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廃太陽光発電パネルの広域収集網導入のモデル事業(2年次)

■はじめに

2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)開始後、日本では太陽光発電(英語で「Photovoltaics」と言うため、以下、「PV」)パネルの導入が加速され、例えば、2014年度のPVの導入量は、2010年度のそれに比べて、約8倍となりました。将来、これまでに導入されたPVパネルが廃棄物として排出されることになるため、今からその対応を検討しておくことは重要です。

DOWAエコシステムグループのイー・アンド・イー ソリューションズが、以下の「廃PVパネルの収集網導入のモデル事業」を行いましたので、その概要をご紹介します。

事業名:
環境省事業「平成28年度地域循環拠点(エコタウン等)高度化モデル
(廃太陽光発電パネルの広域収集網の連携に係るモデル事業)」
事業実施期間:
2016年8月5日から2017年3月10日まで

イー・アンド・イー ソリューションズは、環境コンサルティングサービスを提供する企業です。DOWAエコジャーナルの「環境コンサルってなに? ~イー・アンド・イー ソリューションズ~」のコーナーでは最近連載で同社の紹介が行われていますが、同社は、官公庁のお客様に対して、モデル事業の実施、その結果に基づく課題の整理等に係るサービスも提供しています。

■将来の社会課題~廃PVパネルの適正処理~

まず、現状を図1を使って説明します。我が国でのPVの導入実績は、2010年度は1,100MW/年であったのに対して、その5年後の2014年度は9,200MW/年となりました。累積導入量で見ると、2014年度末時点で27,000MWであり、うち住宅用PVは11,000MWです。

廃PVパネルの排出予想については、環境省が行っています。それによると、PVパネルの製品寿命を25年と仮定し、かつ、製品寿命を迎えた段階ですべて廃棄物として排出されると仮定した場合、2020年には2,800トン/年、2039年には780,000トン/年の廃PVパネルが排出される見込みです。なお、個人の住宅に設置されているPVであっても、工務店等に撤去工事を依頼することがほとんどであると考えられるため、我が国の法制度の下では、廃PVパネルは産業廃棄物として排出される事となります。

我が国では、一定期間に産業廃棄物の排出量が急上昇する経験がないため、将来廃PVパネルの排出量が急増した際に、廃PVパネルの適正処理が問題なく行われるように、今の段階から、その収集、運搬、リサイクル、最終処分のあり方について、検討しておくことが重要です。


図1 我が国でのPVの導入実績と排出予想に関するイメージ

  1. 左側の縦軸は太陽光発電設備導入量を、右側の縦軸は排出見込量を表す。
  2. 横軸について、太陽光発電設備導入量の横軸は年度を、排出見込量の横軸は年を表す。
  3. 太陽光発電設備導入量は、「エネルギー白書2016」を参照した。
  4. 排出見込量は、「太陽光発電設備等のリユース・リサイクル・適正処分に関する報告書」(2014年度、環境省)の太陽光発電パネルの寿命を25年とした場合の全国の排出見込量を参照した。

(出典)各種公表資料からイー・アンド・イー ソリューションズが作成

■モデル事業の概要

1. 着目した課題

現状、我が国の廃PVパネルは、(1)PVパネルのメーカー(製造者)、(2)設置業者、(3)家屋解体業者の3つに大別できる排出ルートから排出されていると考えられます(図2参照)。

製造者から排出される廃PVパネル(工程スクラップを含む)は、製造者の下で一定量保管された後に、産業廃棄物処理業者に引き渡されていると考えられるため、効率的な運搬・処分や可能な限りの素材の再資源化への取組みが行われていると推測されます。

一方、設置業者または解体業者から排出される廃PVパネル、特に、寿命到来や解体工事に伴い住宅から排出される廃PVパネルは、他の産業廃棄物と区別されることなく、産業廃棄物処理業者に引き取られていると推測されます。

設置業者または解体業者から排出される廃PVパネルの処理の現状で懸念されるのは、労働者の安全衛生です。廃PVパネルは、これまで静脈側(産業廃棄物の収集、運搬、処分)の業界で扱われてこなかった種類の廃棄物であるため、その取扱いに関する知識が不足しています。特に、廃PVパネルは、パネルへの光照射に起因する感電のおそれを内包するため、その配慮が必要です。

