取り組み その1

秋田県産業労働部 資源エネルギー産業課
エコタウン班
田口 光弘(たぐち みつひろ)様

秋田県ホームページ
資源エネルギー産業課の業務案内
資源エネルギー産業課

あきたエコタウンセンターホームページ
エコタウンとは

資源エネルギー産業課エコタウン班は、秋田北部エコタウン計画の推進や、資源循環型産業創出・環境調和型産業推進等に関する業務を行っており、資源特区に対しては、環境調和型産業推進の一環として取り組んでいます。

今回のインタビューは、秋田県資源エネルギー産業課 田口 光弘(たぐち みつひろ)様に、秋田県が指定されているレアメタル等リサイクル資源特区について、お話を伺いました。

そもそも、総合特区とはどのような制度なのか、教えてください。

総合特区制度とは、成長戦略実現のための政策課題解決の突破口として平成23年に創設された制度であり、先駆的取組を行う実現可能性の高い区域に国と地域の政策資源を集中させるとともに、国が規制の特例措置や税制・財政・金融上の支援措置を総合的に実施することにより、産業の国際競争力の強化や地域の活性化を推進し、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図ることを目的とした制度です。

総合特別区域法(平成23年法律第81号)第11条及び第34条に基づき、総合特区ごとに設置される国と地方の協議会で、国と地域の協働プロジェクトとして推進されます。

総合特区には以下の2つのパターンがあります。

  1. 国際戦略総合特区
  2. 地域活性化総合特区


内閣官房内閣ホームページ 総合特区制度の概要より

ちなみに、特区制度として、「総合特区」とは別に「構造改革特区」という制度もあり、「総合特区」は複数の規制の特例措置に加え、税制・財政・金融上の支援措置などを総合的に実施するのに対して、「構造改革特区」は主として個別の規制の特例措置を対象とし、税制・財政・金融措置は対象としないという点に違いがあります。

また、最近話題になっていますが、「国家戦略特区」という制度が新たに創設され、「国家戦略特区」では、国が定めた国家戦略特別区域において、規制改革その他の施策を総合的かつ集中的に推進し、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することを目的としております。

総合特別区域に関しては、第一次指定申請が平成23年8月から始まり、秋田県は平成23年12月に第一次指定地域に決定されました。

秋田県では、何故、総合特区の指定を受けようと思ったのですか?

当時、家電リサイクル法などのリサイクル法対象外である携帯電話やデジタルカメラなどの使用済小型電子機器は、年間65万トン程度排出されていましたが、回収する法的な仕組みがなかったため、一部は海外に輸出され、多くは一般廃棄物として処分されているのが現状でした。

一方、秋田県では、かつての鉱山県としての製錬技術が培われ、関連施設が県北部を中心に集積しており、平成11年には国から「秋田県北部エコタウン計画」の承認を受け、家電リサイクル等の各種リサイクル事業が展開されています。

更に、秋田県では平成18年に全国に先駆けて使用済小型家電の回収試験を行っており、市町村を始め、県民からもリサイクルへの協力が得られる体制が整っていました。

そういった、リサイクルに関する環境が整っている本県において、廃棄物として処分されている使用済小型電子機器などのリサイクルを推進するため、総合特区に申請し、指定を受けることができました。

総合特区は、どれくらいの数が指定されているのですか?

