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マイクロバブル・オゾン工法

今回は、土壌地下水汚染対策手法の1つである、マイクロバブル・オゾン工法についてご紹介します。

1. マイクロバブル・オゾン工法について

1. 1 オゾンによる汚染物質の分解反応

土壌地下水汚染対策における化学的酸化分解法としてはフェントン法が良く知られている。しかし、現地への大量の薬品運搬が必要であることに加え、多量の沈殿物が発生するために注入薬剤が十分に浸透しなくなる可能性が考えられる。一方で、次に示すようにオゾンには注入薬剤として最適な特徴がある2)

  1. 強力な酸化力を持ちながら、最終的には自己分解して残留による毒性の無い酸素に戻ること。
  2. オゾンが分解した後に残る酸素によって、好気性バイオレメディエーションが期待できること。
  3. 電気さえあればオンサイトで簡単につくることができる手軽さがあること。

マイクロバブル・オゾン工法では、オゾンガスを直接地下に注入するのではなく、オゾンガスを水中に加圧溶解させたマイクロバブル水として注入する。図1にオゾンガスを水中に混合溶解する仕組みを示す。
オゾンガスがマイクロバブルとして水に混合溶解すると、オゾン分子はO3として残留するか、分解してヒドロキシルラジカル(OH・)が生成される3)。水中での有機物とオゾンとの反応は、オゾンによる直接反応とオゾンの分解により生成されたOHラジカルによるフリーラジカル反応の2つがあるとされている。これらオゾンやOHラジカルが、VOCsや油分などの汚染物質に接触することによって、汚染物質が酸化され、COOH基などを持つ有機酸などに変化する。その結果、油分の場合には可溶化され、揚水法による油分回収の促進が可能となり、低分子であるVOCsの場合には最終的に無害化される(図2)。一方で、オゾンは無害な酸素に変化する。

1. 2 マイクロバブル・オゾン工法による汚染土壌・地下水の浄化方法

施工方法の概略として、図3に浄化対策の様子をそれぞれ模式的に示した。地上に設置した溶剤タンクなどから漏洩したVOCsは、地下水面に到達し、地下水の流れによって汚染が拡大する。また、VOCsは比重が大きいことから地下水中に溶解しなかった原液はDNAPLとして帯水層直下の難透水層に蓄積する。難透水層上部は通常シルト層と砂層が混在していることが多く、その小さな亀裂などの間隙にVOCsが浸透した場合、たとえ帯水層の地下水対策を施し、VOCsの濃度が基準値未満に達したとしても、時間の経過にともなって亀裂から帯水層側に溶け出してきたVOCsにより、再度地下水中のVOCs濃度が上昇し、基準値を超えてしまうことがある(図4)。こうした状況にも対応できる土壌・地下水汚染対策が求められているが、オゾンの場合、地下水として移動するだけではなく、オゾンそのものが濃度勾配により拡散移動することから、先の小さな亀裂内部にも浸透し、VOCsを可溶化および酸化分解させることが可能と考えられた。
そこで、これまで筆者らはVOCsや鉱物油の分解処理が可能な化学的酸化分解法として、オゾンを用いた原位置浄化技術の開発を行ってきた4)5)
筆者らは、まず基礎試験として、オゾン溶解水によるVOCsの分解性能について評価を行った。次に、模擬的に作成した汚染土壌においてオゾンによる浄化処理試験を実施した。ここでは、以上の試験結果から得られた知見について報告することとする。

2. オゾン溶解水によるVOCsの分解性評価

2. 1 試験方法

まず、揮発性有機化合物VOCsのオゾン酸化分解法による分解特性を評価した。使用した試験装置の模式図および試験フローを図5に示す。
分解対象物質が揮発性であることから、オゾンガスの曝気によりVOCsが試験系内から漏れてしまうことが考えられたため、イオン交換水に対しオゾン曝気を行った後、容器を密閉し、VOCsの原液をマイクロシリンジにより注入し、GC/FIDによりVOCs濃度の変化を確認した。

2. 2 試験結果および考察

VOCs濃度の経時変化を図6に示す。今回対象としたVOCs全てにおいて濃度低減が見られた。また、エチレン系の中ではcis-1,2-DCE、TCE、PCEの順に濃度低減しやすいことがわかった。
なお、今回はバッチ評価であったためにVOCsの種類によっては残留したが、連続的にオゾンを供給しつづけることでVOCs濃度をさらに低減させることが可能であると考えられる。

