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そうだったのか!地球温暖化とその対策(10)
~第10回 長期低炭素ビジョン~

日本は、パリ協定を2016年の4月に署名し、2016年11月8日に受諾しました。
パリ協定では、今世紀全体を見据えた長期的な戦略の提出が求められています。
この低炭素社会に向けた長期的なビジョンのについて審議するために、2016年7月に「長期低炭素ビジョン小委員会(中央環境審議会 地球環境部会)」設置されました。
この小委員会で審議された「長期低炭素ビジョン」が2017年3月に環境省より公表されました。

これからシリーズで「長期低炭素ビジョン」を解説していきます。

【1】長期低炭素ビジョンの概要

第1章
科学的知見に基づく取組を基本としている気候変動問題について
第2章
パリ協定を踏まえた世界の潮流について
第3章
我が国の直面する経済・社会的課題について
第4章
第1章から第3章の事実関係を踏まえ、脱炭素社会の構築を見据えた長期大幅削減に向けた基本的考え方
第5章
世界全体での脱炭素社会の構築を見据え、その途中過程として我が国における2050年80%削減を実現する社会の絵姿
第6章
第5章の絵姿の実現に向けた政策の方向性について

今回は、長期低炭素ビジョンのキーワードを解説していきます。

【2】パリ協定の現状(7月末現在)

パリ協定は温暖化ガス総排出量に占める批准国の排出割合が55%を超えた2016年11月4日に発効しました。

  • 署名:195か国(未署名はシリア・ニカラグア・北朝鮮など13か国)
  • 批准:155か国(7月27日末現在(温暖化ガス総排出量に占める批准国の排出割合 約85%であり、未批准はロシア、イラン、トルコなど20か国程度))
  • ※条約への署名だけでは拘束力はなく、批准することによって拘束力を持ちます

UNFCC ホームページ
パリ協定批准状況

2017年6月4日にアメリカのトランプ大統領がパリ協定脱退を宣言しました。アメリカは世界2位の温暖化排出国であり世界の温暖化ガス排出の約16%を占めています。実際に脱退するとしても手続等が必要であり、すぐには脱退できませんがその去就は注視が必要です。

【3】カーボンバジェット

長期的低炭素ビジョンでは、まず気候変動の科学的知見について触れています。
その中でカーボンバジェットという言葉が出てきます。バジェットとは「予算」等の意味でよく使われますが、カーボンバジェットとは、まさに炭素の排出予算だと考えてください。

2℃目標達成のための炭素の排出予算(限度)は決まっております。これはおおよそ790Gt(Gt=億t)と言われており、これを超えると気温上昇が2℃に達するとされています。つまり排出総量を790Gt以下に抑えることができれば、66%超の可能性で気温上昇2℃以下に抑制できるとされているのです。

注意:
790Gtは炭素の排出量であり、二酸化炭素の排出量ではありません。文献や資料によって、炭素量で表記されていたり、二酸化炭素量で表記されていたりしますので注意が必要です。

環境省ホームページ
IPCC 第5次評価報告書の概要

2011年までに790Gtのカーボンバジェットのうち515Gtを消費したと言われております。(残りのカーボンバジェットは275Gtとなります。)これにIEAのデータで最新の2014年分まで加えると下の図になります。


筆者がJapan-CLPのデータを元にIEAのデータを加えて作成

2014年までの累積排出量(カーボンバジェット)は541Gtでしたので、残るカーボンバジェットは249Gtとなります。年々増加している排出量を10Gt/年で維持できたとしても249÷10≒25年となり、2014年+25年=2039年となり、2039年には2℃を突破してしまいます。

2017年現在では、残りのカーボンバジェットは22年分しかありません。排出量が増大している今日では、22年もないかもしれません。早急な温暖化ガス大幅削減対策に取り組む必要性があります。

【関連記事】

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第8回 気候枠組条約締約国会議(COP21)について

次回は、削減目標について解説いたします。

【参考資料】

IEAホームページ
CO2 emissions from fuel combustion

この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
三戸 が担当しました

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