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熱処理および破砕選別を用いたリチウムイオン二次電池からの資源回収

今回は、2018年9月12日~14日に開催された、第29回廃棄物資源循環学会研究発表会にて口頭発表した演題をご紹介します。

1. はじめに

リチウムイオン電池(以下、LIBという)は小型、軽量、高電圧等と言った特徴から、ノートパソコン、スマートフォンなどのモバイル機器に広く使用されており、近年は自動車用バッテリーなどにも使用され、その用途はさらに広がりを見せている。その反面、廃棄物として発生するLIBや生産工程から発生する工程屑等が将来大幅に増加する予測を各所発表しており1)、今後の廃棄されるLIBの取扱いは現状の課題である。

LIBはリチウムイオンの移動によって充電や放電を行う二次電池で、資源として回収を求められる有価金属が相当量含まれている。しかし再資源化の取扱いにあたっては、LIBのエネルギー密度が高いために解体作業時の感電リスクや、有機溶剤の電解液が揮発し発火事故を起こす恐れもあり、経済的に有価物を回収することは容易ではない。

そこで今回は、既に商業利用されている産業廃棄物の中間処理施設(焼却)を用いて、安全かつ経済性の高いLIBの熱処理(無害化)プロセス、および無害化された処理後物の破砕選別により資源回収を行うプロセスの検討を行った。

2. LIBの一般的な構造


図1 LIB構成部材の概略図
引用:一般社団法人 電池工業会ホームページ
LIBの構成部材の概略図を図1に示す。LIBは、Fを含んだ電解液を含浸させたセパレータで仕切られた正極板及び負極板を渦巻状または積層構造にして、負極端子を兼ねたスチール製のケースに収められている。正極板及び負極板はそれぞれ正極端子、負極端子に接続され、正極端子と負極端子は樹脂製のガスケット及び絶縁板で絶縁されている。資源価値が高い物として負極集電体にはCuが、正極集電体にはAl、そのバインダーとしてNi、Co、Li等の酸化物が用いられている。

3. 処理プロセス

■3-1 産業廃棄物焼却工場の処理プロセスを用いた熱処理


図2 DOWAの国内廃棄物処理拠点
弊社の国内廃棄物処理拠点を図2に示す。
焼却施設においてはLIBの処理実績もあり、今後の発生量増加に伴い相当量の熱処理が可能と考えている。
今回はこの中のエコシステム秋田の2号炉の多目的処理炉という固定床炉を用いて車載用LIBパックの熱処理を行った。エコシステム秋田(株)2号炉フロー図を図3に、多目的処理炉の外観を図4に示す。

左:図3 エコシステム秋田(株) 2号炉処理フロー図 / 右:図4 多目的処理炉外観

その多目的処理炉の仕様としては、実寸法は直径3.1m、高さ4.1mの円柱状で、間口の都合の投入可能な寸法は約1.5mの立方体以下のサイズとなる。加熱装置には灯油等の燃料を噴霧するバーナーと廃棄物を噴霧するバーナーが設置されている。

熱処理条件は、焼成温度800~900℃、昇温/保持=20分/1時間とし、燃焼空気量はバーナー燃料の燃焼に必要な量のみの低酸素濃度雰囲気とした。低酸素濃度雰囲気下で行うことは、酸化による負極集電体のCuの脆化を防ぐためである2)

ここで熱処理を行う目的としては、①外装容器やモジュール構成部材由来のAlを溶融させ分離回収、②正極集電体由来のAlを脆化させ、破砕分級で除去、③バインダーを分解し、活物質と集電体を相互分離可能な状態とすることの3点である。

■3-2 LIB熱処理後物の破砕選別


図5 破砕選別プロセスフロー図
LIB熱処理後物の破砕選別プロセスフローを図5に示す。
まず熱処理後物の手選別を行い、溶融Aと外装を取り除きモジュール単位まで分解した。場合によってセルを切断する必要があると想定されるが、今回は実施していない。
手選別後のモジュールを衝撃式破砕機で破砕した。次にその破砕物を1.2mmメッシュの篩で篩上(FeスクラップとCu濃縮物の混合物)と篩下(細粒産物)の分離を行った。最後に篩上のFeスクラップとCu濃縮物の混合物を磁選し、FeスクラップとCu濃縮物に分離した。破砕選別時に発生する粉じんはバグフィルターで吸引し集塵ダストとして回収し、集塵ダストと細粒産物を合せて残渣として品質の確認を行った。

