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IPCCの第5次評価報告書統合報告書について

今回は2014年秋に発表されましたIPCCの第5次評価報告書統合報告書について説明いたします。

【1】IPCCと作業部会について

そうだったのか!地球温暖化とその対策(7)~IPCC総会(横浜、ベルリン)報告~で説明しましたが、IPCCとは、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)」の略称であり、1988年に国連環境計画(UNEP:the united nations environment program)と世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)によって、地球規模での気候変動に対する国際的な政策決定の基礎となる研究を行うために設立されました。

IPCCは、以下のような3つの作業部会からなります。
(さらに国別温室効果ガスインベントリ・タスクフォースというプロジェクトチームも存在し、インベントリ作成(≒各国のデータを統計)の監督等を業務としています。)

組織 役割
第1作業部会 気候システムと気候変動に関する科学的局面からの評価
第2作業部会 気候変動が与える影響やそれに対する脆弱性の評価
第3作業部会 気候変動抑制のための知見や対応評価

これらの3つの作業部会がそれぞれの目的で研究・調査し、作業部会単位で報告書を作成しています。

■IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠に関する報告)

2013年9月 第1作業部会第12回会合(ストックホルム)にて審議
2013年9月 第36回IPCC総会(ストックホルム)にて承認
2013年9月 IPCCより公表

■IPCC第5次評価報告書第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性に関する報告)

2014年3月 第2作業部会第10回会合(横浜)にて審議
2014年3月 第38回IPCC総会(横浜)にて承認
2014年3月 IPCCより公表

■IPCC第5次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和に関する報告)

2014年4月 第3作業部会第12回会合(ベルリン)にて審議
2014年4月 第39回IPCC総会(ベルリン)にて承認
2014年4月 IPCCより公表

このように各作業部会会合にて提出された各報告書が、総会での承認を得て公表されます。これらの各作業部会の報告書を統合したものが、今回のIPCC第5次評価報告書統合報告書です。

■IPCC第5次評価報告書統合報告書

2014年10月 第40回IPCC総会(コペンハーゲン)にて承認
2014年11月 IPCCより公表

【2】IPCC第5次評価報告書統合報告書(IPCC AR5)の内容について

1)第1作業部会

第1作業部会(自然科学的根拠に関する報告)は、過去から現在の観測データを下に、温暖化仕組みや状況を科学的根拠を元に実証し、未来の予測をする部会です。

第5次報告書における主な報告


出典 IPCC AR5 WGⅠ SPM Fig.SPM.1 に環境省が加筆したもの
URL http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf


出典 IPCC第3次~第5次評価報告書
URL http://ipcc.ch/

■観測事実

  • 最近30年間の10年平均は、1850年以降で最高である。
  • CO2濃度は約2ppm/年程度で上昇している。
  • 温暖化エネルギーの90%を海洋(表層水・深層水ともに)が蓄えている可能性が高く、海洋温度が上昇している。
  • 様々なデータから気候システムの温暖化は疑う余地がない。

■要因

  • 温暖化は人間活動による温暖化ガス増加などの人為的原因の可能性が極めて高い
  • 太陽放射(太陽の活動)の変化はほとんど寄与していない。

■将来予測


出典
IPCC AR5 WGⅡ SPM Assessment Box SPM.1 Fig.1
に環境省が加筆したもの
URL http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/
ar5_wg2_overview_presentation.pdf

  • 1986年からの30年を基準とすると2016年から20年間の世界平均気温の変化は、0.3~0.7℃である。
  • 同様に2081年~2100年に期間では、それまで温暖化ガス排出シナリオによって異なるが0.3℃~4.8℃の範囲に収まる可能性が高い。(有効な温暖化対策が実施されば低くなり、できなければ高くなる)
  • その結果、以下が予測される。
    • 陸上で極端な高温の頻度が増加
    • 中緯度の大陸での湿潤な熱帯域において極端な降水がより強く、頻繁も増加。
  • 二酸化炭素を吸収し、海洋の酸性化が進む。

2)第2作業部会

第2作業部会(影響、適応、脆弱性に関する報告)は、気候変動によって実際に現れている影響やその適応策についての評価を行う部会です。

第5次報告書における主な報告


出典 IPCC WGⅡAR5 Summary for Policymakers
URL http://ipcc.ch/

ここで挙げられている影響以下の通りである。

  1. 物理システム
    氷河、雪、氷、永久凍土の融解
    河川、湖における洪水や干ばつの発生
    沿岸浸食、海面水位の影響
  2. 生物システム
    陸域生態系への影響
    火災の発生(森林火災の増加)
    海洋生態系への影響(海洋生物が低水温域へ移動)
  3. 人間および管理システム
    食料生産(作物収量の低下)
    生計、健康、経済への影響(暑熱による志望の増加・貧困者への影響)

これらに対して、国際、地域、国、地方レベルで様々な適応への計画が組み込まれつつあるが、まだ限定的である。
統合的水資源管理、早期警報システム、作付け作物の多様化、再生林などの取り組みは、気候変動リスクを減少させることができる
また、将来の主要なリスク「気候システムに対する危険な人為的干渉」として、以下の8つが挙げられている。

