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文献紹介「地球温暖化と感染症〜いま何がわかっているのか?〜」

今月は、2007年3月に環境省より発表された、「地球温暖化と感染症〜いま何がわかっているのか?〜」をご紹介します。

1. 背景

気候変化と健康に係るWHO報告書(2004年)、地球温暖化の影響と適応戦略に関する統合調査、地球環境研究総合推進費(温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の総合的評価に関する研究)による研究において、温暖化によって影響を受ける感染症等(感染症媒介蚊の生息域拡大、気温上昇による細菌増殖の活発化など)が明らかになってきていました。

出典:地球温暖化と感染症〜いま何がわかっているのか?〜

これを踏まえ、感染症を媒介する動物の蔓延など、地球温暖化による生態系の変化等で引き起こされる人の健康への危機について、広く国民に知見を提供し、関心を高めることにより、健康影響を極力防ぐとともに、温暖化問題への取組を促進するため、地球温暖化の影響と適応戦略に関する統合調査の一環として、「地球温暖化の感染症に係る影響に関する懇談会」が開催され、取りまとめられたものです。

2. パンフレットのポイント

○一般的に次のような条件があると、感染症にかかりやすくなる。

  • 病原体が人の体に侵入する数や機会が多い
  • 病原体を媒介する生物が多い
  • 病原体が進入しやすい居住空間や生活様式である
  • 公衆衛生状態がよくない

出典:地球温暖化と感染症〜いま何がわかっているのか?〜

○温暖化の進展により、日本脳炎、デング熱などを媒介する蚊など、媒介動物の分布が北方に拡大するとともに、個体数が増加する可能性がある。

○コレラのように汚染された水が原因となる水媒介性感染症は、特に上下水道の設備が不十分な途上国を中心として、温暖化が進むと水温が上がり、汚染の原因となる菌が増加し、悪影響が大きくなることが懸念される。

出典:地球温暖化と感染症〜いま何がわかっているのか?〜

○すでに、人を刺したり噛んだり、感染症を媒介するなどの“衛生害虫”の生息域が拡大していることが確認されている。例えば、強い毒を持つセアカゴケグモやどう猛なオオミツバチなど、海外から進入し、冬期の低温に弱いと言われる生物の分布が北上している。

○日本には侵入していないものの、世界各地で見られる感染症のうち、温暖化との関連の可能性が示唆されているものは次のとおり。

  • アフリカのリフトバレー熱は、蚊が媒介生物となるが、温暖化による雨量の増加により、蚊も増加し、人への感染の可能性も増加。
  • アメリカ大陸のハンタウィルス肺炎症候群は、ネズミが媒介生物となるが、温暖化による雨量の増加により、ネズミの餌が増加し、ネズミの数が増加。これにより人への感染の可能性も増加。
  • コレラ菌は海水中のプランクトンと共生している。海水温が上昇し、プランクトンが増殖すると、コレラ菌も増加することが予測される。

○日本での影響が懸念されるものは次のとおり。

  • 日本近海で、下痢や皮膚疾患などを起こすビブリオ・バルフィニカスという菌が検出される地域が、近年北上している。
  • デング熱を媒介するヒトスジシマカの分布域が年々北上している。

出典:(参考資料)デング熱流行のリスク地域拡大(環境省)

3. まとめ

日本においては、マラリアやデング熱といった感染症が、温暖化の進展によって、ただちに大規模な流行を起こすとか、感染するというものではありませんが、温暖化がもたらす媒介生物の分布域の拡大などにより、感染リスクが高まることが考えられるそうです。

詳しくは、パンフレットをダウンロードしてご覧ください。
地球温暖化と感染症に係る影響に関する懇談会「地球温暖化と感染症〜いま何がわかっているのか?〜」パンフレットの作成について(平成19年3月8日)

【関連資料】

感染症への地球温暖化影響(倉根一郎、2009 AIRIES)


上田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました

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