特区と指定されたのは、48地域です。
国際戦略総合特区は7地域、地域活性化総合特区は41地域が指定されています。

【国際戦略総合特区】
No.国際戦略総合特区と地方公共団体等の名称
1北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区
(北海道、北海道札幌市、函館市、帯広市、江別市、河東郡音更町、士幌町、上士幌町、鹿追町、上川郡新得町、清水町、河西郡芽室町、中札内村、更別村、広尾郡大樹町、広尾町、中川郡幕別町、池田町、豊頃町、本別町、足寄郡足寄町、陸別町、十勝郡浦幌町、北海道経済連合会)
2つくば国際戦略総合特区〜つくばにおける科学技術の集積を活用したライフイノベーション・グリーンイノベーションの推進〜
(茨城県、茨城県つくば市、国立大学法人筑波大学)
3アジアヘッドクォーター特区
(東京都)
4京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区
(神奈川県、神奈川県横浜市、川崎市)
5アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区
(長野県、飯田市、長野県下伊那郡松川町、高森町、喬木村、豊丘村、岐阜県、岐阜市、大垣市、関市、美濃市、瑞浪市、恵那市、美濃加茂市、各務原市、可児市、郡上市、海津市、岐阜県羽島郡笠松町、不破郡垂井町、安八郡神戸町、安八町、加茂郡坂祝町、川辺町、可児郡御嵩町、静岡県、浜松市、愛知県、名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、半田市、春日井市、津島市、安城市、西尾市、犬山市、常滑市、小牧市、稲沢市、東海市、大府市、知多市、尾張旭市、豊明市、愛西市、清須市、北名古屋市、弥富市、みよし市、あま市、愛知県西春日井郡豊山町、丹羽郡大口町、海部郡蟹江町、飛島村、三重県、津市、伊勢市、松阪市、桑名市、鈴鹿市、いなべ市、三重県桑名郡木曽岬町、名古屋港管理組合)
6関西イノベーション国際戦略総合特区
(京都府、京都府京都市、大阪府、大阪府大阪市、兵庫県、兵庫県神戸市)
7グリーンアジア国際戦略総合特区
(福岡県、福岡県北九州市、福岡市)
【地域活性化総合特区】
No.地域活性化総合特区と地方公共団体等の名称
1札幌コンテンツ特区
(北海道札幌市)
2森林総合産業特区
(北海道下川町)
3レアメタル等リサイクル資源特区
(秋田県)
4栃木発再生可能エネルギービジネスモデル創造特区
(栃木県)
5畜産バイオマスの高効率エネルギー利用、炭化・灰化利用による環境調和型畜産振興特区
(群馬県)
6次世代自動車・スマートエネルギー特区
(埼玉県さいたま市)
7柏の葉キャンパス「公民学連携による自律した都市経営」特区
(千葉県柏市、三井不動産株式会社、スマートシティ企画株式会社、柏の葉アーバンデザインセンター、TXアントレプレナーパートナーズ)
8持続可能な中山間地域を目指す自立的地域コミュニティ創造特区
(新潟県長岡市)
9健幸長寿社会を創造するスマートウエルネスシティ総合特区
(新潟県見附市、福島県伊達市、新潟県新潟市、三条市、岐阜県岐阜市、大阪府高石市、兵庫県豊岡市、国立大学法人筑波大学、株式会社つくばウエルネスリサーチ)
10とやま地域共生型福祉推進特区
(富山県)
11ふじのくに先端医療総合特区
(静岡県)
12未来創造「新・ものづくり」特区
(静岡県浜松市)
13次世代エネルギー・モビリティ創造特区
(愛知県豊田市)
14京都市地域活性化総合特区
(京都府京都市、京都府)
15国際医療交流の拠点づくり「りんくうタウン・泉佐野市域」地域活性化総合特区
(大阪府、大阪府泉佐野市)
16あわじ環境未来島特区
(兵庫県、兵庫県洲本市、南あわじ市、淡路市)
17和歌山県「高野・熊野」文化・地域振興総合特区
(和歌山県)
18「森里海連環 高津川流域ふるさと構想」特区
(島根県益田地区広域市町村圏事務組合)
19たたらの里山再生特区(中山間地域における里山を活用した市民による地域再生の挑戦)
(島根県雲南市)
20ハイパー&グリーンイノベーション水島コンビナート総合特区
(岡山県)
21環境観光モデル都市づくり推進特区
(広島県)
22尾道地域医療連携推進特区
(広島県)
23次世代型農業生産構造確立特区
(山口県、山口県光市、柳井市、田布施町)
24かがわ医療福祉総合特区
(香川県)
25西条農業革新都市総合特区
(愛媛県西条市)
26東九州メディカルバレー構想特区(血液・血管医療を中心とした医療産業拠点づくり特区)
(大分県、宮崎県)
27競争力と持続力を持つ交流6次化モデルの構築特区
(山梨県南アルプス市)
28みえライフイノベーション総合特区
(三重県)
29鳥取発次世代社会モデル創造特区
(鳥取県)
30先導的な地域医療の活性化(ライフイノベーション)総合特区
(徳島県)
31中心市街地と田園地域が連携する高松コンパクト・エコシティ特区
(香川県高松市、高松丸亀町まちづくり株式会社、高松丸亀町商店街振興組合、特定非営利活動法人 農幸生活)
32椿による五島列島活性化特区
(長崎県五島市、新上五島町、長崎県)
33さがみロボット産業特区
(神奈川県)
34ふじのくに防災減災・地域成長モデル総合特区(内陸のフロンティアを拓く取組)
(静岡県)
35岡山型持続可能な社会経済モデル構築総合特区(AAAシティおかやま)
(岡山市)
36九州アジア観光アイランド総合特区
(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、福岡市、九州観光推進機構)
37ながさき海洋・環境産業拠点特区
(長崎県、長崎市、佐世保市、西海市)
38群馬がん治療技術地域活性化総合特区
(群馬県)
39地域の“ものづくり力”を活かした「滋賀健康創生」特区
(滋賀県)
40奈良公園観光地域活性化総合特区
(奈良県)
41千年の草原の継承と創造的活用総合特区
(熊本県阿蘇市、南小国町、小国町、産山村、高森町、南阿蘇村、西原村、山都町)

【出典】内閣官房地域活性化統合事務所 内閣府地域活性化推進室ホームページ 総合特区一覧

こうして見ると、ロボット、防災、観光、医療、環境など様々な分野のものがある事がわかります。
秋田県はこの表の3番目なのですが、東北地方で唯一の指定を受けております。

秋田県のレアメタル等リサイクル総合特区はどのような内容なのですか?