4. 試験結果及び考察

■4-1 産業廃棄物焼却工場の処理プロセスを用いた熱処理結果及び考察

熱処理後にはLIB熱処理後物と溶融Alに分離された状態となった。そのLIB熱処理後物と溶融Alを図6と図7に示す。溶融AlはAl品位99.5%の高品位で回収できた。

左から:図6 LIB熱処理後物 / 図7 溶融Al

表1 熱処理前後の重量比
熱処理前後でのLIBの重量変化を表1に示す。絶縁体等の可燃物除去、外装容器やモジュール構成部材のアルミが分離できたことによって熱処理後の重量減少は約49%となり、同時に放電が完了した状態であることが確認された。
これをもって作業者が直接LIBに触れることなく熱処理を施し放電及び電解液が除去できたことで、解体作業における感電および発火のリスクを取り除くことができたと考えられる。

■4-2 熱処理後LIBの破砕選別結果及び考察

LIB熱処理後物をモジュール単位で破砕選別して得られた回収物(Cu濃縮物、Feスクラップ及び残渣)を図8~図10に、回収物のそれぞれの重量および比率を表2に示す。

左から:図8 Cu濃縮物 / 図9 Feスクラップ / 図10 残渣

表2 回収物重量および比率
負極集電体に使用されている箔状の銅を1.2mmオーバーの銅濃縮物として回収できた。これは熱処理を低酸素雰囲気下で行ったことに加え、熱処理時にパック等の有姿で熱処理を施す事で銅の酸化を防いだことが寄与したため、銅が破砕時に微粉化しないほどの強度を保っていたことによって回収率向上に繋がったと考えられる。

表3 回収物品位
銅濃縮物と残渣の品位を表3に示す。銅濃縮物の銅品位は約85%と高品位であり、残渣にはLi2.4%、CoとNiで約11%含まれていることが確認でき、これらは製錬原料等に利用できる品質であることが確認できた。銅濃縮物、残渣ともにAlを数%含んでおり、LIBの正極集電体由来のAlが移行したものと考えられる。
ここまでの結果をもって、本試験では、バーナー燃焼という簡易的な低酸素雰囲気調整手法を用いた熱処理により、後段の破砕選別において各種有価物を効率的に分離回収できる状態にできる事を実証した。

5. まとめ

既に商業利用している産業廃棄物の焼却施設を用いた熱処理プロセスは、未解体でLIBパックに熱処理を施すことでき、可燃物を除去し、荷電状態も解かれるため感電および発火のリスクを極めて低くすることができることから、資源回収を行う上で非常に安全性の高いプロセスであると言える。


図11 エコシステム秋田(株)3号炉加熱炉外観
また、今回試験を行った多目的処理炉以外にも類似設備を有す焼却施設の一例として、エコシステム秋田(株)の3号炉の加熱炉外観とフロー図、エコシステム山陽(株)のフロー図を図11~13に示す。これらは今回試験を行った多目的処理炉よりも大型の物となっており、既に利用されている産業廃棄物焼却工場を使用することは今後有効な方法であると考える。

図12 エコシステム秋田(株) 3号炉フロー図

図13 エコシステム山陽(株) 2号炉フロー図

車載用LIBに焼成温度800~900℃の低酸素濃度条件下で熱処理を施すことで、Cuを脆化させず外装Alを溶融分離させ、正極集電体由来のAlを脆化させることができ、後段の破砕選別工程でCu等の回収率及び品質を向上させることができる。

破砕選別工程ではCuを高品位で回収することができ、回収された残渣に含まれるLi、CoおよびNiは製錬原料等に利用できる品質であることが確認できた。

6. 引用文献・参考文献

1)
一般社団法人日本自動車工業会:次世代車の適正処理、再資源化の取組み状況、平成28年度産構審・中環審 合同会議資料(2016)
2)
西川千尋、本間善弘、中島教夫、鎌田雅美、川上智:車載用リチウムイオン二次電池からの有価物回収を目的とした熱処理条件の検討、資源・素材講演集、Vol.4、No.2、1701-10-01(2017)

多田 この記事は
DOWAエコシステム ウェステック営業本部
多田 が担当しました

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