3. オゾン浸透試験

図4に示したように、難透水層上部にVOCsの原液(DNAPL)が蓄積している場合、仮に帯水層中の地下水から汚染物質が検出されなくなったとしても、その後、数日から数ヵ月後にはまた汚染物質が検出されることとなる。
この状態を模擬的に作り出すことによって、マイクロバブル・オゾン工法による浄化効果の有無を確認することを目的とした。

3. 1 試験方法

模擬土壌2.5kgにTCE原液0.3mLを添加し、十分に混合した後の模擬土壌(表1)を、高さ26cm、直径8cm、容積1300mLの円筒形ガラス容器上端まで充填した。この模擬汚染土壌サンプルを各2本準備し、1本は図7に示す装置のオゾン浸透槽に浸漬し、もう1本はRef.として20Lのビーカーに入れた。なお、ガラス容器上端から水面までの距離は3cmとなるように調整した。図7に示すように、ポンプの直前を負圧にし、オゾンガスを供給した。そして、ポンプの吐出側で加圧した後、オゾン浸透槽に水を供給した。その結果、オゾン浸透槽内部は、白濁しており、非常に微細な気泡が発生していることが確認された。このとき、オゾン浸透槽内部の溶存オゾン濃度は6.2mg/Lであった。

3. 2 試験結果と考察

オゾン処理24時間経過後のTCE濃度分布を図8に示す。横軸がTCE含有濃度[mg/kg] であり、縦軸はガラス容器上端からの深度[cm] を示す。このTCE含有濃度は、オゾンガス供給をしない場合には概ね4〜6 mg/kgとなった。また、土壌①シルトおよび土壌③腐植土の場合、オゾンガス供給をしてもTCE濃度に変化は無かった。一方で、土壌②の場合、ガラス容器上端から13 cm付近までTCE濃度が低減しており、土壌④の場合にはガラス容器の底までTCE濃度の低減が見られた。
砂質土壌においてTCE濃度の低減が見られた理由として、オゾンが土壌充填部に浸透し、TCEが分解されたためであると考えられる。一般的には土壌粒子表面にオゾンが接触した場合、オゾンは分解されるが、シルト土壌①の場合、透水性が低いためにオゾンが浸透しにくく、たとえ浸透したとしてもシルト土壌は比表面積が大きいためにオゾン分解が顕著になったものと思われる。一方で、シルトと砂を混合した土壌②の場合には、上端から13cmまでは濃度低減効果が見られていることから、一般的な難透水層上部のシルトと砂の混在部に蓄積しているDNAPLに対してマイクロバブル・オゾン注入は濃度低減効果があると考えられる。また、腐植土が混合されている土壌③の場合、腐植土そのものにオゾンが消費されたため、TCE濃度低減効果が見られなかったものと思われる。したがって、TCE分解に必要なオゾンを確保するために、オゾン濃度を向上させるか処理時間を長期化させることで汚染対策は可能であると思われる。

4. まとめ

オゾン酸化によるVOCsの濃度低減効果についての基礎評価に加え、マイクロバブル・オゾン工法を用いた場合のVOCs汚染地下水の浄化効果について、特にリバウンド現象を想定してのオゾン浸透試験を行い、オゾンの地中での浸透条件について一定の知見を得た。その結論について、次にまとめる。

  1. オゾン酸化によるVOCsの分解速度はかなり速く、数分の処理で不検出となった。
  2. オゾンの浸透性は、土壌の粒度分布や全炭素量により影響を受けることがわかった。
  3. 地下水の流れ方向に垂直な方向で、水の流れ方向とは異なっていてもオゾンの浸透速度は、砂質土壌の場合には1日間で26cmに達した。

今回の結果から、マイクロバブル・オゾン工法による浄化効果の影響速度とその範囲について把握できた。今後、この結果を第一次近似値として設計精度向上に役立て、新たな知見の蓄積に努めたい。

5.引用文献・参考文献

  1. 社団法人 地盤工学会:地盤工学・実務シリーズ15 土壌・地下水汚染の調査・予測・対策(2002)
  2. 葛本昌樹:化学工学,66(12)762-765(2002)
  3. 特定非営利活動法人 日本オゾン協会:オゾンハンドブック(平成16年10月)
  4. 日野成雄:第17回日本オゾン協会年次研究講演会 講演集83-86(2007)
  5. 日野成雄:第13回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 講演集363-367(2007)

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