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人口2万人 イタリアのある町のごみ収集事情

ローマから南に30キロほどのところにあるロッカ・ディ・パーパ。標高750メートルに位置する町です。左手にはローマ教皇の夏の離宮カステル・ガンドルフォが見えます。

ローマやナポリなど、イタリアの大都市では景観を汚すようなごみ事情がニュースになったことが何度かありました。しかし、郊外の小都市のごみ収集事情は決して悪くありません。ローマから30キロほど南にある人口2万人の町ロッカ・ディ・パーパのごみ収集事情をご報告いたします。

■居住権がある家庭へ分配されるもの

1世帯に1枚配布されるエコカード。これが、ごみ収集のベースとなります。

この町の住民となると、1世帯に1枚エコカードが配布されます。磁気になっているこのカードを使用して、町に数か所ある自動販売機からごみ袋を入手できます(すべて無料)。

これがごみ袋無料配布の機械。イタリアらしく、時々壊れます。

エコカードとともに無料で配布されるごみ箱がこちらです。
配布されるごみ箱は左から「生ゴミ」「紙ごみ」「燃えるゴミ」「ガラスと缶類」。
ごみの収集日に玄関前にこのごみ箱を置いておくと、早朝に担当員が回収してくれる仕組みです。

電池や蛍光灯、危険物は、郊外にあるごみ収集場(Isola Ecologica)に持参する必要があります。また、期限が切れた薬は薬局や市役所の前にある専用のボックスに廃棄することも可能です。ただ薬に関しては、住民の多くは「燃えるゴミ」で処理しています。

そのほか、市内にはいくつかのごみ関連ボックスが設置されています。

こちらが使用済みの油回収ボックス。プラスチックの瓶などに入れて廃棄します。復活祭やクリスマスの時期、各家庭で大量の揚げ物をするので外にあふれることもあります。

こちらは使用しなくなった衣類や靴の回収用。しっかりと袋に入れて閉じて専用ボックスに投入。これらの衣類は、使用可能なものは貧困に悩む国に送られています。

こちらは犬のフンの回収ボックスです。

■通常のごみ収集事情

市役所から配布されるごみ収集日の情報です。
生ごみに関しては、月・金曜日(5月から9月は水曜日も回収あり)。
火曜日がプラスチックごみ、水曜日が紙ごみ、木曜日がガラスとメタリック類、土曜日が燃えるゴミとなっています。

私が住んでいるのは「歴史地区」と呼ばれる地域で、山の斜面に位置しています。そのため、車の乗り入れができません。回収担当の方は、小回りの利く小型トラックで道路が続くところまで乗り入れて、その後は徒歩で坂の上り下りをしながらごみの回収をしているのです。

その昔はロバが移動手段であったという狭い道が多い町。

Covid-19の感染が拡大し始めたころ、市役所のFBアカウントに「コロナ陽性、あるいは陽性の可能性のため自宅待機中のごみの捨て方」がアナウンスされました。

Gestione e raccolta dei rifiuti provenienti da abitazioni in cui sono presenti soggetti positivi al covid-19 in isolamento o quarantena obbligatoria - Comunicazioni - Comune di Rocca di Papa : Comune di Rocca di Papa

それによると、コロナ陽性あるいはその可能性がある家庭にかぎり、ごみの回収は火・金の2回に限定されます。通常のごみはすべて「燃えるゴミ」扱いとし、袋は2重にするようにとあります。とくに、手袋やマスクなど使い捨てのごみは回収担当員に考慮してごみ袋の外に絶対に出ないようにと強調しています。また、ごみ箱も市役所から配布されたものではなく、ペダル付きで足での開閉が可能なものを使うようにと記されていました。

■粗大ごみの収集事情

それでは、通常のごみの扱いではない粗大ごみはどうでしょうか。

粗大ごみは、郊外にあるごみ収集所に持っていきエコカードを見せれば簡単に捨てることができます。危険物や電池はまとめてここに持っていくことが多いです。

また使わなくなった家具などごみ収集所に持っていくのが難しいものに関しては、市役所の担当部署に連絡します。するとあちらから暗証番号と廃棄する日が伝えられます。その日に廃棄したいものを玄関前に置き暗証番号を紙に書いて貼っておくと、無料で回収してくれます。

■生ごみの袋はオーガニック

こちらがエコカードを使って町の自動販売機から入手したごみ袋。この日は残念ながら、燃えるごみ用の袋は品切れ中でした。右から、プラごみ用、紙ごみ用、そして生ごみ用となっています。

この生ごみ用の袋は、トウモロコシやジャガイモのでんぷん、繊維、乳酸、木材など自然の素材のみで作られています。生ごみとともに自然に戻っていくオーガニック素材なのですが、そのぶん脆弱でスイカの皮など重いごみを入れるとすぐに破損してしまいます。

そのため、通常は2重にして使用しています。また、スーパーの袋も2018年1月からの法令でこのオーガニックの袋のみが使用可能となりました。日本と同じく、イタリア人もエコバッグを持参しますが、そうでない人はこのオーガニックの袋を10セント(約12円)で購入します。少し高額に思えますが、自宅で生ごみを捨てる時に再利用できるため購入時に文句を言う人はほとんどいません。

自然の素材だけでできた袋。左がスーパーの袋、右は市から配布されるタイプ。いずれも重いごみを入れるとすぐに破けてしまう脆弱性がデメリット。

生ごみに入れてよいのは、「果物、野菜、肉、魚、骨、卵、パスタ、パン、クッキー、クラッカー、灰」という表示が。

■まとめ

少しいい加減なイタリアのイメージとは裏腹に、私が住む郊外にある小都市のごみ収集事情はとてもよく機能しています。大都市と違い、石畳が残る趣ある小都市では街の景観を守るためにもごみ事情の徹底が官民ともに進められているようです。


この記事は
エコジャーナルサポーター イタリア在住
井澤 佐知子 が担当しました

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