家電等金属系使用済製品のリサイクル推進によりレアメタル等金属資源供給基地の形成、県内リサイクル関連産業の振興、雇用創出及び県内経済の活性化、国内金属資源の安定確保、資源循環型社会の構築等を目指しています。
そのために、総合特区の規制の特例措置や財政・金融上の支援措置等を活用しながら、廃棄物の広域移動や効率的リサイクルの推進のほか、排出自治体等の処分コストや環境負荷の低減、トレーサビリティの確保、循環型社会形成の意識の向上に取り組んでおります。

総合特別区域法では、特区を推進するための計画策定、政策課題及び事業実施に関する事項について協議・決定する場として、地域協議会を設置することができることとなっており、本特区においては「レアメタル等リサイクル資源特区地域協議会」を設置し、産学官が連携して特区の推進に向けて取り組んでおります。

どのような取り組みをなさっているのですか?

特区では、実現目標として「家電等金属系使用済製品等のリサイクルの推進によるレアメタル等資源の集約、供給基地の形成」等を掲げ、平成29年3月末に約10,000t/年の家電等金属系使用済製品を県内に集約したいと考えていますが、その実現のためには、本特区以外の地域からの受け入れを強化する必要があることから、今後廃棄量の増加が予想される未利用資源のリサイクルシステム構築に向けた調査・検討を行っているほか、県独自の助成制度などにより、リサイクル関連事業者等の取り組みを支援しています。

また、総合特区制度において、地方公共団体は、あらゆる分野の国の規制・制度に関し、規制の特例措置などの提案をする事ができます。
対象は、規制改革、国の権限移譲、国の制度の見直しです。

使用済電気電子機器等のリサイクルに関しては、小型家電リサイクル法が施行されたことで、秋田県が提案していた規制改革はなされたものもあります。秋田県の提案も、小型家電リサイクル法に活かされたと考えております。

財政上の支援措置は、各省の予算制度を活用して行われますが、総合特区の特徴として、総合特区推進調整費というものがあります。平成25年度は124億円、平成26年度は95億円が計上されています。各省の予算制度を活用した上でなお不足する場合には各省の予算制度での対応が可能となるまでの間、「総合特区推進調整費」を各省に移し替えて機動的に補完する、というものです。

秋田県の総合特区では、平成25年に秋田エコプラッシュ株式会社が提案した「使用済小型家電プラスチックの高度選別による新型雨水貯留槽の製品化事業」がイノベーション実用化ベンチャー支援事業(NEDO)に採択されています。

また、平成26年7月には、一般財団法人秋田県資源技術開発機構、イー・アンド・イーソリューションズ株式会社及びDOWAエコシステム株式会社の3者で共同提案した「使用済み太陽光発電システムのリサイクル処理を安定的に実施するための課題調査」が、太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト(NEDO)に採択されました。

双方の事業とも、今後廃棄量の増加が予想される未利用資源にスポットを当てたものであり、新たなリサイクル産業の創出に向け、頑張っていただければと思いますし、特区としても支援していきたいと考えています。

金融上の支援措置は、総合特区支援利子補給金が、平成25年度は2.9億円、平成26年は4.4億円計上されています。この金融上の支援措置は、総合特区の推進に資する事業に必要な資金の金融機関からの借り入れに対して、予算の範囲内で「総合特区支援利子補給金」の支給を受けることができる、というものです。
特区の趣旨に合致する事業であれば、利子補給金の活用が可能で、例えば、土地を含む保管倉庫の建設、収集運搬車両や特殊車両の購入、設備導入や更新、改修なども活用できますので、是非、みなさんに活用して頂きたいと考えています。

その他、県独自の取り組みもされていると伺いましたが

秋田県では、環境・リサイクル産業支援のために独自の助成事業などを行っています。
事業内容や規模に応じて、様々な補助メニューを用意しておりますので、環境・リサイクルに関連する事業を秋田でお考えの方は、是非、ご相談ください。

特区の今後の方向性を教えてください。

総合特区では、毎年度、取組の進捗状況などについて、総合特区評価・調査検討会において評価することとなっており、平成24年度は、全体的な取組の進捗、内容及び今後の方向性が優れていると認められ、A評価をいただきました。
今後も、A評価をいただけるよう、特区制度における規制緩和や財政・金融支援措置を活用しながら、県独自でも助成制度等によりリサイクル事業者の支援を行い、秋田県のリサイクル産業の活性化に繋げていきたいと考えております。

ありがとうございました。

【参考資料】

内閣官房地域活性化統合事務所 内閣府地域活性化推進室ホームページ
総合特区一覧
【地域活性化総合特区】レアメタル等リサイクル資源特区【秋田県】
総合特別区域評価・調査検討会における評価結果(平成24年度)の概要
総合特区制度の概要

秋田県ホームページ
総合特別区域の第一次指定について(レアメタル等リサイクル資源特区)


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、特区のきっかけとなった、こでんリサイクルの実証実験の取り組みと、今後の取り組みについて、お話を伺います。


※ご意見・ご感想・ご質問はこちらのリンク先からお送りください。
ご氏名やメールアドレスを公表する事はありません。

▲このページの先頭へ

ページの先頭に戻る