  1. 高潮、沿岸域の氾濫及び海面水位上昇による、沿岸の低地並びに小島嶼開発途上国及びその他の小島嶼における死亡、負傷、健康障害、生計崩壊のリスク
  2. いくつかの地域における内陸洪水による大都市住民の深刻な健康障害や生計崩壊のリスク
  3. 極端な気象現象が、電気、水供給並びに保健及び緊急サービスのようなインフラ網や重要なサービスの機能停止をもたらすことによるシステムのリスク
  4. 特に脆弱な都市住民及び都市域又は農村域の屋外労働者についての、極端な暑熱期間における死亡及び罹病のリスク
  5. 特に都市及び農村におけるより貧しい住民にとっての、温暖化、干ばつ、洪水、降水の変動及び極端現象に伴う食料不足や食料システム崩壊のリスク
  6. 特に半乾燥地域において最小限の資本しか持たない農民や牧畜民にとっての、飲料水及び灌漑用水の不十分な利用可能性、並びに農業生産性の低下によって農村の生計や収入を損失するリスク
  7. 特に熱帯と北極圏の漁業コミュニティにおいて、沿岸部の人々の生計を支える、海洋・沿岸生態系と生物多様性、生態系の財・機能・サービスが失われるリスク
  8. 人々の生計を支える陸域及び内水の生態系と生物多様性、生態系の財・機能・サービスが失われるリスク

以上のようなリスクが挙げられているが、実際の現象としては以下のような事例が挙げられている。

  • 乾燥亜熱帯の再生可能な地表水、地下水が著しく減少する
  • 陸域、淡水生態系において、生息地の改変、乱獲、汚染、侵入生物等の影響による絶滅の拡大
  • 低平地への侵食、沿岸域の氾濫、海岸侵食、洪水の発生
  • 植物プランクトンへの影響、極域生態系やサンゴ礁への影響
  • 農業(食料生産)への影響(減収)
  • ヒートアイランド効果も含め、都市域の気温上昇
  • 干ばつ・水不足による食料供給、水力発電が不安定、水系感染症の増大など
  • 人口が集中している沿岸平野部へ影響(洪水・浸食など)
  • 気候変動に伴う経済損失の発生(推計は困難)
  • 健康被害(食料不足、暑熱、労働衛生など)

これらに対する適応の計画(温室効果ガスの排出を抑制し、温暖化影響に対して、自然や社会のあり方を調整する)立案は、個人から政府まで、あらゆる層に渡る補完的な行動を通じて強化されうる、としている。

3)第3作業部会

第3作業部会(気候変動緩和に関する報告)は、科学的・技術的・環境的・経済的・社会的観点から気候変動を緩和すための知見について分析を行う部会です。

第5次報告書における主な報告


出典 IPCC AR5 WGⅢ SPM Fig. SPM.1を環境省が翻訳したもの
URL http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg3_overview_presentation.pdf

  • GHGガスの78%はCO2である。
    • 特に最近10年間は、大幅に増加している
    • 1750年(産業革命)~2010年までの累積CO2排出量の約半分は1970年以降に排出されたものである。つまり、
      1750~1970年の220年間のCO2排出量≒1970~2010年の40年間のCO2排出量
  • 人口増と経済成長がCO2排出の最大の要因
  • 世界規模での人口増と経済活動の成長に対して、現在のようなGHG排出が続けば、全部門での排出量は増加しつづけ、2100年には、産業革命以前(1750年以前)と比較し、3.7~4.8℃気温が上昇する。
  • 輸送部門の排出が急速に増えている


出典 IPCC AR5 WG3 SPM Fig. SPM.2を環境省が加筆
URL http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg3_overview_presentation.pdf

【3】将来予測

  • 2100年において、気温上昇を産業革命以前比で2℃以下に抑えることが重要であり、そのためには、CO2濃度は450ppmに抑える必要がある。(2011年 390.5ppm)
  • この達成には、2010年比で世界のGHG排出量は、40~70%と低い水準にしなければならない。
  • そのためには、エネルギーシステムと潜在的な土地利用を大規模に変化させることが必要
    再生可能エネルギー、原子力エネルギー、二酸化炭素回収・貯留を伴う化石エネルギー利用・バイオマスエネルギーなでのゼロカーボン・低炭素エネルギーの普及が必要である。
    既存の石炭火力発電所を最新の高効率天然ガス複合発電所や熱供給発電に置き換えることも効果的。
  • これらの取り組みが遅延されれば、達成への選択肢が狭まる。

以上のように、各作業部会の第5次評価報告書公開後に行われた研究と調査結果が各作業グループから示され、またその間にも気候変動は進みリスクが高まっていることを第5次評価報告書統合報告書では示しています。IPCC第5次評価報告書は、世界規模での早急な取り組みの必要性を訴えかけています。


この記事は
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
三戸 が担当しました

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