また、資源の有効利用の観点もあります。市場シェアの大半を占めるシリコン系のPVパネルは、異なるメーカーのものでも概ね同じ素材で構成されているため、一定の量を確保できれば、素材の再資源化の効率化を図ることができます。現状のままでは、設置業者または解体業者から排出される廃PVパネルの再資源化の促進は、困難と思われます。

2014年度末時点で住宅用PVは11,000MWが導入済みで、将来、寿命到来や住宅解体で、これらPVパネルが廃棄物となることが予想されています。設置業者または解体業者が、いざPVパネルを廃棄しなければならなくなったとき、安心してその処理を任すことのできる収集網を、われわれは今から準備しておくべきでしょう。

以上より、本モデル事業では、設置業者及び解体業者から排出される廃PVパネルの収集網の構築を目指し、種々の取組みを行いました。


図2 廃PVパネルの排出形態と排出ルート

※ 「○」(該当)、「×」(非該当)は、既往知見に基づき、当排出ルートに該当する排出形態をイー・アンド・イー ソリューションズにて評価した結果を表す。
(出典)各種公表資料からイー・アンド・イー ソリューションズが作成

2. 実施内容

2-1: 2015年度の実施内容

2015年度に、設置業者・解体業者から排出される廃PVパネルに着目し、東北地域で廃PVパネルの収集網導入に係るモデル事業を実施しました。その概要は、当エコジャーナルの2016年4月1日号に掲載したとおりです。

【関連記事】
2016/4月号:廃太陽光発電パネルの広域収集網導入のモデル事業

2-2: 2016年度の実施内容

2016年度は、2015年度の成果を踏まえて、収集対象地域を廃PVパネルの排出ポテンシャルの高い九州地域に拡張してモデル事業を実施しました。モデル事業の内容は以下のとおりです。

  • 欧州で廃PVパネルの収集網の操業を実際に行っているPV CYCLE社から、かれらが使用している廃PVパネル専用収集ボックスを60個入手しました。
  • モデル事業に賛同して頂いた、東北の計15事業所及び九州の計18事業所に収集ボックスを配置し、廃PVパネルの収集ポイントとしました。
  • 収集ポイントでは、持ち込まれた廃PVパネルを受入れ、収集ボックスに保管しました。
  • 収集ボックスが廃PVパネルで満杯になったら、収集ボックスを秋田県または福岡県のリサイクル施設まで運搬し、適正に処理します。
  • 一回の持込量が収集ボックスの保管容量(概ね40枚)を超える場合は、リサイクル施設で直接引き取りました。

なお、PV CYCLE社の収集ボックスは、遮光効果(発電防止措置)を持つとともに、蓋で密閉でき、内容物の飛散流出防止(破損ガラスでのけがの発生予防措置)等、安全面への配慮がなされています。


図3 2016年度モデル事業の実施内容

(出典)各種資料に基づきイー・アンド・イー ソリューションズが作成

協力事業者の募集や地方自治体への説明等に時間を要したため、実際に収集を行った期間は東北地域では5か月間程度で、九州地域では2か月程度でした。

収集結果は次のとおりでした。

  • 東北地域:約30枚
  • 九州地域:約200枚

3. 得られた成果

2016年度のモデル事業で得られた成果は以下のとおりまとめられます。

  • PVの導入量の多い九州では、そうでない東北に比べて、廃PVパネルが多く収集されました。この他、九州は、東北に比べて広報を積極的に行っていたため、収集量の差は、広報の程度にも影響されたと考えられました。
  • PVパネルのリユース業者との意見交換も行いました。結果、現在、PVパネルについては、リユース市場が活発であるとの知見を得ました。したがって、現時点で、廃棄されるPVパネルの数量が少ないため、リサイクル・適正処理の事業化は難しいと考えられました。

現在、PVパネルについては、リユース市場が活発で、廃棄されている量は多くはありませんが、いずれ、リサイクル・適正処理のニーズが社会的に高まるものと考えられます。イー・アンド・イー ソリューションズは、将来廃PVパネルが大量に排出されることになっても、廃PVパネルの適正処理が問題なく行われるように、今後も、各種モデル事業の実施や情報の収集・整理などを行っていく所存です。

【参考資料】

PV CYCLEホームページ


石塚 この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ
石塚 が担当しました

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